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    aoura2727

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    aoura2727

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    書きかけで上げてたウスロナを書き上げた。とても短い。ウス←ロナ的な感じ。

    冷めないうちに湯気の立つ紅茶をドラウスが一口飲んだ。それに倣うようにしてロナルドも一口飲めば爽やかなベルガモットの香りが鼻に抜けた。

    ロナルドの事務所で紅茶を飲み交わしている訳だが、それを用意したのは来訪者たるドラウスだった。勝手知ったる家とばかりに紅茶を淹れて何故か家主のロナルドに振舞っている。この状況に慣れているせいか、ロナルド自身もさして口を挟むことがなくなった。
    ドラウスが一人勝手に自慢の息子について語っているのを、ロナルドはぼんやりと聞いている。片手間に砂糖を紅茶に追加し、ティースプーンでくるくるとかき混ぜた。柔らかな低音に混じって食器がぶつかる甲高い音が鳴る。

    「なぁ、どうやったらこんなに上手く紅茶淹れられんだ?」

    会話の切れ間、ロナルドは以前からの疑問を零した。確かめるようにもう一度紅茶を飲む。

    「俺あんまり味の違いとか分かんねぇけど、何か香り? とか違う気がするんだよな」
    「お前の淹れ方が悪いんだろう。ちゃんと蒸らしているか?」

    ドラウスの細眉が顰められた。咎めるような視線がロナルドを射抜く。

    「いや、俺あんまり自分で淹れることないから。まぁドラ公が来る前は自分で依頼者の人に出してたりしたけど」
    「ほぅ。意外だな」
    「で、蒸らすって?」
    「そんな初歩的なことも知らないのか」

    呆れたような溜息混じりの声がロナルドの紅茶に溶ける。悪いかよ、と呟きながら琥珀色の湖面を見つめた。そこに映る自分の瞳は幾分か赤みがかって見えて、目の前の吸血鬼とお揃いだなんて思ってしまう。

    「淹れ方を私が直々に教えてやろう。忙しいドラルクの手を煩わせるのも癪だからな」
    「あんたが暇すぎるだけなんじゃねぇの」

    軽口を叩いてみればムッと大人の顔立ちが歪んだ。ずっとずっと歳上のドラウスが、こうして子供のように表情を変えることがロナルドは好きだった。まるで昔からの友人と話しているような、そんな身勝手な錯覚をする。

    「あまり舐めた口をきくなよ」

    ロナルドの言葉ひとつでドラウスは容易くその内側を明らかにする。そのくせ優雅な所作でティーカップを持つ姿は、やはり自分と同列に語ることの出来ない男なのだと見せつけてくるのだった。

    「まずだな、茶葉によって淹れ方は変わってくる。だが共通しているのは淹れる相手を考えることだ」

    その台詞にロナルドは相槌を打つよりもまず意味を逡巡してしまった。教師が生徒にものを教えるような、そんな顔のドラウスをじっと見つめた。
    瞬きをして、手元の紅茶を見下ろす。少しぬるくなり始めたその温度はロナルドの手に馴染んでいく。

    「そう、か……」

    今になって腹に収めた紅茶が胃の中で熱く存在を主張し出した。熱を失いつつあるカップの中の紅茶は甘さを増している。

    「どうした? お前にはまだ早かったか?」
    「いや、何か……やっぱ俺は淹れてもらう方がいいかも」

    紅茶を淹れてくれる時間だけでも、この男が自分のことを考えてくれるなら知らなくてもいい。
    近頃「甘える」ことを知ってしまった青年は、ささやかに齎される他人の愛情を胸の宝箱にそっと仕舞った。
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