「俺が、目を大きくして、白くてふわふわの髪にしたら旬くんはもっと俺のこと好きになってくれる?」
セックスをした次の日の朝、同じベッドで眠る男からそんなことを言われて今井は起き抜けの頭をフル回転させた。
少し考えて頭に浮かんだのはかつて自分が追いかけていたキラキラの女の子。「ああ…」と低い声が出た。
「俺は冬樹さんをルイたんの代わりにするつもりはありませんよ」
「いや、代わりとかそういうつもりは…」
「じゃあどういうつもりなんですか?」
旬くん怒ってる。なんでだろう。
そんな風に考えていそうな山本の顔に今井は眉を寄せた。
なんでわかんないかな。…まあ人の気持ちに敏感だったら、事件を隠蔽しようとしたり市村さんに美人局をさせてないか…。
「だって、旬くんは二階堂のことが大好きだったから…。だから、二階堂みたいになりたくて」
「そりゃあルイたんは大好きですよ、でも冬樹さんに対する好きとは種類が違います」
「……旬くんの好みは、細くて、可愛くて、キラキラで…白いふわふわの髪の…」
「冬樹さん」
強い口調で名前を呼ばれてびくりと怯える山本。怯えたように、人の機嫌を伺う目。自分が蒔いた種なのに被害者面をしているその様に怒りを抑えながら今井は言葉を続ける。
「ルイたんと貴方は別の人間です。わからないですか?」
「わ、わかってるよ……」
「わかってないです。ルイたんは、俺の推し。冬樹さんは、俺の愛する人です。」
「…あい…」
怯えていたその瞳は一瞬で形を潜め今度は頬が赤く染まる。忙しい人だ。
うなじに指を入れてサラリと髪を撫でると昨日自分がつけた、赤く染まった痕が見えた。
「俺が愛しているのは、髪がサラサラの焦茶色で、背が俺よりも高くて、声が低くて、ちょっと面倒くさいところもあるけど、俺のことが大好きな、可愛い人です」
「うう………」
「もっと言えますよ、聞かせてあげましょうか」
目を泳がせて口をぱくぱくさせる山本。
恥ずかしがって「いい」って言うかな、それとも素直に「聞かせて」かな。どっちかな、そう思いながら今井は山本の次の言葉を待つ。
「 」
今井にしか聞こえない小さな声で耳元で囁かれた言葉に今井は口角を上げた。