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    Ruteru_n

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    以前にロナドラでお題をいただいていたのがやっと完成!今更秋まつりって…もう冬だよ。寒くなったよ。でも、書いたから出しちゃう!
    短い話ですが、良ければ…健全だよ!

    #ロナドラ小説
    lonadoraNovels

    左前は何のため?「秋祭りに行こルド君」
    帰宅するなり玄関でドラ公に祭りに誘われる。
    夏ある常世神社の祭りは毎年パトロールがあるから遊べないが、隣町の秋祭りならジョンとドラ公とにっぴきでゆっくりと回れると嬉しそうに話す。
    「し…仕方ねぇなぁ〜ジョンも行きたいだろうから、みんなで行くか」
    本当は仕方無くない。恋人同士、いや家族みたいにみんなで出かけられるのは正直凄い嬉しい。だけど…
    「ヌヌヌンヌヌヌ」
    ジョンが申し訳なさそうな憂いた顔をしている。
    「ヌヌヌイヌイヌ、ヌヌヌヌ、ヌヌヌヌヌイヌヌヌヌヌヌ…」
    何でも町会のお店を手伝う約束をしていたらしく、一緒には行かれない。ジョンが居ないならドラ公も行かないか。そう思っていたが、
    「仕方無い、ロナルド君二人で行こう」
    何でそんなに行きたがっているんだか不思議ではあったが、折角の誘いに断る理由も無く、今夜は二人で祭りに行くことにした。

    「ところで、浴衣を用意したんだけど君、着方知ってる」
    何だか長細い紙を持ってきたドラ公は急な話を降ってきた。何度か着せてもらった事はあるが、自分で着た事は無い。
    「良ければ着付けるけど」
    ドラ公の言葉に思わずカチンときてしまい、つい
    「できらぁ」
    と、どこかの料理マンガの主人公の様なタンカをきってしまい、携帯等を駆使して何とか着ることはできた。
    「ロナルド君できた」
    タイミング良く予備室をノックされて何とか完成した姿で部屋から出れば、ドラ公は明らかに驚いていた。
    「俺だってやれば出来んだよ」
    着られた事に驚いていると思っていたら、全く別の事だった。
    「ロナルド君、その着方だと死装束になっちゃう」
    「は?だって右が前だろ」
    ネットの情報で『着物は右前を守りましょう』と書いてあった。着方の動画はよく分かんなかったけどとりあえず右側を前にしとけば良いと思って着た。
    「右側を先に着るんだよ。とりあえず、このままだと死人になってしまうから手直しさせてもらうよ」
    そう言うとドラ公は俺の浴衣を解き、手際良く着せていく。
    「よし、これで良いだろう」
    俺の赤い浴衣とドラ公の紫の浴衣は何となく柄が似た感じの落ち着いた模様だが、アイツが着ているとマントが無いのと細さのせいかスラリとして見える。
    「やっぱり上背があるとサマになるね」
    嬉しそうに見上げる姿にドキリとする。でも、その目は少し寂しそうに俺を、と言うよりも俺の先を見ているようだった。
    「さぁ、行こうか」
    ドラルクに連れられて隣町の神社に向かう。あまり行ったことがない神社だったが、で店も多く賑わっている。
    「むん、同胞ではないか?」
    「だから、何でテメーは眷属売るんだ!こっちの退治人に伝えとくからな!」
    相変わらず見慣れたポンチもいるが、今日はオフだからこっちの担当に任せることにした。
    たこ焼きや焼きそばの食べ物を買っていると、ドラルクに招かれ神社の裏手に入る。
    「ここ、穴場でさ。座って」
    板場の腰掛けて食べ物にありつく。ドラルクがいつの間にか買ってきたお茶のペットボトルを渡された。
    「もう秋だっていうのに暑いなぁ」
    飲み物は程良く冷えていて、残暑が残る暑さを冷ますのにちょうど良かった。
    隣に座るアイツは特に何かをする訳ではなく、持ってきた団扇を揺らめかせている。
    「お前はなんか飲まないのか?」
    「私、人間の飲み物あまり飲まないし、流石にここでは牛乳はないからね」
    「そうだけどよ……」
    吸血鬼に熱中症という概念があるのかはわからないが、薄く汗を流すドラ公を見ているとやっぱり心配になる。
    「とりあえず、一口は飲んでおけよ」
    ペットボトルのお茶を差し出すと、少し戸惑った動きをしたが、諦めたように手に取りコクコクと飲んでいく。
    「もったいないなぁ」
    「そんな事言って倒れられたら困るからな」
    思わず目線を逸らして言ったが、これって間接キスだと気がついて少し照れ臭くなった。
    「もしかして、間接キスかもって意識したかい?」
    そんな俺の心を読んだかのようにドラルクが笑いながらこっちを見る。図星だが、殺すのも何だか野暮に思えてしまった。いつもとは違う格好なのが調子を狂わせるんだと思っておく。
    少し高い板羽は俺達の足でも浮いてしまい、ドラ公はプラプラと足を揺らしながら夜空を見上げ、
    「花火まだかなぁ」
    と嬉しそうにしている。
    「花火、上がるのか?」
    「今年、どこかの花火大会が潰れたから、その代わりなんだって」
    今までここの祭りで花火なんてなかったが、その言葉に世の中の世知辛さも感じながら俺も上を見上げる。
    「そういえばさ…」
    着替えの時に気になったコイツの表情について聞いてみる。
    「俺が間違えて着たのを直す時、お前なんか変な顔しなかったか?」
    「誰の顔が変だって?失礼なやつだな」
    明らかにムッとした声で答えられた。
    「違ーよ。なんか…泣きそうな…寂しそうな顔っていう感じで…」
    上手く纏まらないが、何だか気になる表情だった事を話す。ドラ公は一息つくと静かに話し始めた。
    「着物の左前ってね、死んだ人がきる格好なんだよ。いつか君が死んでしまったらこの格好の姿を見なければいけないのかと思ってさ」
    死人が着る服。何百年と生きるコイツは今まで沢山の人間の『死』を見てきたのかもしれない。
    「…俺、すぐには死なねーよ」
    「………そうだね。でも永遠ではない」
    ズキリと心が痛む。そうだ、永遠ではない。残されたコイツとジョンはその後どうすんだろう。またどこかの城に引きこもって過ごすのか?俺以外の面白そうな人間を見つけてそいつと過ごすのか?
    「何か嫌だな」
    本音が出る。俺以外の奴と過ごす事が面白くない。でも、俺がコイツと永遠に生きる事は……今はまだその覚悟は無い。
    「いつかさ…」
    ドラ公が静かに紡ぐ。
    「君が私達と永遠を過ごすのか、昼の子として期限のある生を生きるのかを問う日があったら、君は応えてくれるかい?」
    いつもと違う真剣な顔。これは逃げてはいけない。それをしたらコイツはもう二度と俺の心の側にいない…
    「即答は出来ないかもしれない。でも、お前と納得ができる答えを見つけるよ」
    今の俺の精一杯の応え。逃げに聞こえるかもしれない。それでもコイツは…ドラルクは安心した顔をした。
    「ありがとう」
    静かに抱きしめられる。少し震えたその手と身体を俺はそっと抱き返す。
    「おう」
    少し離れてお互いの瞳を見つめる。アイツの紅い瞳には俺が映っているのかな?
    そっとその瞳に、頬に…唇に俺は優しくキスをする。
    「今、この時は俺は絶対にお前達から離れないからな」
    その言葉にまた泣きそうな瞳をしたドラルクだったが、さっきとは違うってわかっている。

    もう一度アイツにキスをした瞬間、夜空に大輪の花が咲き始めた。
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