俺の忠犬は待てが出来るマークスに何度もマスターを見ると胸のあたりがそわそとする事がある、と言われる。
俺はその答えを知っているけれど、でもマークスにはまだ早い。
マークスは俺の愛銃だけれど、でも恋愛になると話しが違ってくる。
でも、手入れをしたりする度に、その綺麗な顔をずい、と俺に近づけてマスター…と切なく俺を呼ぶマークス。
ど、どうしよう、俺の愛銃、顔がいい…って!そうじゃない、そうじゃない。
マークスは大事な愛銃なんだから。
それに俺はマスターとして他の貴銃士と話したり…マークスがその度に、忌々しそうな顔をしているから、マークス、駄目だろう、と叱るんだけれど、大型犬のように耳が見えてしゅんとしてしまうから、最近はあまり怒らない。
でもみんなと仲良くして欲しい。
チームワークだってあるんだから。
それに俺もマークスも男なんだから…って言い訳だよな…。
マークス、その気持ちは恋だよ、って言いたいけど、でもマークスに理解出来るかどうか…そもそも人間になってからのマークスはまだ日が浅いのだから、マークスがもしも他の人に恋をしてしまったらどうしよう…。
って、いい事じゃないか。
俺にマスター、マスターと見えない尻尾をブンブン振ってやってくるマークスの事は嬉しいけれど、でも俺とマークスは同性同士でマークスは俺の愛銃なんだから。
俺だって、マークスを見る度にドキドキしてるなんて言えない。
それにマークスは恋の知識もないから、気づかれない筈。
絶対非道を使う度に、マスター、顔色が悪い、俺が無理をさせてしまった…としょんぼりしているから、大丈夫だよ、とマークスに言い聞かせる。
俺はマスターで、マークスは愛銃なんだから、絶対に許されない恋なんだ。
それなのに、マークスの手入れをしていると、マークスは切なげに俺を見てくる。
「どうした?マークス…?」
「その、他の人間に聞いたのだが、俺のこの気持ちは恋だと知った。マスター…恋とはなんだ?」
ああ…気づいちゃったんだ。
ここで変に誤魔化すのはマークスに対して失礼だ。
こんなに切ない顔をして俺を見つめて…いつも、俺を心配してくれて。
「マークスの、俺を想う感情が『恋』なんだよ。俺を守ってくれたり、絶対非道を使うのを躊躇したり…」
「マスターは?マスターは俺が好きか?恋をしてくれているのか?」
うう…顔が近い…かっこいい…。
ナチュラルに壁際に追い詰められてしまう。
マークスは俺の顔を覗き込む。
好きか嫌いかで言えば、不甲斐ない俺を慕ってくれているマークスの気持ちは嬉しい。
けれど、恋愛となったら、また違うセクションの話しになってしまう。
好きだ、と簡単に言えたらどれだけいいか。
でも、こんな切羽詰まった顔をして、好きか?と聞いてくれるマークスを無碍に出来ない。
「大切な存在だよ」
「そうか。嫌われていなくて良かった。マスター…その、俺は…マスターが欲しい。俺だけのマスターにしたい」
「それ、は…気持ちは嬉しいよ。けど、俺は他の貴銃士たちのマスターでもあるから」
「嫌だ。マスターは俺だけのものだ。マスターをモノ扱いしてしまった…。すまない、マスター」
「気にしてないよ。でも、マークス…その、絶対に俺はマークスを信じてるから」
「好きの気持ちを表すにはどうしたらいいのか、分からないんだ」
「気持ちを表す?」
「好きならば、その…キス?とかいうものだとかをすると知った」
「そうだね。一般的な恋人なら、そうするよ」
「キス?というものはなんだ?どういう行動だ?」
マークスはピュアだなぁ…。
俺はつま先立ちして、マークスのがっしりのした背の高さに合わせて、唇を合わせる。
「これがキスだよ。分かった?」
「わ、分かった。マスター…その、大胆な行為なんだな」
「そ、そうだね…マークス、ごめん、初めてだっただろうから…」
「マスター、俺からもキスしたい」
マークスに抱きしめられて、ちゅ、ちゅ、とリップ音をさせてキスを幾度もしてくる。
けれど、恐らくマークスの知識にはキス以上の知識もないだろう。
「マークス、誰にでもキスはしちゃだめだよ?」
「マスターとしかしない。俺にとってマスターは特別だ」
うう、どうしてそんなかっこいい顔で「特別」とか言うんだ、マークス…。
そんな事言われたら、俺だって意識しちゃうじゃないか。
恋という感情もキスも初めてなマークスから寄せられる好意はくすぐったい。
「マスター、唇以外にもキスをしていいのか?」
「そうだね。例えば、つむじとか鎖骨とか…んんぅ!?」
「マスターとのキスが気持ちいい…」
ちゅと、軽く唇を吸われる。
やっぱり、マークスの性の知識はキスしかないらしい。
俺だって一応男だけど、男同士の仕方とか分かってはいるけれど、でも相手はマークスだ。
だめ、だめなのに…。
俺が言った通り、マークスは俺のつむじに、鎖骨にキスをしてくる。
甘噛みされたりして、変な声が出そう…。
くすぐったい、ぺろぺろと首筋を舐められて、あ、あっ…と甘い声をマークスに聞かせてしまう。
「ま、マスター、どこか痛いのか?すまない、噛んでしまった…」
「へ、平気だよ」
「マスター、今の声…すごく、心地が良かった」
「そ、そうかな。あ、あの…マークス、近い」
「マスターを独り占めしたい」
その気持ちは分からないものでもないのだけれど…。
でも、駄目だ。
キスまでなら引き返されるだろうけれど、マークスにはまだ早いというのか…見た目は見目麗しい成人男子だけれど、マークスはまだどこか人間の感情の発露に戸惑いを見せている。
きっと、俺がマスターだから、マークスは「恋」という感情と勘違いしているのではないか、と思う。
確かに、恋い慕う気持ちが嬉しくない訳ではない。
俺が答えに窮していると、マークスは俺にキスをしてくる。
俺が呼吸が苦しい事をマークスの大きな背中を軽く叩いて伝えるのに…僅かに開いた俺の口の中にマークスの舌が入ってくる。
俺は軽くマークスの舌を吸う。
「マークス、好き…俺も好きだよ」
「そうか、こういう状態のマスターと俺は恋人なのか?俺を恋人にして欲しい。マスター…」
「ん…いいよ。マークス…」
キスを幾度も繰り返す。
けれど、唐突にマークスは俺の身体を離す。
ど、どうしたんだろうか…?
「マークス?どうしたんだ?」
「キスをしていたら、苦しくなった…っ」
「苦しい?どこか痛いのか?」
「ここ、が苦しい…っ」
マークスは俺の手を取り、自身の中心を触れさせる。
ああ、なるほど、勃起してしまったのか。
うるうるした瞳で、マークスはマスター…と見つめてくる。
うう、その大型犬みたいな瞳に弱いんだよ…。
ど、どうしよう…しっかりしろ、俺はマークスのマスターなんだから!
苦しんでいるならば、助けるしかない。
俺は自分を奮い立たせ、マークスを自室のベッドに座らせる。
「その…マークスの苦しいの、取ってあげるから…俺も下手くそだと思うけど、でも一生懸命やるから」
マークスのミリタリー服のベルトを取ってあげて、それでガチャ、ガチャと生々しい音がする。
「ま、マスター、何をするんだ?」
「ふ、フェラ…その、俺も初めてだから下手くそだと思う」
「フェラ?」
下着を寛げると、マークスの勃起したペニスがぶるっと大きさも立派で、俺の男としてのプライドが…。
ってそうじゃない。
苦しそうなマークスを、助けてあげないと。
ちゅ、ちゅ、と最初は竿にキスをしてあげる。
「ま、マスター、そんなところに…っ、だ、だめだ…っ」
「だって、マークス…こういう事でしか、それ、収められないんだ」
「そ、そうなのか…でも、マスター、その…っ」
「大丈夫。任せておいて」
とは言ったものの、あまりのマークスのペニスの大きさに俺も驚いてはいるけれど。
俺は耳朶まで真っ赤になって、マークスのペニスの先端をぴちゃ、ぴちゃと舐める。
「マスター…っ、だめだ、そんな事…っ」
ちゅう♡とペニスの先端を軽く吸う。
マークスは、その大きな身体を震わせ、初めての受動的快楽に戸惑っているのだろう。
だめだ、と口では言うマークスだけれど、身体は快楽を求めているのか、腰がかく、かく、と動いている。
ペニスの先端から青臭い先走りが出てきた。
「マスター…っ」
「んんぅ…っ、我慢しなくていいから、マークス…」
「だ、だが…っ、マスターの口の中に何か出て…っ」
「大丈夫。正常な反応なんだ」
「そ、そうなのか?マスターも、これをされたらそうなるのか?」
「わ、分からないよ…んん…っ、んむ…っ」
俺は無我夢中でマークスのペニスを吸う。
熱い吐息を漏らし始めるマークスに、俺のこんな拙いフェラで感じてくれてるのが嬉しい。
ちゅううう♡♡♡と強く吸うと、マークスはびくっ、びくっ、としている。
俺が上目遣いにマークスを見ると、マークスは歯を食いしばって我慢している。
亀頭の割れ目あたりを強く吸うと、マークスは俺の頭を引き剥がそうとする。
「だ、だめだ…っ、マスター、なにか出て…っ」
ダメ押しとばかりに、俺はマークスの亀頭を責めながら玉の方をふにふにとすると、マークスは一際腰をびくり、とさせて、どくん…っ、どぴゅるる…っ、と濃くて青臭い精液を俺の口の中に出してしまう。
量も多いけれど、俺はマークスの精液を受け止め、ごくん♡と飲む。
「す、すまない…っ、マスター…っ、その…、頭が真っ白になってしまった…っ」
「それが気持ちいい、って事なんだよ。大丈夫?マークス?初めて射精したんだから」
「しゃせい?」
「ええっと…大人になったら、ペニスから精液が出るようになるんだよ」
「マスターもそうなのか?」
「そ、そうだよ」
「マスターのもしてあげたい」
「駄目だ。マークス…っ、あ、こらっ、待って…」
「マスター…っ、駄目か?俺はやはりマスターの特別にはなれないのか」
「違うよ。特別だから…、大切にしたいんだよ。マークスにはまだ早いから、いいよ。大丈夫」
「そうか…マスターはやはり凄いな…」
「あ、えっと、口、うがいしてくるね」
「マスター…っ、また…っ、してくれるか?」
「うん」
口を漱ぎに行く。
マークスは俺が口を漱ぎ終えると俺の背中からぎゅっと抱きしめてくる。
「マスターを離したくない。ずっと一緒にいたい」
「うん。分かるけど、今夜はここまでだよ。マークス、俺もきちんとマークスが好きだよ」
「そ、そうか!俺も勉強をして、マスターを気持ちよくさせる!」
ど、どういう勉強をするつもりなんだ、マークス…。
盛り上がっているマークスには申し訳ないけれど、おやすみ、とマークスを剥がしつつ、扉を閉めて、へたり込む。
ああ、どうしよう、あんな事しちゃって…。
マークスに変な事を覚えさせてしまった。
おやすみ、と言ったけれど、頭を冷やそう。
了。