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    Ruteru_n

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    Ruteru_n

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    シンヨコにある老夫婦が営む古いテーラー。
    そこに通う吸血鬼と同居人の話。

    【名前のあるモブが出ます】

    #ロナドラ
    Rona x Dra
    #ロナドラ小説
    lonadoraNovels

    とあるモブテーラーとその二人の話私の名前は『モーブ・ロドスキー』代々紳士服を作ってきたそれなりに由緒あるテーラーの主人です。
    お得意様の中には政界・芸能界等の著名人もおりますが、特に『竜の血族』様にはうちが初代の頃からご贔屓にしていただいています。

    特に3代目のドラルク様は、品がありながらもウイットのある会話がとても楽しく、私は幼少の頃からこの方に会えるのを楽しみにいていました。青年になり、家業を継ぐ為の修行として緊張しながら採寸した時には、
    「もともと体型は変わりにくいから、前の採寸から大きく外れてはないだろう。誰しも経験は必要だ、胸を貸そうではないか。君が1人前になった時はぜひとも私に合う一着を頼むよ」
    そう言ってウインクする姿に同性であってもドキリとしたのを昨日の事のように覚えています。

    そんな彼がシンヨコハマで暮らすと聞き、丁度良く自分の店を持つ準備をしていた私も彼の住む街に自分の店を構える事にしました。
    「君達の腕の良さは私がよく知っている。これで安心して暮らせるよ」
    開店の時に花とお菓子を持って挨拶に来てくれたドラルク様が嬉しそうに話してくれたのがつい先日の様に感じます。

    しかし、この街で暮らしてからドラルク様が少しずつ変わっていく事に気がつきました。あんなにも美しくしなやかな所作や言葉が荒くなっている。原因は同居している『ロナルド』と言う男らしいが、あくまでも店の店員とお得意様の関係であの方の口調や交友関係に口を出すのは烏滸がましい。自分もプロなのだから、きちんと弁えて仕事をしないといけません。
    「それでも、残念な気持ちだなぁ」
    作業をしながら思わず口から言葉が溢れてしまいました。

    店が開店して数年。ドラルク様が噂のロナルドさんを連れて来店しました。
    「彼が出した本が映像化される事になってね。そのパーティーで着るための服をお願いしたい」
    シンヨコハマで知らない者はおりません。彼はベストセラー作家の顔を持つ退治人ハンターだからです。
    (顔が良くてきっと彼を慕う女性が沢山いるんだろう。高慢な男だったらどうしよう…粗相の無い様にしないと…)
    ついぞそんな事を思っていましたが、目の前の男性はそんな予想を大きく、そう、とんでもなく大きく外していきました。
    「あっ、あの…よろしくお願いします。えっと、俺、こういったお店で服作るの初めてで…」
    真っ赤な顔をした男性は恥ずかしそうに店内に入ってきました。私の後ろにある大量の布に驚き、自分が場違いなのかと戸惑っていらっしゃる姿は、心優しく素直な青年でした。
    (あぁ、やはりドラルク様はお見立てが良い。きっと彼に出会い、同じ目線で暮らしたくなったのか)
    やはり少し寂しい気持ちはありますが、2人のやり取りを見ているのが楽しく、更には幾度となく彼のとても良い人柄にも触れ、服が出来る頃には私はすっかり彼のファンになっていました。

    「良くお似合いですよ」
    布からスーツの形までドラルク様がお決めになっていた服は、世辞抜きで彼にとても似合っていました。
    「ありがとうございます」
    照れながらも嬉しそうに姿見の前で何度も振り返り、自分の姿を確認する彼の横には満足げなドラルク様のお姿がありました。
    「うんうん、やはり貴方の作られる服は着る者の魅力を引き出してくれる。いつもながら素晴らしい仕事ですな」
    何よりも嬉しい賛辞を聞き、私も顔が綻びます。それ以来、ロナルド様の服も我が店で作る事が増えました。

    ドラルク様と違い、ロナルド様は年齢の割に筋肉がしっかりしているのと、まだまだ肉体の成長があるので定期的に採寸をする事があります。
    「あの、ドラこ…いや、ドラルクが服のサイズを図り直す事ってあるんですか」
    何度目かの採寸の時、ロナルド様からそんな話が出ました。
    「ここ、数十年は測ってはいないですね。最後は…私が店の修行を始めた頃ですから。何かお気になりましたか」
    竜の血族様は成人するとほぼ肉体が変わる事が無いので滅多に図り直さないが、確かにそろそろ測る頃ではあるかもしれない。
    ふと、私は自分のデスクを見る。そこには歴代のお得意様達の採寸データが書かれたノートがあった。特に竜の血族様は何が弱点になるかわからないので、更に鍵の付いた引出しに厳重にしまわれている。その中にあるドラルク様の採寸データを見ても、100年以上体型が変わる事はなかった。
    「いえ、俺は定期的に測ってもらっているけど、アイツがこうしている姿を見た事が無かったので。ちょっと見てみたいなと…」
    照れ臭そうに答えるロナルド様が話すので、つい揶揄ってしまいました。
    「では、次にお二人でお越しになった時にそれぞれ採寸いたしましょう」
    (仲が良いお二人の事。ロナルド様が採寸の結果をお伝えすれば、何かしらお話があるのでしょう。その時にドラルク様について反撃材料が欲しいと言った所でしょうか。)
    私はそんな風に思っていました。


    後日、数十年ぶりにドラルク様の採寸を行いましたが、
    (あれ?サイズ、変わられた)
    明らかに腰とヒップのサイズが変わっている。胸元も微妙に差が出ている。筋肉が増えた違う。これは…
    (あっ…なるほど)
    状況にピンときましたが、流石にプロとしてお客様の性生活に口は挟みません。ロナルド様も無意識にお考えになったのでしょう。ただ、ドラルク様に気が付かれない状態で服をお仕立てするとなるには…
    「ドラルク様。いつものクラシカルなお姿も素敵なのですが、今回の採寸を機会にロナルド様と合わせた感じのスーツはいかがでしょうか」
    服の新調を願ってみる。体良く『ロナルド様と合わせた』とお伝えすれば、無下にはできない筈。一か八かの賭けでしたが、何とか軍配は私に上がりました。これをきっかけに服を新調し、それからはドラルク様も数年毎に採寸をお願いする様になりました。
    やはり、少しずつではありますが、ドラルク様の体型も年齢に合わせ変化をしていました。その変化に私からは何もお伝えはしませんが、お二人の幸せが何時までも続く事を願っていました。
    それは杞憂であると知ったのは先日の事です。ロナルド様のお背中にいくつかの真新しい傷を発見したので、
    「最近も吸血鬼退治でお忙しいのですか」
    等と伺ってしまったのですがここ数日は執筆作業が忙しく、退治依頼はお断りされていたと聞き。不思議がるロナルド様を何とか誤魔化し、古傷と見誤った事にしました。
    つい、口が滑ってしまいました。私もまだまだ甘かったと反省しております。妻にもその晩注意されてしまいました。

    そんな我がテーラーですが、シンヨコハマにお寄りの際はぜひとも店のショーウィンドーを覗いてください。クラシカルな吸血鬼を思わせる黒のスーツと、赤い服が並んで飾られ、この街にいる有名な二人の姿を想像できるはずです。

    『カラララン』

    おや、お客様……

    ロナルド様とドラルク様ではありませんかえ?先日の服の件?いえ、そんな謝らないでください。背中?いえいえ…こちらはプロですので…こちらこそ失礼をいたしました。はい、お客様のプライベートには…ええ、御当主様もドラウス様も御存知は…はい、ご安心ください。
    今後ともご贔屓にしてください。…あぁ良かったです。それでは、またのご来店を心よりお待ちしています。

    『カラララン』

    お二人でお詫びと共にドラルク様のお菓子まで…これでお二人の『関係』が私の中でハッキリしてしまいました。
    この事についてはどなたにもお話し致しませんが、他の方々がお二人の事を知るまでは、私の秘め事として優越感に浸らせてもらいましょう。

    久しぶりにクラシカルな吸血鬼の服(クラバットにマント)を着た。
    「懐かしいな、この格好。どうしたんだ」
    ソファ越しに彼が声をかけてくる。先日の話をもう忘れたのか?5歳児め。そう答えたら拳が飛んできた。
    「血族で結婚する者がいるから、ちょっと実家に行ってくるって言っただろうが」
    「あれって今日か」
    今ではほとんど着ない服に懐かしさと若い頃のドラルク姿を思い出す。
    「その服、当時のままにしては随分と綺麗だな」
    つい口に出たロナルドの言葉に、少しだけ顔を歪めたドラルクがポツリと溢す。
    「………た」
    「は?何言ったんだ」
    「だから、仕立て直したんだ全部」
    言いたくなさそうに苦々しく声を荒らげるドラルクに少しだけ驚きながら、ロナルドはドラルクを宥める。
    「君に実家に行く話をしてから久しぶりに着たら、尻と胸がキツくなっていたんだよ。筋肉とかついてないのに…」
    ブツブツと文句を言うドラルクを静かに見る。
    「…別にトラウザーズは穿けなくは無いんだけど、下着のラインが出るからシルエットが美しくない。かといって何も穿かない訳にいかないし…」
    「お前ノーパンで出かけるのか」
    ガタリと机をならしてロナルドは立ち上がる。
    「そんな…エロい格好で出かけるなんて、俺は許さないぞ」
    「出かけんわこのエロゴリラが!だから服を仕立て直したんだ」

    ヤレヤレとソファに腰を下ろし、不思議そうに考える。
    (何百年も体型なんて変わっていなかったのに、何故ここ数十年で……)
    「あぁっ…あ〜なるほど…だからか…」
    ドは何かを理解し、天井を見上げる。
    数年前から馴染みのテーラーの主人が採寸をする回数が増やしてきた。以前は10年や20年それよりももっと長い間、採寸なんてしてこなかった。
    「ドラルク様も人間と暮らして環境が変わりましたので…」
    なんて言われて気にしなかったが、ロナルド君を連れて店に通っている時に、私の体型が変わったことに気がついてのだろう。そして、彼は私とロナルド君が『そういった関係』である事を知ってしまった。それでもプロとしてこちらが話さない事には首を突っ込まず、職人として仕事をしていたのだ。
    「彼には申し訳なかったなぁ」
    「何がだよ?」
    まだ状況を理解できていないロナルド君はきょとんと私を見つめる。
    「都市伝説だと思っていたのだが、男性が射精を伴わない絶頂を何度も行うと、肉体が女性的に丸みを帯びる事があるらしい」
    そこまで言えば、流石のゴリラもわかった様だ。
    「あそこのテーラー、俺も使って…あっ」
    彼は何かとんでもない事を思い出した顔をした。
    「お前とした次の日にお店に行った後、お店の人に『昨日は大捕物だったのですか?』って聞かれて……俺、最近はロナ戦の執筆で退治の仕事行ってなかったのに……なんて話したんだけど、あれって……」
    みるみる青くなるロナルドとは反対にドラルクは真っ赤に変わった。
    「今度、菓子折り持って伺おう」
    「そうだな」
    ふたりは同時にため息をついた。

    「それとは別に」
    ロナルドはドラルクに近づき、腰を優しく撫であげる。
    「今度のデートで久しぶりにその格好で出かけたいんだけど」
    そのまま背中に指を這わせる。そのやらしい動きにドラルクは小さく身を震わせ、甘い息が出る。
    「できれば、昔の服で……な?」
    歳を重ねてキレイなだけではなく色気を伴う青い瞳に見つめられると、どうにも弱い。
    「この…変態…」
    その服で出かける事の真の意味を理解したドラルクは、さっきよりも顔を赤くしながらも、潤んだ瞳で了承した。
    「だから、早く帰ってこいよ。ハニー♡」
    耳元で囁かれ最後に耳たぶを軽く喰まれれば、ドラルクはトロンとした顔でロナルドを見つめる。
    「そんなにエロい顔すんなよ。離れがたくなるだろう」
    そっと頬を撫でれば、合わせるように擦り寄ってくる姿が愛おしい。このまま予備室に連れ込んでめちゃくちゃに抱きたいが、ドラルクはもう出発する時間だし、いつ親父さんが迎えにくるか分からない。残念な気持ちを抑えてロナルドはそっと離れる。
    「……んっ♡」
    手の動きに合わせて可愛い声を漏らすドラルクも寂しそうにするが、こちらも事情を考えてそれ以上は動かない。


    「ほんの数ヶ月だ。すぐに帰ってくるから」
    ドラルクの言葉にロナルドがピクリと反応する。
    「………待て、そんなに離れるって聞いて無いんだが?」
    親族の結婚式に行くのは聞いている。それでもせいぜい1週間くらいだと思っていた、数ヶ月もドラルクと離れるのは流石に想定外だ。
    御真祖様おじいさまがいるんだ。おめでとうパーティーがどのくらいかかるか…」
    「それなら、俺も一緒に行く」
    突然のロナルドの言葉に今度はドラルクが驚く。
    「はぁぁぁ!『一緒に』って。退治人の仕事はどうするんだい?」
    「もともとロナ戦の執筆で休みを貰っていたし、夏休みと合わせて取れば問題無い!」
    自身あり気に話すロナルドに呆れ顔のドラルク。きっとこれ以上話しても彼はテコでも一緒に行くのを諦めないのがわかると、ため息を一つ溢してドラルクが折れた。
    「……わかった。では急いで支度をしよう」
    旅行鞄を予備室から引っ張り出すと、ドラルクはその中にロナルドの下着等を手際よく詰め込み、ロナルドはギルドやフクマさんに連絡をとる。どちらからも良い返事を貰えた。フクマさんからは
    「より良い執筆の為の取材旅行にしましょう」
    と、締切を伸ばしてもらえた。
    「後は、向こうへのビザとかパスポート…」
    引き出しを開けてドラルクは書類やパスポートが入ったファイルを取り出す。
    「手際が良すぎないか?」
    不審に思うロナルドに、ドラルクは当たり前のように話した。
    「君の事だから、急に一緒に行くと言い出すと予測していたんだよ。慌てなくても良いように一応準備しておいて良かった」
    書類をカバンに放り込むと同時に、ロナルドも何かの入ったポーチを投げ込んだ。
    「おやつのバナナか?向こうにも………」
    ドラルクが中身を確認するためファスナーを開けてすぐに閉めた。
    「家の親族の城で何を考えているんだ!」
    その中にはローションとゴムが新品の状態で入っている。
    「ナニをしたいって考えている。だってお前のその格好、スゲーエロいから。なぁ皆んなが寝た昼間に……その格好でエッチな事させてくれよ」
    色を帯びた瞳で強請られる。その顔にいつも絆されてしまう。
    「あまり無茶はしないでくれよ」
    了承されロナルドは喜んでドラルクを抱きしめる。下腹部にロナルドの硬くなった部分を感じながら、どう声を抑えるかを悩むドラルクだった。
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