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    CPP2期

    第8話「」昔むかし、この宇宙には、たくさんの魔法の力を持った神様と神様の魔法の力を奪って宇宙を自分のものにしようとした悪い王様がいました。
    神様は悪い王様から魔法の力を守るために宇宙のあちこちの星に力を分け与えることにしました。
    それでもどうしても魔法の力が欲しかった悪い王様は自分の手下に宇宙中に散らばった魔法の力を集めてくるように命令をしました。
    魔法の力は次々と奪われ、魔法の力を奪われた星々は悪い王様に支配されてしまいました。
    悪い王様が少しずつ宇宙を支配し始め、ポコリーヌ星という小さな星を支配しようとした時、“プリキュア“という魔法の戦士が現れて悪い王様の手下は倒されてしまいました。
    初めて手下を倒した“プリキュア“の存在は宇宙中に広まり、あちこちの星で“プリキュア“が誕生し、悪い王様は魔法の力を奪えなくなってしまいました。

    それでも、全てのプリキュアが悪い王様に勝てたわけではありませんでした。

    これは、悪い王様に負けてしまったプリキュアとその妹の悲しいお話。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    "ソレ"は突然現れた。
    カキン星の美しい青空が暗闇で覆われ、姉はたった1人で化け物に立ち向かった。
    無力な私は姉の小さな背中が暗闇の向こう側に消えていくのをただ見ていることしか出来なかった。
    再びカキン星に青空が戻った時、姉が私達の元に帰ってくることは無かった。

    それから数年後、化け物が私の目の前に現れこう言った。
    お前の姉は生きている。姉にもう一度会いたければ自分達の仲間になれ、と。
    死んだと思っていた姉ともう一度会える、それは私が人間を辞めるには十分すぎる理由だった。
    自分の中の何もかもをグチャグチャに書き換えられるような痛みに襲われた後、私は深い眠りについた。

    数百年という長い眠りから目を覚まし、私はついに姉との再会を果たす。
    「お姉ちゃん!」
    「あら、あなたが王様の言っていた新しい"オトモダチ"?」
    「お姉ちゃん私の事が分からないの…?」
    「私はあなたのお姉ちゃんじゃ無いわよ?ふふ、でも確かに私達ソックリね」
    姉は私の手を引いて鏡の前に立ち、楽しそうに笑う。
    姉は私の事を、いや、自分の身に起きた全てのことを忘れていた。

    後から化け物に聞いて分かったこと。
    姉はカキン星を守るために自ら宇宙の敵の仲間になったということ。
    姉が記憶を消されているということ。
    私たちは魔王に呪いをかけられており、魔王を倒せば自分達も死ぬということ。
    姉は“失敗作“で私は"成功作"だということ。

    「出来損ないの姉貴のために人間辞めちまうなんて、揃いも揃って馬鹿な姉妹だなぁ!」

    化け物は私の質問に一通り答えた後、大きなひとつ目と大きな口をニヤリと歪ませ緑色の身体を揺らして笑った。

    ぷつりと何かが途切れる音がした。

    ふと気がつくと私の手には真っ赤なリンゴが握られていた。
    辺りに充満する焦げ臭い匂い。
    地面には何かに抉られたような大きな穴が無数と出来ていた。
    「何が、起きたの…?」
    手に持っていた真っ赤なリンゴがポトリと落ち、コロコロと地面を転がり、目の前に立つ“黒い物体“にぶつかって止まった。
    何かに焼かれたように黒く焦げたその物体は先ほどまで喋っていた化け物とよく似た形をしていた。
    化け物によく似たそれはリンゴがぶつかった瞬間、ぐしゃりと音を立てて足から壊れ、黒い煤になって風と共に消えていく。
    ぎゅっと手を握り、ゆっくりと手を開く。
    甘い香りと共に、真っ赤なリンゴが現れる。
    それを遠くに投げてみる。
    リンゴが地面に触れた瞬間、大きな爆発音と共にリンゴが爆ぜ、地面に大きなクレーターを作った。

    そうか、私はもう無力な子供じゃないんだ。
    私は大切なものを守る力を手に入れたんだ。
    姉を救えないなら、1秒でも長く一緒にいられように。
    もう2度と大切なお姉ちゃんを一人ぼっちにしないように。

    「魔王サマ、アタシに任せてよ。雑魚はぜ〜んぶアタシが始末仕上げる!」

    この“シアワセ“を守るためなら、なんだってする。
    お姉ちゃんが本当にこんなことを望んでいるのか、なんて誰にも分からないから。
    アタシはこの“シアワセ“を信じるよ。

    〜〜〜

    痛くないよ。
    怖くないよ。
    だってお姉ちゃんと一緒にいられるから。
    どんな悪いことだって。
    怖くないよ。
    お姉ちゃんが一人ぼっちにならないためなら。
    辛くないよ。
    ねえ、お姉ちゃん。
    だからもっと褒めてよ。
    お姉ちゃん
    おねえちゃん
    もっとほめて
    おねえちゃん
    アタシのなまえをよんで
    おねえちゃん

    あれ?
    アタシだれのためにがんばってるんだっけ?

    アタシだれになまえをよんでほしいんだっけ?

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    「パリンちゃん!!!」

    強く体を揺すられて我に返る。

    「あ、おねえ、ちゃん」

    お姉ちゃんが心配そうにアタシの顔を覗き込む

    「疲れちゃった?今日随分と派手に暴れたものね」

    お姉ちゃんの言葉で辺りを見渡す。
    今日はキタウミドウ星という星の魔法の力を奪いにきていた。
    キタウミドウ星は常に雪が降り、柔らかな雪で覆われた大地と雪で作られた美しい建造物が有名な星だったが、今は雪が全て溶け荒れた大地が剥き出しとなり、あちこちで轟々と炎が燃え上がっていた。

    「パリンちゃん私がもういいって言ってるのに全然言う事聞かないんだもの、びっくりしちゃった。何かいいことでもあったの?」
    「ああ〜うん、そう!いいことあったの!」

    何があったの?と聞くお姉ちゃんに、お姉ちゃんには秘密だよ〜と笑って誤魔化す。

    おかしい。

    お姉ちゃんに止められた記憶も、必要以上に攻撃した覚えもない。
    今日だけではない。
    少し前から感じていた異変、まるで“自分が自分で無くなってしまうような“そんな感覚に襲われる。
    その感覚は日に日にひどくなる。
    アタシはお姉ちゃんとは違って元は普通の人間だ。
    もしかしたら、限界、がきているのかもしれない。

    お姉ちゃんを1人にしない、それがアタシの生きているたった一つの理由。
    そのためならどんなことだってしてきた、たとえ大勢の人を不幸にすることになったとしても。
    お姉ちゃんはそんなこと望んでいないかもしれない。
    それでも魔王に歯向かうなんて選択肢はアタシにはなかった。
    アタシにはお姉ちゃんの命を絶つような事は出来ないから。

    なのにどうして

    お姉ちゃんとの時間を守ろとすればするほど、アタシはアタシを失っていく。
    もしこのままアタシがアタシで無くなってしまったら、お姉ちゃんはまたたった1人で宇宙中の敵として戦っていくことになるのだろうか。
    大切なものを守るために何もかもを奪われて生きていると誰にも知られることなく、お姉ちゃん自身も知ることなく、ただの“悪“としていつかプリキュアに倒されてしまうのだろうか。
    お姉ちゃんのそばで生き続ける、絶望の中で見つけた小さな“シアワセ“縋ることすら許されない。

    「パリンちゃん、王様からプリキュアのとこに行けって命令が出たわ。行きましょう」
    「わかった」

    地球のプリキュアは他の星と比べて随分と弱かった。
    弱いくせに、どれだけ絶望させても、どれだけ強力な手下を送り込んでも、何度も立ち上がり、仲間と力を合わせ、互いに支え合い、立ち向かってくる。
    最初はバラバラだったプリキュア達が、一つの目的に向かって少しずつ強くなっていくのを戦うたびに感じる。

    プリキュアと戦うお姉ちゃんの後ろ姿を見て考える。
    もう何百年と経っているのに、プリキュアとしてアタシ達を守るために1人で暗闇に向かって行ったお姉ちゃんの小さな背中がずっと忘れられない。

    「戦闘中に考え事とはいい度胸ね!」

    ガードのしていなかったアタシは燕尾服に似た衣装に身を纏ったプリキュアの攻撃をもろに受け、地面に強く体を打ち付け気を失った。

    〜〜〜

    「ん…」

    お姉ちゃんが運んでくれたのだろう。目を覚ますとそこは硬い地面の上ではなく自室のベッドだった。

    「わかめだ、だっけ。せっかくお姉ちゃんの魔法で絶望させてあげたのにすっかり元気になっちゃって、むかつく。なんで、魔法で強化させた時よりも強くなってんのよ。」

    わかめだの攻撃を受けた所がズキズキと痛む。

    「パリンちゃん!起きたのね、具合はどう?」
    「平気。迷惑かけてごめんね」
    「ちょっと待ってて、今温かい飲み物持ってくるから」

    そう言って席を立とうとするお姉ちゃんの服を引っ張って引き留める

    「?どうしたの、パリンちゃん?」

    「お姉ちゃん、正義のヒーローになりたい?」

    お姉ちゃんは何を言っているのか分からないという顔で首を傾げる。

    「えへへ、なんでもないよ」

    変なパリンちゃん〜と言いながらお姉ちゃんは部屋を出ていく

    「わがままな妹でごめんね」

    1人になった部屋でポツリと呟いた

    〜〜

    お姉ちゃんを1人にしない、それがアタシの生きる意味。
    それなら、最期までその決意を全うできるように。
    この悲しい物語を終わらせるために、最後くらいは正しい選択を。

    魔王を倒す。

    それがアタシとお姉ちゃんの最初で最期の正義
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