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    POIPOI 29

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    CPP修正済み校正前

    第10話「京都トラベラー」「たしかに出張で京都に行くって言った……で…なんであんた達までいるのよ!!」
    新幹線を待つ15番ホームの駅にわかめだの声が大きく木霊する。

    「休みだったから!」
    「楽しそ〜だから〜!」
    「起こされたアル。」
    楽しそうに弾んだ2つの声に反するように不満げな声を共ポジがあげる。
    「大丈夫くるっぽーちゃんの旅行カバンは私が用意しておいたんだから!」
    そうドヤ顔でいつも通り論点の違うVサインを向けるセレナーデにため息がもれる。
    そうして止まることはなくキャリーケースがコロコロ地面を進む。

    ーーーーーーーー
    がたんごとんっとこの文明の利器による速さに比例しない静かな揺れが車内を揺らす。
    「ユーロさんも来れたら良かったのにねー。」
    「ちょっと!ゆーちゃんにまで声かけてたの?」
    「当たり前じゃないワタシも友達だし〜 !でもお店のことがあるからって謝られちゃった。」

    「……みんなで来ちゃったらもし敵が来た時どーするのよ。」
    「ぽんぽこぽーん!そんな心配はご無用なんだポコ!」
    ポコっとなしなの鞄からポコとフガが飛び出し説明を始める。
    「もしフガ達がいないときに敵が現れたらポコポコアラームが反応するようにしておいたんだフガ!」
    クレソンが心配するユーロの周辺もちゃんと!

    フガとポコの自信満々な様子に押されわかめだが一応は納得したと言葉を続ける。
    「わかった、ついてくるのはもう諦めた。でも言っておくけど私1日目は仕事で一緒にいれないんだからね、大丈夫なの?」
    「大丈夫だよ〜!まずはね、みんなでパンダに会いに行く予定なの!」

    「パンダ?」

    「パンダ!」

    「パンダアル?」
    セレナーデの宣言に全員がこだまのように同じ単語を返し首をかしげる。
    「はぁ、まあなしながいるならひとまずは大丈夫か。なしな案内任せたからね。」
    セレナーデの話はひとまず置いておいて、なしなの実家は京都から近い。そう少しの安堵の気持ちを込め新幹線の残りの旅路の時間を過ごす。
    ーーーーーーーー
    「パンダいないポコ!」
    「岩波嘘ついたネ!!」
    共ポジがセレナーデの襟を掴みぶんぶんと前後に揺らす。
    「ち、違うよくるっぽーちゃん!ちゃんと地球のこと調べたんだから!
    パンダは笹を食べるって!!」

    「セレナーデもしかして、だから嵐山に行くって言ってたの?」

    実はね……嵐山にパンダはいないんだよ。

    なしなにささやかれセレナーデが叫ぶ。
    「私のパンダちゃん!!!!!」
    くま+シマウマ÷natto=パ ン ダ
    謎の方程式が書かれたセレナーデのトートバックが風に強く吹かれる。

    「でもお団子美味しい〜。」
    先程まで落ち込んでいた面持ちはどこへやらもちもちっと甘くしょっぱい焼き目のついたみたらし団子をセレナーデが口いっぱい頬張り嵐山を歩く。
    「よしよし、ほらパンダはいないけど大きい竹はいっぱいあるよ?」
    こーーんなに大きいの!
    なしなの言葉にフガ達が上を見上げる。風に吹かれ道を挟む大きな竹達がサラサラと揺れる。

    「すごいフガ、共ポ何人分なんだフガ!」
    「なんで我で計算しようとするネ。」
    「それは小さ…。」
    「オマエのが小さいアル。」
    妖精のその愛らしいフォルムを全く気にすることなく顔をギュムッとわしずかみにする共ポジが少し先に見える。
    「ポコ〜仲良しになったポコ!」
    「ポ、ポコはやく助けてほしいフガ!」

    「みんな見て!ちりめん細工のお店だって!」
    「ちりめん?」
    なしなが指さす先には京都の景観に良くあった和を思わせる扉。
    「はやくはやく!こっちー!」

    店内へ入ると目に入るのは黄色、オレンジ、緑、ピンク、オレンジ、青様々な色に溢れた、可愛らしい小物の数々。

    「なしな!!これなにアル!」
    「これがちりめん細工!日本の布でできたやつなの!」
    「ニホンの…。」
    「かわいいでしょ?」
    「かわいいアル。」
    「これね、和柄っていうの。」
    「中国のとはまた違うネ。我これ好きアル。」
    珍しく素直に感想をこぼしコクコクと頷く共ポジのその姿になしなの頬が緩む。

    「なぎさちゃん達ー!みてー!おすし!」
    ちりめん細工でできたお寿司を腕いっぱいに抱え笑顔で振り向くセレナーデ。

    買いすぎちゃったね、そう笑い合いながら観光地1箇所目にして増えた荷物をホクホクと抱え駅へと歩く。

    「あ、こんなとこにダラックマのお店できてたんだ!わかめだに自慢してやろ〜!共ポジ!セレナーデ!ポコ、フガ!さっき風車のとこで撮った写真も一緒に送るからね〜〜!」

    ーーーーーーーーーーー

    「なしな!きょーとにはいっぱいキレイなものがあるポコね!」
    「そうだよ京都はいろんなものがあるの!むかーしの人が作った大きな塔とかぜーんぶ金色の建物とか縁結びの神社とかいろいろね!」

    「さ!次はカラフルで素敵なとこ行っちゃうわよー!」

    なしなが案内したのはレトロ感溢れる可愛らしい喫茶店。
    「ここ!ワタシのおすすめのお店なの。」
    24種から自由に選べるカラフルなソーダ水にアイスが乗ったものがうりとなっている。
    「ポコ〜悩むポコ。」
    「いっぱいあって決められないフガ!」
    「我はこれがいいネ!!」
    「どれにしようかな!」
    「ワタシ今日はこれ!」

    一見すると3人に対し5つと余分にも見える注文にも慣れているのか怪訝な表情をされることもなく店員によって並べられる色とりどりのクリームソーダ。

    「ふ゛っ!!」
    「ポコー!!」
    初めての炭酸を吹き出したポコと心配そうにポコを呼ぶフガに笑い声が溢れる。

    「きらきらいつ見ても綺麗!」
    黄色のソーダがしゅわしゅわと音を立てさくらんぼを乗せたアイスが小さく沈んだ。

    ーーーーーーーーーーー

    「王道と言ったらここも外せないわ!」
    1日目の観光が終わり仕事も片付いたわかめだとの合流を果たした2日目の始まり。
    「伏見稲荷の千本鳥居!!」

    「綺麗な赤だフガー!」
    「でしょでしょー!あれ、これ本当に千本あるんだっけ?」
    「なしながわからないやつ私に聞かないでよ。」

    「みーんなー!これ見てキツネ!」
    セレナーデが何より先に売店の狐のお面に飛びつく。
    「わかる。狐面っていつ見ても欲しくなっちゃうのよね、よし今回はワタシも買っちゃお!!」

    狐のお面を購入しルンルンと鳥居の並ぶ階段を上がる。
    「はぁ、は、思ったより上あるんだね。熱いし……焼ける。」
    「わねかだはもっと体力つけた方がいいネ、モヤシアル。」
    「黙れチビ。」
    「は?」
    「なしなから聞いたんだよね〜フガから小さい認定されてたって?」
    「ぶっ飛ばすアル。」
    狐の面をつけた共ポジとわかめだが早歩きで追いかけっこを始めようとする。
    「そこ観光地で走るなーー!!!」

    鳥居を抜け開けた先にはおもかる石と札がかかれ置かれている石があった。
    「おもかるいし……?」
    「ポコこれやりたいポコ!!」
    「お、重いポコ〜〜。」

    1人石と戦うポコにセレナーデが後ろから手を回す。
    「ポコ大丈夫?ほら2人で持てば軽い軽〜い!」
    「これ、かるい?となにかあるフガ?」
    う〜ん、わかんないポコ!そう笑いながら他のみんなの到着を待つ。
    ーーーーーーーーーーーー
    時刻もお昼を過ぎ先程より人で賑わってきたお土産屋の店内をみんな各自おもいおもいに回る。
    「な、なんて読むんだポコ。」
    「わからないフガ!」
    「でもきっとこれは高いんだポコ!」
    だって綺麗な宝石がたくさん入ってるんだもの!
    瓶に詰められた金平糖を2人がコソコソと眺める。

    そんな2人を笑顔で眺めなしながレジへ2つの小物を運ぶ。
    ポコとフガによく似た色の2つの花のつまみ細工の髪飾りを。
    「これください!」

    「ううん、ゆーちゃんのお土産どれにしようかな。セレナーデ何見てるの?」
    視線を向けたセレナーデと共ポジの前には京都らしい和のパッケージに包まれた色とりどりのネイルの数々。
    「これ、かわいいアル。」
    「つめに優しいんだって〜!」
    「これ岩波みたいネ。」
    ミントアイスとかかれたミントブルーのネイルを共ポジが指さす。

    「いいね、それ簡単に落とせるならゆーちゃんにも良さそう。ってか自分用も買いたいかも。」

    結局それを見たなしなも含め全員がそれぞれの好きな色を買った。

    「可愛い。」

    きっとこれで飾った爪を見る度にこの時の楽しい気持ちを思い出す。
    ーーーーーーーーーーー
    「あーーーあと数時間もしたら帰りの新幹線なんてやだ〜〜!!ワタシもっと遊びたいー!」

    「そもそも私仕事だったんですけど。」

    「それはそれ、これは……。」
    「なしな?」
    なしなの声が急に止まる。

    「おかあさん?」
    誰にも聞こえない音でなしなが小さく呟く。
    なしなが見つめる視線の先には1人の女性の姿。
    「うそ。」
    嘘と声に出すが絶対に有り得ない話ではない。だってなしなの実家からここまでそう気軽に移動できない距離ではないのだから。

    ポコポコポコー!
    プリキュアにしか聞こえない音が思考を停止させた頭に響く。
    「敵なんだポコ!」
    「みんなお願いフガ!」

    急な暗闇。消える人々の影。
    ただなぜか目の前の母はそのままに。
    「きっと敵が1人のあの人を狙ったんだフガ、助けないと!」
    「錠前!はやく変身するアル!」

    「わかってるって…!」
    『あなたの心アンロック!』

    フガと共ポジに声をかけられ意識を切り替え僅かに震える指をカラフルアミュレットに伸ばす。
    大丈夫変身すれば顔隠しがある。戦ってすぐその場から離れれば。


    急に現れたといえど今こちらには4人のプリキュア、そう時間は掛からずに戦いは終わる。敵を倒した後考えていたようにその場をすぐ立ち去ろうとする。が……母へと振り返る。
    急な異形に襲われることになった母は驚きに目を見開き固まっている。
    「も、もうだいじょうぶですよ」
    そう声をかけ、腰を抜かしたように道に座り込む母へ錠前が手を差し伸べる。

    「なんなの急に!こんなことして迷惑なのが分からないの!そんな服を着て動き回るなんて女性として恥ずかしくないのかしら!!ああ気持ち悪い。」

    ヒステリックな甲高い声。
    差し伸べたはずの錠前の手が1つ宙を漂い。それを隠すようにその手を自身の背中へ隠す。
    昔も言われたその言葉。
    ああこの人はなにも変わってない。

    「なぎさちゃん…大丈夫?」
    「え?大丈夫だよ!」
    心配そうに声をかけるセレナーデに大丈夫と返す。
    大丈夫、だってこんなのわかってた事じゃない。

    母のことについてはフガが魔法を使ってくれたらしい。今回はプリキュアの正体がバレたわけでない。だから母はただ数十分間の記憶がないことに少しの違和感を覚えるだけ。

    時計を見る。帰りの新幹線の時刻が近づいていた。

    「みんな帰ろっか。」

    いつもと変わらない錠前の笑顔を向ける。


    ーーーーーーーーーーーー
    ガタンゴトン。太陽も沈み新幹線から見える窓の外も暗くなる。
    「ポコもフガもセレナーデも共ポもみんな疲れて寝ちゃったみたい。お土産用の八つ橋まで食べちゃって、乗り気じゃないです~みたいな顔しといて共ポジずっと楽しそうだったしね、次はもっとちゃんと計画立ててから行くんだからね。」

    「……うん。」

    何も映らないはずの窓へ向きなしなが静かに返事をする姿をわかめだが見る。
    むぎゅ
    イタイくらいの力でわかめだがなしなの両の頬を両手でつねる。

    「うにふ゛んのよお。」

    なしながわかめだの手を払い除けようとするがわかめだはその手は離さない。

    「なしないたいでしょ、痛いときはちゃんと泣くの。」

    「!」

    わかめだの緑の瞳に顔をつねられいまにも泣き出しそうな自分の顔が映る。
    そうしてなしなの黄色い瞳がやっとこちらを向いたことに気づいたわかめだが手をゆっくり離す。
    手は離されたはずなのになしなの頬はまだ赤く、ヒリヒリと痛みを訴える。
    「いたい。いたいよ、ばかめだぁ。」

    「ひっ…ひっぐ、うわあああん。」
    耐えきれなくなったなしなが子供のように声を上げて泣く。
    「なしな。」
    そのまま下げた手をもう一度なしなの頭に持っていく。
    「ばか!ばかぁ!お母さんワタ…ワタ゛シに気づきもしなかった!」
    「うん。」
    「で、でもお母さんがもしかしたら…ひっく……褒めてくれるんじゃ、いかって…期待した自分にもむか、ついて。」
    「…うん。」
    「なしなはすごいよ、偉いの。ちゃんと守ったよ。」

    すごい。偉い。ただありきたりな言葉のひとつ。でもそれが1番あの時……ううん昔から欲しい言葉だった。
    壊れた蛇口のように涙がなしなの頬を濡らし続ける。

    ばかで、あほで、いつも笑顔で能天気に見えるこの友人は本当は人の感情にずっと敏感で。
    わかめだは泣くなしなの頭を撫で続ける。

    「うぅん…ぽこ……?」
    「まだ家じゃないネ。だからもう少し……寝るアル。」

    今はおやすみ、少しだけその瞳を閉じる。
    これからの明日をまたみんな笑って過ごせるように。









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