寡言のいろ「唇の色が、ちがう」
彼女の唇を縁取る色が、ふと見たことのない彩りに変わっていたことに気がついて、イデア・シュラウドはそう呟いた。
イグニハイド寮、わが牙城たる自室に、イデアは先日付き合うことになったばかりのかわいいかわいい恋人を招いていた。
「自分の部屋に好きな子がいるんだが!?なにかのバグでは!?いや一生修正されないでほしいバグですが」と頭の中では軽く緊急メンテナンスが行われていたが、「イデアくんのにおいがするね」と彼女がはにかんだのを見て、イデアの意識は一気に目の前の現実に引き戻された。
「ぇあッごめん、くさい?こんなオタクの濃縮還元スメルの満ち満ちた部屋、くさいに決まってるよね、待って今消臭剤を」
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