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    Ruteru_n

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    【ロナドラ】
    去年のキスの日再掲です。

    #ロナドラ
    Rona x Dra

    キスの日は二人で一緒に「今日はキスの日です」テレビのアナウンサーが今年も告げる。

    「よし、今年はスマートにキスしてやるからな」
    俺は元気良くガッツポーズを決めた。
    去年は片想いのドラ公とキスしたくて、ゲームをダシにキスしようとして敢え無く撃沈。しかし、あいつも俺に好意があると告げられ、2人が両想いでこの日から『恋人』として過ごす事になった。
    その記念すべき日から1年目、あれから沢山キスしたし、なんならその先もしているけど…だけど今夜はドラ公と夜景の見えるレストランでディナーを食べ、その下の部屋で愛を誓う。その為にレストランも部屋も予約したしあいつの予定も抑えた。唯一残念なのはジョンがその日は町内の『南房総グルメツアー』で泊まりで出かけてしまう。ドラ公から食事制限無しで美味しい物を食べてきても良い許可も出て楽しみにしているので止めるのは酷だ。

    「ヌヌヌヌ、ヌッヌヌヌヌ」
    お土産を買ってくるとウキウキでバスに乗り、今朝早くジョンは出かけて行った。ドラ公は見送りに行けないので、代わりに俺が行き、町会長さんや他の人達と挨拶を交わしておいた。
    「さて、俺も仕事を片付けておかないとな」
    小さくなるバスを見ながら、両手を上げて体を伸ばして気合を入れる。今夜の為に仕事を終わらせておかないと。

    「ロナルド、悪い。応援頼めるか?」
    もうすぐ夕暮れにかかる頃。ショットから急な電話がかかってくる。今日の事は以前から話してあったので、俺に応援が来るのは余程の事なんだろう。
    (手早く終われば何とかレストランの時間には間に合うだろう)
    「分かった。どこに行けば良い」
    「本当に悪い。場所は…」
    手早く机の上にあるメモ帳に場所を書き込むと、俺は退治人の服に着替えてドラ公にLINMを入れて現場に向かった。


    「終わったぁ」
    最後の1匹をコンテナに詰め込み、俺らは大きな声で終了の声を上げた。いつもなら簡単に終わる吸血アブラムシの駆除なのに、今日に限って『超』大量発生した巣が見つかり、いつものメンバーだけでは追いつかなくなっていた。吸対にも応援を頼んだが、向こうも吸血ミノムシの対応がありすぐには合流できなかった。
    「ロナルド、時間大丈夫なのか?」
    マリアに聞かれて時計を見る。やばい、もう行かないと時間ギリギリだ。
    「後はこっちで何とかなるから、お前はもう行け。ドラルクによろしくな」
    ショットに背を押され、俺は駆け出した。
    「最後まで居られなくって悪いな」
    「こっちも急に悪かったな」
    急いで帰宅し、シャワーを浴びて服を着替える。ソファにはあいつが用意した服とメモがある。
    『君が選ぶと、新人お笑い芸人みたいな服を着てきそうだからな。私の趣味に畏怖しながらこの服を着てくるように』
    「…ふざけんなよ、誰が畏怖するか。このクソ砂が」
    メモを握りつぶし服を着替えると、新品のスーツだが俺に合わせたようにしっくりくる。あいつの馴染みのテーラーに頼んで仕立ててもらったんだろう。
    (それであいつ俺を連れて行ったんだな)

    つい数ヶ月前にあいつが昔から服を作っている店に俺を連れて行った。
    「君もいつかちゃんとした場に行くことがあるんだから、こういった店を知っておいて損はない。ここは腕も良いし、口も固い。贔屓にして損はないぞ」
    雰囲気の良い店には沢山の布やボタンが並び、俺には場違いな感じがして落ち着かなかったが、店のご夫婦の優しい雰囲気や会話に緊張も解れ、気がつけばサイズを測っていた。
    「こんなに体型が恵まれた方の服を作るのは難しいけれど、面白いですね」
    サイズをノートに書きながら楽しそうに店主が話す。
    「いえ、俺は…」
    言いかけた言葉をドラ公が遮る。
    「いえ、店主。彼はまだ作る予定は無いのですよ、今回は私の服を新調したく思ってね」
    「そうですか、それでは生地は…」
    そう話しながら店の奥にある部屋に二人で入って行った。あの時に俺の服を作る話をしていたな。
    俺はしっくりくる服に袖を通し、急いで家を出た。


    「ドラ公。ごめん…遅れた」
    俺が着いたのは既にレストランは閉店し、あいつが待つホテルの部屋の中だった。
    「急な仕事だ、仕方がない」
    部屋のテーブルに置かれた吸血鬼用のワインを静かに飲みながらあいつは答えた。
    あの後ホテルに向かう途中でポンチ吸血鬼が現れ、そいつの退治に時間がかかった。服も髪も乱れた状態で携帯を見れば、約束の時間はとうに過ぎて画面にはあいつからの『部屋で待っている』というメッセージがあった。
    「食事、まだだろう。レストランのディナーをケータリングしてあるよ。多少冷めてしまったが」
    あいつが座っている席の前に今夜一緒に食べる予定だった食事が並んでいる。
    「お前の分は?」
    俺が恐る恐る聞くと、ドラ公は静かに目を一度伏せてからこちらを向いた。
    「折角素敵なサーブをしてくれているんだ、温かいうちに食べなければ失礼に当たるだろう。私は先に済まさせてもらったよ」
    「ごめん…」
    あいつ、いやドラルクは俺が来るのをあそこで一人でずっと待っていたんだ。いよいよディナーのサーブ時間がギリギリになり、レストランの人が困ったから、自分の分だけ食べてきた。本当は食事なんて必要ないのに…俺が今日一緒に食べたいと願ったから…合わせてくれていたと言うのに…

    俺は情けなくて俯くことしかできなくなっていた。それを見たドラルクは、静かに席を立ち、俺の前に来ると、そっと顎に手を置き上に向かせてきた。
    「いつまでそんな情けない顔をするんだ?」
    「でも、俺、お前との約束…」
    「もし、吸血鬼がいるのに私との約束を優先してきたら、私はきっと君に幻滅するし、私の知っている『退治人ロナルド』は街の安全を蔑ろにする男ではないだろう?」
    その言葉に涙が出そうになる。
    「それにな」
    そう言って頬に軽くキスを落とされた。
    「夜はまだこれからだし、この部屋は明後日まで2人きりで過ごす事にしたんだ。これからだって沢山の記念日を過ごすんだから、いつかはこの記念日は笑って話せる。その方が思い出に残るだろう?」
    今度は唇にキスが落ちた。
    「まずは残りの時間。沢山キスをしてくれないか?今日は『キスの日』なんだから」
    静かに瞳を閉じてキスを待つ恋人に、沢山のキスの雨を降らせ、そのまま今度は深い口づけをした。
    「ドラルク、愛している」
    あらためて告白する俺の言葉に一瞬驚いたあいつは、本当に嬉しそうに笑うと、
    「私もだよ。ロナルド君」
    そう答えて、優しくキスをしてくれた。
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