可愛いって言う話「可愛いですね」
最初は隣にたまたま咲いていた花に言ったんだと思った。
「ふふ、可愛らしい」
今度は側を通りかかった若い女性のことを言ったんだと思った。あぁいう雰囲気の子が好みなのか……と薄ら考えていた。
「今日も可愛いですね、ブートヒルさん」
二人しかいないプライスレス号で真っ直ぐに見つめられて放たれたその言葉は、明確にブートヒルに向けられていた。
***
「本当に貴方は可愛いらし……むぐっ」
「〜〜っ!アンタそれやめろっつってんだろ!」
金属製の冷たい手のひらで口を塞ぐ。
その日ブートヒルは依頼もなかったため昼間から意味もなく街を散策していた。こんな日はいつもであればアルジェンティに連絡して予定が合えば出かけたり、プライスレス号にお邪魔させてもらったりしていた。
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