Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    toketu_0212

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 5

    toketu_0212

    ☆quiet follow

    前回同様、あるだん産「もくめん軍パロ」の『余所者の処遇』の続きです。
    全部書き終えたら1つにまとめます。

    余所者の処遇〈更新1〉ーーー

    吐血さんと話してから数日後、目を覚まして身支度を済ませている時だった。

    「……?」

    …見当たらない。
    普段から身に付けている手袋が見つからないのだ。いつも同じ場所に置いて保管していたというのに。
    間違ってどこかに置いてしまったのだろうか。
    昨日、確かにここに置いたのだが…。

    「…あ…今日は全体会議か…」

    今日は、幹部全員が集まって会議をする日だった。
    …朝からこの調子で大丈夫だろうか。

    ーーー

    「あ、おはようネシさん」

    「!…吐血さん、おはよう」

    1週間ほど前に会議室と説明された部屋の前に来ると、同じタイミングで吐血さんと会った。
    良かった…ここで合っているようだ。

    「…あれ…他の幹部の人たちは?」

    見る限り、吐血さん以外の面子が揃っていないように見える。

    「ああ、皆?皆はね、時間にはルーズだから。まだ来ないよ。皆、何かと夜更かしするからねえ」

    国の一幹部がそれでいいのか…と心配したが、自分も人のことを言えない身だ。
    ここでは黙っておこう。

    「まあ、私たちだけで先に入っておく?」

    「あ、うん…」

    吐血さんが部屋の中に入ろうと言うので、無意識に自分が扉を開けようとした。
    上官に開けさせるワケにはいかないという意識だったのだろう。
    しかし、それがダメだった。


    ガッ!!


    「っ?!」

    「…あちゃー…」

    切れてしまった。
    俺が。
    俺の手が、俺と同様扉を開こうとした吐血さんの手を、切ってしまったのだ。
    俺が普段している手袋は、俺の獣のように鋭い爪を曝け出させないようにするためのものだった。
    そうだったのに。
    なんで、こう言う時に限って…!!

    「っ!!!ごめんっ!!!!」

    頭が真っ白になる中、ボタボタと血を落とす相手の手に自分が持っていたハンカチを強く被せる。
    まずは止血を…!!
    俺がそう焦っている時だった。

    「…ネシさん、」

    「!…」

    吐血さんに、その手を止められた。

    「このくらい、大丈夫だよ」

    「っ…!!でもっ…!!」

    「大丈夫、大丈夫。私を何だと思ってるの」

    そう言っている間に、つい先程まで血が溢れていた手が元通りになっていく。
    俺はその光景を見ることしか出来なかった。

    「…あ……」

    そして元通りになったその手を俺に見せて、吐血さんは笑った。

    「ほら、大丈夫でしょ?痛くも痒くもないんだよ。私は生粋の人外だからね」

    …つまり、俺は1人で焦っていただけだったのか…。
    肩の力が抜けて、思わず立ち崩れそうになる。

    「おっと。…大丈夫?」

    「…ごめん…俺、1人であんなに焦って…」

    そんな俺の頭を帽子越しにぽふぽふと撫でる吐血さんに、余計に自分自身が情けなくなった。

    「…私のために、あそこまで焦ってくれるのは逆に嬉しいけどなあ…」

    優しく、俺のことを慰める相手は、ずっと俺の頭を撫で続ける。
    俺が落ち着くまで、ずっとそうしてくれていた。


    俺も何とか落ち着き、そんな俺の様子を確認した吐血さんが俺に話しかける。

    「それにしても、いつも着けてる手袋が無いね。無くしちゃった?」

    「朝見たら…無くなってて…」

    「へえ…」

    ただの言い訳には聞こえるだろうが、本当に無くなっていたのだ。
    今、吐血さんがどう思っているかは知らないが、こうとしか言えない。

    「……」

    俺が先程の件を負い目に感じていると、何やら吐血さんが俺の後ろの方を見ている。
    何だろうと俺もそちらを見ようとしたが、それは吐血さんによって止められた。

    「…ネシさん、最近…おかしいこととかない?
    例えば…一般兵たちの視線の様子がおかしいとか、さ」

    突然のその質問に、俺は声が出なかった。
    何故そんな急に…?
    いや、正直に答えたところで…実際、それは俺の自意識過剰だろうし…。
    陰口なんて…。

    「…いや、何もないけど…」

    自分自身もどう答えればいいのか分からないまま、そう答える。

    「……そう。…なるほどね」

    「…?」


    相手の言葉の意味が分からず困惑していると、どことやら他の幹部たちが集ってきた。

    「あれー、吐血さんとネシじゃーん。何してんの?」

    前線戦闘部隊、隊長の黄色い奴ことポタキム。
    俺がこの場で1番憎むべき相手。
    サッと吐血さんの後ろに周ると、吐血さんは少し笑いながらそれを受け入れる。

    「…色々あってね」

    「ふーん?…てか、ネシは私から分かりやすく逃げんなよ」

    「話しかけるな」

    嫌悪の表情と声で返すと、相手は「アイツ、酷くなーい?」と自分の隣にいた小柄な幹部に話しかけた。
    同じく前線戦闘部隊であり、隠密や情報収集も担っているいろによである。

    「あははー。だって、初印象最悪だもん。のぽたちゃんが悪いよ」

    「えー…」

    不服そうに返事をする相手とは別方向から、ゆっくりと歩いてきたのはあるだんさん。

    「あ、吐血さーん。あ、ネシさんも。ポタキムさんもによさんもいるー!ポタキムさんが私より早く来るなんて珍しいですね」

    初っ端からかなり鋭いことを言う。

    「そうかなー?たまにあるじゃん」

    「そうでしたっけ?」

    お互いに憶えていないようなので、真偽は不確かだ。
    似たもの同士か?

    「あ、皆さん揃ってるー!!俺たちが1番遅れちゃいましたよ、みやさん!」

    情報部隊隊長のユ音さん。
    吐血さんとあるだんさんの次に信用できそうな人だ。

    「あれま。やってしまいましたねえ…ひとまず入りませんか?もう既に大所帯ですし」

    副司令官部隊のみや。
    初対面から妙な視線で見られているので、どうも警戒が解けない。不気味だ。

    「…それもそうですね。入りましょうか」

    全員揃ったようで、吐血さんが扉を開こうとしたが、少し止まって突然何故か俺の方に向き直る。

    「いや…ネシさんにやってもらおうかな」

    「…!…わか、った…」

    相手の意図はよく分からなかったが、言われたままに扉を開く。
    手袋が無い状態でというのが少し申し訳ないが…。
    俺が扉を開くと、吐血さんは俺に礼を言って中に入って行く。

    「…ありがとう、ネシさん。
    …あ、そうだ。今日は私のを使うといいよ」

    と、また止まって俺の方に振り返り、俺の手に自分の手袋を着ける吐血さん。

    「え…そんな…!」

    「大丈夫だよ。私は血でそれを着けている風に見せられる」

    そう言って、吐血さんは手袋を外したばかりの手を、手袋を着けたような見た目に変化させる。
    …そういうことも出来るのか…。

    「じゃあ、入ろうか」

    ーーー

    「…というワケで、ネシさんはしばらく戦闘部隊から抜けるから。いても後衛戦闘部隊くらいかな」

    会議が始まって少し経つと、そのような話題を出される。
    自分自身のことなので、多少なりとも申し訳なさはある。しかし、それに異議を申し立てる相手によって、それは変わる。

    「えー…!!!ネシ、いなくなっちゃうの?!」

    アイツである。
    最早名前すら呼びたくない。

    「…」

    「のぽたちゃん、私前説明したよねー?」

    俺が無視で返していると、ソイツの隣にいたいろによが逆にソイツの肩を掴む。

    「えー、だってそんな長くいないって聞いてないしー」

    「まあ、それは私も言うのを忘れてたかな」

    と2人が会議中にも関わらず私語を話しているが、誰1人それを止めようとしない。
    代わりに全員が全員、その会話を聞いて笑っている。
    …心地いい。
    この空間が、何故か何よりも心地良かった。
    何故だろう…?


    バンッ!!!


    俺がそうこう考えていると、突然会議室の扉が勢いよく開く。
    一体何だと身構えるが、他全員はいつものかあ…と失笑している。
    マジで何……!?

    「すみません!!会議があるということを忘れて、実験の方をしていました!!おはようございます!!!」

    この声は知っている。
    というかあの黄色い奴に並ぶくらい聞きたくなかった声。
    研究実験部隊隊長、疾風である。

    「うん、おはよう。疾風さん死刑ね」

    張り付いた笑顔で疾風さんに死刑宣言をする吐血さん。

    「ええぇえっ!?!流石に刑が重すぎませんか!?減刑を!!」

    そしてそんな吐血さんに減刑をしてもらおうとする疾風。
    コレがいつもの光景なのか…。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💴💴💴☺👏❤💯😊😊😊💜😂🐺🇱🇴🇻🇪
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works