第5話「波が奏でる旋律」「なしなー!ポコかれーらいすが食べてみたいんだポコ!」
テレビには子供たちがスプーンを上手に使い白いお米に茶色いルーをかけた美味しそうなカレーライスを食べるCMが流れる。
そしてそれを眺め目を輝かせてなしなへポコがお願いをする。
「カレー?」
「ポコ!」
「カ、カレーね、もちろんワタシに任せて。」
急なお願いに一瞬目をそらすように狼狽えながらもこの小さな友人の期待に答えるためなしなが握った拳の親指を上げて返事をする。
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凝ったものさえ作ろうと思わなければカレーライスは初心者向け料理。なんなら大半の人は調理実習などでも作る機会が多くあるはず、ただせっかくならポコ達には初めてのカレーライスは美味しいもの食べて欲しいと思った……だから1人では不安だと2人を呼んだのに。
「まさかカレーライスすらまともに作れないなんてワタシ達……。」
「わねかだ!チョコを!入れようとするな!アル!!」
「え、チョコって隠し味に使うんでしょ。」
「それは隠す量じゃないネ。」
まるでルーそのもののように板チョコを鍋に入れようとするわかめだとそれを必死に止めようとする共ポジの姿。
そう、共ポジはまだまともだ。包丁自体を使い慣れているのか手際よく人参、じゃがいも、玉ねぎを切り刻んでくれた……全て細かくみじん切りにしたこと以外は。
「カレーライス楽しみなんだポコ!」
「きっととっても美味しいんだフガよ!」
2人の妖精の輝く眼差しが痛くなしなの背中に突き刺さる。
かくいうなしなも実際には作ったことのないカレーライスにあたふたと手を走らせる。
「美味しい?」
ダークマターと化す寸前わかめだがどこかへ電話をかけアドバイスを貰いつつ最終的にはなんとか形になったカレーライスをポコとフガに差し出す。
もぐもぐもぐ。
「おいしーーポコ!」
「お米とかれーのハーモニーなんだフガ!大きなお山くらい食べられそうフガ!」
「地球には美味しいものがたくさんなんだポコ……いつかポコリーヌ星のみんなにも食べさせてあげたいポコ。」
もぐもぐと口とスプーンを動かし小さな頬をハムスターなように大きく膨らませたポコが満点の笑顔をなしな達に向ける。
「喜んで貰えたなら良かった、ポコリーヌ星ってポコとフガの故郷だっけ?」
「そうだポコ!」
「なしなもクレソンも共ポもいつか一緒に行くポコ!」
カレーを食べてご機嫌なのか嬉しそうにポコリーヌ星の話をするポコ。
ピンピーン。
突然鳴った玄関のチャイムになしなが足を進める 。
「あれ何か頼んでたっけ……?はーーい!」
「こんばんは!!はじめまして!
も〜〜!フガもポコもいつになっても私のこと迎えに来てくれないし、美味しそうな良い匂いもするから来ちゃった〜☆」
ドアの前にはチョコミントを思わせるミントブルーの可愛らしい髪色をして2つのお団子をクマ耳のようにヘアアレンジした少女?の姿。
「ポコ?!なんでキミがここ
「オマエは!納豆テロ女岩波セレナーデ!!!」」
ポコが言葉を言い切る前に共ポジが声を大きく上げる。
「ひどいよくるっぽーちゃん!私はいつも幸せのお裾分けをしてるだけのなのにっ!」
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少女のように思われたこの女性はどうやら共ポジの大学の同級生らしい。
「え、この子もプリキュアなの?!」
「そうだポコ!それにセレナーデはポコとフガと同じポコリーヌ星から来たんだポコ!」
「カレーライス美味しいね〜〜地球って美味しいものがたくさんあって私大好き〜〜〜!」
もぐもぐとカレーを口いっぱいに頬張るセレナーデとそのセレナーデをじっと睨む共ポジ。
「共ポもセレナーデのこと知ってたなら教えてくれれば良かったのに。」
「コイツがプリキュアなのは知らなかったネ、大学で無駄に絡んでくる変なやつアル。」
「ごちそうさまでしたーー!とっても美味しかったよ〜〜!」
(悪い子では無さそうだけど。)
ワタシ達と同じプリキュアであり、ポコリーヌ星人だと教えられポコとフガ、セレナーデを見る。
「同じポコリーヌ星人でもセレナーデは私達とほんとんど変わらないんだね。」
わかめだも同じことを思っていたのか疑問を口に出す。
まさに妖精というような姿のポコとフガと違いセレナーデはただの人間と変わらない姿をしている。
「えへへ、そうかな〜?でも私もちゃんと地球の人と違うとこあるんだよ?ほら!」
笑顔を向けながらセレナーデがなしな達にとっても見慣れたカラフルアミュレットをポケットから取り出し手をかざす。
『今宵も聴こえる波の音。あなたの心もセレナーデ〜♪』
光り輝くプリキュアへの変身と共に
はらりと髪でできた団子を解いたその中から出てきたのは髪と同じくミントブルーの色をした柔らかそうな可愛らしいクマのような耳。
【岩波セレナーデ!キュアセレナーデ変身☆】
「わあぁ!」
「かわいい。」
「ケモ…耳アル!!」
「それ本物なの?」
「触ってみる〜?」
「いいの!?」
初対面だということも忘れてセレナーデのその耳に興味を奪われるなしな達。
「し、失礼します…!」
ぷにっ。
「はっ!」
床に倒れるなしな。
「できたての、すあま!」
「ちょっとなしな、耳に触ったくらいでそんなになるわけないじゃん大袈裟にやめてよ
……お願いします。」
むにっ。
「う!!」
「宇宙…はんぺん…!」
意味のわからない言葉を残し倒れる2人。
「わ、我はいいアル、耳に興味なんてないネ!」
後ろずさる共ポジをいつの間に復活したのかなしなとわかめだが掴む。
「共ポもいこっか?」
「なんならケモ耳とか1番興味示してたよね?」
まくっ
「ネコチャン!!!」
そう言葉を叫び共ポジも地面に倒れ伏す。
「いや、くま耳でしょ。」
「おーい共ポ〜。」
倒れた共ポジをつんつんと2人がつつく。
「みんながちゃんと光のプリキュアとして戦ってくれてるか監査するのが私の役目なの〜!!だからこれからよろしくね〜〜!」
「セレナーデ誰も聞いてないポコ。」
「大事なことは最初に言わないと駄目なんだフガ。」
固まる3人のプリキュアを横目にセレナーデがピースときらきら輝く笑顔を向けそれにポコとフガが突っ込みを入れていった。