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    toketu_0212

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    toketu_0212

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    あるだん産もくめん軍パロの二次創作…だっけ。
    あと1個か2個で終わりたい所存。

    余所者の処遇〈更新5〉「!」

    途端に自分に力を与えていた月の光が消える。
    どういうことだと頭を上げてみると、そこには自分の全身すらも覆いそうな大きな翼があった。
    …影の次は今度は鳥かよ。
    つくづく可笑しな集団だ。
    種族の違いはどうなっている、狼人間である俺を非難した奴らにも見せてやりたいほどに種族差別がなさそうな空間。
    ここにいれば俺ですら平和ボケしそうで思わず笑えてくる。…俺が意識を持つ前の俺は、その空気に絆された奴だったんだろうな。

    「…なんだぁ、おまえ」

    軽く笑いながら相手を見ると、相手は同じように笑い返してくる。
    全く意図が分からない。

    「……ふふふ、本当に…いつものネシさんじゃ見られない表情ですね。その姿もですが」

    月に背を向け、その大きな翼をバサバサと動かし俺の力の供給を邪魔する。
    生憎あの高さまで跳ぶことは無理だ。
    上手く出来たとしても周りに散らばっている奴らにそれを狙われるのがオチだ。
    かと言って見るからに知的そうな相手に挑発が聞くとも思わない。

    「…まあ、だからこそ普段の貴方には出来ないことが出来るというものですが」

    まるで先程の相手と同じことを言う。
    普段の俺には出来ないことを今ことごとくやろうとしている様を見るに、全員が全員お人好しで根が善良な奴らなのだろう。
    なんて馬鹿馬鹿しい。

    「…っ、!?」

    自分に立ちはだかる相手たちを鼻で笑っていると、両手が後ろで縛られたような感覚があった。
    なんだ…!?……これは魔法か。
    その感覚をよく確かめると、それは紛れもない魔法だった。
    俺が縛られたと同時に上空で飛んでいる相手が本を手に取っていたので、恐らくその相手に仕掛けられたのだろう。

    「貴方が私を見てくれるおかげで助かりましたよ。
    あるだんさんを逃すことが出来ました」

    「!」

    相手に言われるままに辺りを見回すと、気付けば先程倒した相手の姿がどこにもない。
    …俺というものが、まんまとやられたな。
    意識を上空の相手に移すことで、負傷した仲間の救出に成功していたらしい。
    あーあーあー、馬鹿なことをした。
    先程の相手を人質にでもすれば面白くなったかもしれないというのに。
    月からの力の供給も絶たれ、今では両手を拘束されてしまっている。
    さあどうしたものか…。

    「…流石に多数対1人でコレは酷くなーい?卑怯じゃんか」

    微塵も動揺を期待できない相手に軽口を叩くが、案の定効果なんてなく、逆に拘束をキツくされる始末。
    あー…言葉を間違えたな。いやどれにしろこの結末でもおかしくはない。

    「っ!!!……痛いんだけど」

    「痛くしてますから」

    にこり、と返されればもう返す言葉もない。
    だがこのまま何もしなければ捕縛で終わってしまうのも確かだ。
    他に何かないか。相手を少しでも困惑させて、あの月からの供給をもう一度得るための何かは。

    「……………あ、そっか」

    あまり考える必要はなかった。
    何故って?
    コイツらにとっては、この身体は大切な仲間のもの。
    その弱点をつけば一発じゃないか。

    「!?…な、何を」

    相手が動揺したことで自分にかけられている魔法に隙が出たのを狙って、両手を自由にする。
    何をしたかなんて簡単だ。
    両手を自分の歯で噛み切ろうとした。
    ただそれだけ。

    「っ……、…」

    それだけで相手は動揺し、期待通りにその拘束を緩めてくれた。
    感謝しないとだな、コイツらと交流を深めてくれた、コイツにとって弱点になってくれた前の俺に。

    「…っ!?!!」

    上空の相手目掛けて、最後の力を振り絞り鋭い爪を向けると相手はそれを避けようとその場から飛び立つ。
    そうした瞬間、相手は即座に後悔の表情を見せた。
    それもそうだろう。
    なんたって自分を攻撃してくる相手を避けたら、その相手が楽しそうに笑ったんだから。

    「しまっ、」

    「はは、ありがと」

    俺はそんな相手とは裏腹にニヤリと笑って、相手がいなくなったことによって受けられるようになった月の加護をその全身に受けた。
    それだけで気分が良くなり、何でも出来るような多幸感に包まれた。
    先程の傷の痛みすらも感じない、ああ、なんて最高なんだ。

    そんな俺を一直線に狙う1つの影があった。
    そちらに目を向けると、建物の屋上に2人の人物。
    月の光の反射でキラリと光る黒い物。
    …銃か。

    「…避けれるか……ちょっとキツいなぁ…」

    能天気にその銃口から飛び出した弾丸を避けることが出来るか試してみるが、予想通り意味がない。
    身体の急所は外したつもりだが、足にそれが当たってしまう。

    「っ、…!!」

    それに当たってもそこまで痛くはない。
    だがコイツらがただの銃を撃つようには思えない。
    これを撃った奴らに目を向けると、険しい表情でこちらを見ている1人と楽しそうな表情をしている1人。

    「起きて下さい、ネシさん…!!!」

    その銃を撃った者は後衛戦闘部隊隊長であるであるユ音だった。
    今もその目に涙を溜めているのを見るに感情的な特にお人好しな人物なのだろう。
    アレであれば簡単に騙せそうなものだが…その隣にいるもう片方の表情に油断が出来ない。
    ちょうど危険視していたその相手が、こちらにも聴こえるような声で胸を張って説明を始める。

    「ふっふーん、それは貴方がた人外の力を抑えるために作ったんですよ!!吐血さんの前々からのお願いでね!ちなみに材料も吐血さんとかその他色々混ざってます、具合はどうでしょうか!!!」

    ハイテンションにナチュラルに実験体にされているのが気に食わない。
    同時に調子が狂う。
    何なんだこの頭のおかしい科学者っぽい奴は。
    1番敵に回したくないタイプの奴が来たな。
    最悪だ。

    「……、」

    確かに先程の銃弾は俺の足を貫通するほどの威力を持たなかったが、その分今更その銃弾に詰められた薬が全身に回って来た気がする。
    流石に空を浮遊できるほどの超能力はないため、先程対峙した相手が復帰しない内に素直に地面へと落ちる。
    地面に目を向けパッと目についた木をクッション代わりに落ち、しばらく周りの様子を確認してその木の下へと足をつけた。


    「………」

    遠くに1人、屋上の2人、その付近に先程の翼の奴…それよりも近い所に3人、その内の2人から血の匂いがする。
    影を使っていた奴と…これは最初の羊くんの匂いだな。
    …いや……それに近い匂いと言った方がいい。コレは別人ではあるが何だ…?家族…にしては匂いが遠い。…同一人物…
    ああいや面倒だ。
    もう正面突破と行こう。
    生憎頭を使うのは苦手なんだ。
    俺は感覚で楽しみたい。

    「…影に翼に銃に……仲間の身体なのに散々なことするねー。…ま、俺も人のこと言えないか。ねえ、今どういう気持ちなの?」

    そんな挑発をしながら中心に分けた前髪を後ろへと回す。
    自分の手から出た血がいいワックス材になってる。

    「……今日は……月が綺麗だよねえ、月見とでも行かない?皆でさ」

    勿論そんなことするつもりなんて微塵もない。
    これはただの冗談であり、たちの悪い挑発だ。
    さあ…コイツらはどうする?

    「!」

    そうこう相手たちの動向を伺っていると、今度は自分の近くに匂いを感じていたあの羊くんによく似た匂いの相手が姿を現した。
    片手を挙げ静止を求めるかのようにこちらを見る相手の顔には、表情が無い。
    何も感じていなさそうなその無表情にピリッと背中に冷たい空気を感じる。

    「…今度はおまえ?いいじゃん、今までの奴らよりも楽しそう」

    思ったことを率直に伝えてみると、相手は口元だけを雑に笑わせて答えた。

    「ごめんね、その前に君に会わせたい子らがいてさ。その2人に勝ったら、戦ってあげてもいいよ」

    既に4対1でこちらを追い詰めていたくせによく言う。
    まあ4も6も大して変わらないか。
    そう思い、相手へと目を向けると相手の真後ろから勢いよく移動してくる影が見える。

    「!?!」

    嘘だろ………。
    だってこの匂いはあの時、

    「っ、なんでおまえが生きてんだよっ!!!殺しただろっ!!!!」

    とんでもない勢いで自分へと向かって来る相手に反射で爪を向けるが、それすらも意味を無さずに腕を掴まれ、逆方向へと吹っ飛ばされる。

    「っ!!!」

    何とか受け身を取り、すぐに相手へと向き直る。
    それを見届けた無表情は、軽く手を振り後ろへと歩き出した。

    「じゃあ後は頼んだよ、によさん」

    俺は、今の敵はさっき俺のことを吹っ飛ばした相手だけだと思っていた。
    だが、

    「ポタキムさん」

    無表情がその名前を呼んだ途端、新たな匂いが鼻腔を擽った。
    …まさか、
    匂いのする方へと身体を向けると、そこには

    「目ぇ覚ませよネシ…!!!」

    あの時バラバラにした相手が、険しい表情で俺の胸ぐらを掴みそのまま俺の顔に力を込めた一発をぶっかました。

    「ぐっ、!」

    またもやそれに吹っ飛ぶかと思いきや、胸ぐらは掴まれたまま、俺の顔をひたすらに殴る。
    痛みはあるが、それよりも疑問が勝った。
    何故この相手たちは、俺に先程のような銃や刃物を使わない?
    …ああ、そうか。

    「…っ、…はは!」

    「!!」

    俺が笑ったことで、俺をひたすら殴り続ける相手の手が止まった。
    その隙を存分に使い、相手のことをケラケラと笑ってやる。

    「なんだ……おまえら全然強くねーじゃん…元仲間を傷つけることすら怖がってるような弱虫じゃねえか!!」

    「っ!!!…おまえ……ネシのこと知らねえのに勝手なこと言うな!!!!」

    俺の言葉に予想通り激昂した相手が、俺の顔を殴る殴る。
    それなら月の光が当たらない場所へと連れていけばいいものを。
    月の光の力によって身体もゆっくりではあるが回復していくため、その感情的な暴力も全く意味がない。

    「…じゃあなんだよ、今の俺はそのネシじゃないってのか?俺は俺だよ、おまえらの存在だけ綺麗に忘れたネシの本能が俺!!それを受け止められないなんて可哀想だなぁ!!!」

    「っ…!!…ネシは…おまえみたいな奴じゃない…!!!おまえみたいに当たり前にあるだんさんとか、皆を傷つけて、楽しそうに笑ってるような最低な奴じゃない!!!」

    …目の前のコイツは、よっぽど前の俺のことを大事に思っていたようだ。
    だからって、今の俺が理不尽に殴られるのはどうかと思うが。
    ………最低…つまり……

    「…じゃあ、今の俺は誰からも必要とされてない、そもそも邪魔な要らない奴なんだな」

    ジッと相手を睨み悪態をつく。
    俺もそのネシではあるだろ、なのに性格が違うだけでそんなこと言われなきゃいけないなんて、あんまりだ。

    「…!!!」

    相手はついに俺の顔を殴る手を止めた。
    それを好機に思い、俺は口角を上げた。

    「……なに、もう満足?」

    「…、…」

    相手からの返事はない。
    それなら

    「じゃあ次は俺の番だなぁ!!!」

    今度は俺が相手の胸ぐらを掴み、思い切り相手の顔を殴った。
    相手はそれを避けられないまま地面へと身体を落とす。
    それを見て、相手の身体の上に乗って再度相手の胸ぐらを掴み、手に力を込めて殴る。

    「そもそも、なんで俺が俺でいちゃいけねえんだよ!!ネシなんて奴、俺は全くもって知らねえし、おまえらのことも知らねえんだよ!!!俺が俺のままでいて何が悪い!?おまえらが勝手にそれを受け止めきれないで俺を一方的に痛めつけてるだけだろ!!何が悪いんだよ!!!!」

    今までの不満も合わせて、相手の顔を殴り続けた。
    元々この状況になる前にその身体も再生できないように酷く負傷させた相手だ。
    こんなただの殴りですら効いているんだからなんでこんな前線に出てきたのか疑いたくなる。
    そのままベッドの上で安静にしとけよ。
    ただの馬鹿が。

    「が、っう、…ネシ…!!!……おき、て」

    「起きる?馬鹿言うなよ、この身体はもう俺のもんだ。もしおまえらの言う俺が本当に起きたとしても、それまでは俺の身体だ。誰にも邪魔なんてさせないからな!!」

    戯言を言う相手にまた苛立って来る。
    俺の何が悪いんだよ。
    なんでおまえら全員、今の俺を見て苦しそうな顔をするんだよ。
    …そんなに俺が邪魔かよ。

    「!」

    少し気を抜いていただけで、後ろから俺の殴る手を押さえるように手が掴まれる。
    腕ごと抱き締められてそのまま押さえようとしてくる相手を見ると、先程俺に勢い良く突っ込んできた相手。
    そんな相手ですら、辛そうな顔でぎゅっと瞑った目に涙を溜めている。

    「ねっち…起きてよ……!!」

    「…………はっ、…」

    おまえもそれかよ。
    おまえもコイツと同じで死にかけのくせによ。
    そう言って俺の自慢の爪でそんな相手を切りかかろうとしたちょうどその時、


    「はいストップ」


    当たり前のようにその手を掴まれて、俺は自然とそちらに顔を向けた。
    そこには、先程よりも無表情ではあるが、どこか怒りのようなものを纏わせている相手がいた。

    「正直さー、私にとっちゃ全員お気に入りなんだよ。だからそんなお気に入りたちがお気に入りたち同士で痛めつけ合ってるのはあんまり見たくないっていうか…分かるかなーこの気持ち」

    言葉は平坦なくせに、俺の手を握る力は煮えたぎる怒りを隠せていない。

    「…はっ、なーんだ。おまえもお人好しかよ」

    「皆ほどじゃないよ。私はそれなりに心がないし」

    こんな状況で話すのも何だから、と言ってそのまま手を引かれると身体ごとその場の木へと投げ飛ばされる。

    「っ!!!!」

    そこまで苦しくはないものの、先程までの奴らとは格段に違ったその確実な殺意に、俺は胸を躍らせた。
    コイツ、…あの羊くんよりやべえタイプのこっち側だろ…。
    口角を上げることを止められず、俺は内心焦りながらも笑っていた。

    「…」

    そんな俺を傍目に見つつ、相手は自身の後ろにいた仲間たちへ指示を出した。

    「みやさんはあるだんさん、ユ音さんはポタキムさん、疾風さんはによさんを運ぶのをお願い」

    それは淡々としているが、その指示を出している間も俺から目を離すことをしない辺り、他の奴らよりも隙が見えない。
    その俺を見ている目が背筋が凍るほどに冷たくて、ついつい笑ってしまう。
    それにすらも呆れた無表情で返されるのだから困りものだ。

    「…なぁ、おまえ名前は?」

    「……言う必要ある?」

    質問に質問で返されては何も言えない。

    「じゃあこれだけ聞かせろよ。おまえも、さっきの奴らと同じで俺のことが邪魔?」

    「………」

    その無表情はただ薄っぺらい笑いをこちらへと向けて、無言で帽子を深く被った。

    「…うーん……ネシさんはネシさんだしなぁ…ああ、でも私のお気に入りたちに手を出すようなら邪魔かもね」

    本当にそんなことを思っているのか、それすらも分からない表情しか見せない相手に内心呆れてしまう。

    「あっそ。やっぱおまえもお人好しじゃんか」

    胡座をかいて相手が自分と交戦する気になるまで待つ。
    相手は仲間たちがその場から退散することを待っているようなのが見て取れる。
    俺も流石にそこまで馬鹿じゃない。
    ここで動けば余韻に浸る暇などないほどつまらない終わり方をするだろうから。

    「…それで、君はネシさんでいいのかな。私たちの記憶はなくても、昔のことは?何も憶えてない?」

    こちらにやっと振り向いた相手は、深く被っていた帽子を取って見せ、


    「この顔も憶えてない?」


    そこに映ったのは、肩に当たるほどの黒髪、柔らかい青空のような目…


    『ネシ』


    まるで今からそう呼ばれるとでも思いそうなその柔らかい表情。

    「あ、……あに…」

    違う。兄貴じゃない。
    コイツは違う……。
    兄貴はもう死んだんだ…!!!!!

    「…ね」

    相手が幻聴通りの言葉を口にしようとした瞬間、

    「やめろっ!!!!!!!!」

    気付けば相手の方へと拳を振りかぶっていた。
    自分自身でも分からない。
    だがこれだけは理解できた。
    その顔でその表情で、もういないあの人の声で名前を呼んでほしくない。
    それだけは本当に嫌だ。

    「…嫌だった?やっぱり私のことは分からなくても、昔の私のことは分かるんだね。…あるだんさんの通信機共有しておいて良かった。やっと君への接し方が分かったよ」

    はぁ、はぁ…と息を整えている俺を見て、不敵に笑うその顔は先程の優しさの名残りはない。
    さっき相手は自分を『それなりに心がない』と言っていたが…

    「……そういうことかよ…趣味悪」

    「あはは、そんなこと言っちゃう?酷いなあ」

    何も思ってないくせにまともぶるのが本当に気持ち悪い。嫌いなタイプだ。
    これがさっきから脳裏にチラつく兄貴って奴か?違うな、俺の知ってる兄貴はこんなんじゃない。兄貴はもっと優しいんだ…。

    「…ねえ、どこまで憶えてる?昔の私のことは?顔は憶えてるでしょ?他には?記憶とかいつまで残ってる?軍にいた記憶はバッサリだろうけど」

    妙に楽しそうに話し出す相手に段々と引いていく。
    コイツが仮に兄貴だったものだとしても、俺は絶対にコイツを兄貴とは認めたくない。
    こんな奴があんな汚れ1つもないような純粋無垢な兄貴であるわけがない。

    「………逆に聞くけど、俺がそれを言う必要ってある?」

    「…ないね。…もう前置きは要らない?始める?」

    口から更に血を溢した相手は、それすらも自分自身で操っているようだ。
    ボタボタと足下に血溜まりを作っては楽しそうに笑って、俺なんかよりも化け物染みたことをしでかそうとしている。

    「……おまえ、名前は?」

    これから少しは遊んでくれる相手だ。
    名前くらいはせめても知っておきたい。

    「…吐血、君が知ってる昔の私と同じ名前かは知らないけど」

    どこか寂しそうに笑うその顔が、記憶の中の兄貴という誰かの顔とリンクする。
    …やっぱり、行け好かない。

    「…準備は出来たかな?」

    「俺は待ってやった側なんだけど」

    「そういえばそうだったね」

    悪態1つついても相手は…吐血は表情を変えない。
    それだけ余裕があるのか、俺のことなんてどうでもいいのか…。
    そんなことを考える暇もなく、吐血は俺を見てクスリと笑う。


    「…それじゃ、兄弟喧嘩と行こうか」


    お互い兄弟としての確証は憶えていないくせに、敢えてそんな言葉を使う相手に俺は思わず笑ってしまった。
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