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    前あげていた小ネタの書きかけ
    想いを伝えれなかった世界線のお話

    「すまない。来るのが遅くなってしまった」

    ここは地球。街からもサイバトロンの基地からも離れた辺境の地、色とりどり豊かな花々が咲き誇る丘。
    普段の彼を知っている者達なら驚くであろう……釣竿と空のバケツを揺らして、空より蒼い機体は朗らかに笑った。

    「今日掛かった獲物は大きくてね。おたくのくらいあったんじゃ無いかな。」

    釣れたらおたくにも見せたかったよと、カランっと小気味好い音を響かせバケツが置かれる。

    「…今日は君にプレゼントがあるんだ」


    胸の収納庫から優しく取り出されたのは花束。いや、地球の花を模して作られた造花だった。ウルトラマグナスが仕事の合間を縫って漸く完成したそれは一本一本装飾まで拘りぬき、漸く昨日完成した作品だった。

    それをゆっくりと平たい墓石の上に捧げる。

    ぽつんと人にとっては大きいな…トランスフォーマーの、更に言えばウルトラマグナスのような大型機にとって小さな石が置かれただけの簡素な作り。

    私が作った…。
    ダニエルと一緒にする釣りが趣味で、お昼寝が好きだった彼の為に。死んでからも一人で頑張り続けた彼の為に。

    墓とはいうのもの墓石の中に彼はいない。
    あの騒動の後だ。彼の意思ではなくとも、我々トランスフォーマーは勿論のこと延いてはこの星の人々さえ手にかけようとしたのだ、当然埋葬なんて出来やしなかった。

    未練がましく彼の影に縋っては、受け入れられない私がいる。
    もしかしたら死んだなんて本当は嘘で、何かの間違いか質の悪い悪戯で。ある日ひょっこり帰ってきてと…などとあり得ないことを考えてしまう。

    シティーコマンダーとしてあるまじき体たらく。だが、止めるというプロセスを実行する事は終ぞなかった。

    あの時想いを伝えてていればこうはならなかったのだろうか…。と何度ブレインで考えてみようとも、違うシュミレーションを繰り返そうとも、正しい答えは未だ出ない。
    ただ1つ、目の前の石がもう手遅れだと言う事を叫んでいた。

    ならばせめて、せめてもの手向けだ。伝えれなかった言葉をかき消すのはとうの昔にやめた。

    我慢しかしてこなかった私の、ほんの些細な抵抗だ。だから何度もこの場所に通うのだ、私の思いを言えずにいた言葉を、口に出すのだ。


    「愛してる。ロディマス」


    その声が自分の耳に届かぬよう、すぐに背を向けギゴガゴと言う音を残し走り去っていく運搬車。砂煙をあげるそれは器用に花を風に揺らせ帰路へ着いていく。


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