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    botomafly

    よくしゃべるバブ

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    ジュナカル 遠路春々 7_1

    その日最後の授業を終えてアルジュナは下駄箱兼ロッカーへと向かっていた。厚手のコートにマフラーと手袋。冬の装いだ。
     ロッカーが見えてきたところで後ろから声をかけられ、肩を組まれる。衝撃を受けながらアルジュナは声の主を見上げた。
    「アシュバッターマン……随分お元気そうで」
     高三の冬、冬休み前。受験生ならそろそろ最後の追い込みをする。同じ中学、高校に通い進学する大学までもが同じというこの同級生だって暇ではないはずだ。だというのに何故か物凄く晴れやかな顔をしている。
    「シケた顔してんじゃねえかアルジュナ! お前もどうだよ、クリスマスの息抜き」
    「……というと?」
    「バスケ。学期最後の部活くらい後輩の顔を見に行ってやらねえとな」
     暇だろ、と言われてアルジュナは目を据わらせる。絶対むさい。何が悲しくてクリスマスの日にそんなことをしなければならないのか。
     アシュバッターマンは面倒見がいい。夏に引退してからも所属している部活には何度か顔を出しているようだ。アルジュナはというと高校では部活に入らず生徒会に精をだしていて、学期末の挨拶は生徒会室で軽く済ませて終わりだ。
     暇かといえば、まあそうだ。長兄と次兄を経て徐々に適当になってきた両親もクリスマスくらいは遊んでくればいいと言ってくれている。しかしアルジュナがクリスマスに会いたいのは友人でもなければよく知らない友人の後輩でも新しい女友達でもない。
    「私はクリスマスも勉強で忙――……」
     途切れたのはコートのポケットに入れていたスマートフォンが震えたからだ。授業中はバイブを切っているが終わったら入れている。無論、カルナからのメッセージにはなるだけ早く返したいからである。
     スマートフォンを取り出したアルジュナはメッセージアプリを開くとそこにある文面に口端が上がるのを感じた。先程までのやり取りに対する返信と、クリスマスに会えないかという追加のメッセージだ。こちらに来る用事があって明日から父親の家に泊まるらしい。
     アシュバッターマンが覗き込んでいるのも気にせず返信する。勿論会いたいです。
    「お前今忙しいとか言わなかったか?」
    「くだらないことに時間を使うほど暇ではないという話です。これは恋人なので別格ですよ」
     特に隠すこともせずアルジュナが言うと友人は足を止めた。ちょうどロッカーに着いたからだと思ったがアシュバッターマンは目を点にしてアルジュナのスマートフォンを指差している。
    「恋人? いつから」
    「……小五ですが」
     アシュバッターマンはゆっくり首を傾げた。空耳だろうか。彼とは中学校から一緒だ。今日までの間に彼は女子から告白を受けたことは何度もあるが、誰かと付き合っているという話は一切出ていない。断るときも「忙しくて貴女に時間を使うのが惜しい」と断るのである。ついででフラれた女子が好きな人はいるのか、好みはどんななのかを訊いてもこの学校にはいないの一点である。
     まさか苦楽を共にした友人に恋人がいることを秘密にしていたとは。許せん。
    「貴方なら三年前に会ったことありますよ。塾前で」
    「あ……ったか?」
    「赤の車と、銀髪の。貴方はヤンキーと言っていましたけど」
     三年前の記憶がアシュバッターマンの中で蘇った。塾の帰りにアルジュナを待っていた赤い車があった。珍しい容姿に派手なビジュアル系の服を纏っていたのでよく覚えている。目鼻が整っていて身長もそれなりにあったが、中性的な顔立ちで体型の分かりにくい服だったのでモデルの女なのか華奢な男なのか判別が付かなかったのだ。
     装いからすれば男のはずだ。男が恋人ということはつまり、アルジュナは。
    「お前、アレだったりするか……? 親にバレていねえだろうな、お前ン家そういうの凄いだろ」
    「ええと……」
     言いづらそうにアルジュナが手招きした。素直に身を寄せて耳を貸すと、初恋が続いてしまって自分が同性愛者なのか分からないのだと言われる。同時に、相手も同じ状態なのだと。性別関係なく相手が好きなのである。
    「両親にはまだ言っていないです。元々親戚の近所に住んでいた兄のような人で、一緒にいても特に言われないのでこのままでもいいかな、と」
     アシュバッターマンに言ったのは親友で、信頼しているからだ。実際彼は偏見を口にするよりもアルジュナの身を心配をしてくれた。
     そうかと納得した様子の友人に頷き、それではと手を振る。
    「私はこれで。急いでいるので」
     アルジュナは早足で自分のロッカーに向かうと靴を履き替えた。校舎から出て冷たい風に身震いする。けれど思っていたより寒くないのはクリスマスの予定が立って興奮しているからだろう。マフラーに測れる吐息がいつもより熱い。
     つい先程までこの後に用事はなかったが、今のアルジュナにはある。恋人のプレゼントを買いに行くのだ。
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    botomafly

    DONE【ジュナカル】片割れ二つ ひらブーのあれだんだん慣れ親しんできたインターホンを褐色肌の指が押す。部屋主がいることは予め確認済みだが、応答の気配はない。
     寒い冬、日曜日の朝。とあるマンションを訪れていたアルジュナは嘆息してインターホンを睨むともう一度ボタンを押した。インターホンの音が廊下に静かに響く。が、応答はない。毎週この時間にアルジュナが訪ねているのだから家主は気付いているはず。電車に乗ってここまで来るのは距離があるわけではないが夏と冬とくれば楽ではない。相手は客人を待たせるタイプの人間ではないのでトイレで用でも済ませているのだろうか。
     腕を組んで呼吸を十数えたところで上着のポケットに入れていたスマートフォンが音を鳴らした。見れば家主からのメッセージで、鍵は開いてるから入ってくれという内容だった。インターホンの近くにはいないがスマートフォンを触れる環境にはいるようだ。
     しかし。
    「……お邪魔します」
     ドアの先へ踏み込めばキッチンのついた廊下があり、廊下を仕切るドアを潜ればそこにあるのはワンルームだ。あの部屋の広さでインターホンに手が届かないとはどんな状況だ。
     何となく予想がつきつつも鍵を締めて廊下を進む。途中のキ 2216

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