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    @t_utumiiiii

    @t_utumiiiii

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    @t_utumiiiii

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    ミルエダ前提エミエダ(エミリーとエダ)※エミールは不在
    ※日記のないキャラクターの言動を背景推理等から捏造
    ※捏造荘園設定

    「心理学者」(ミルエダ+医師) ここ数日は雨が続いており、随分久しぶりに思えるその晴れ間は、冷え冷えとした雲間から僅かに覗く程度の弱々しいものだった。しかし、何であれこの機を逃すべきではないと判断したエミリーが、あまり使う者は多くなく、今日のように朝早くに訪れると無人であることが多い洗濯室に自室のシーツやタオル類を持ち込み、手で洗濯していたところにやってきたのがエダである。エミリーが洗濯物を抱えているのを見ると、「あら先生、手伝いましょう」と、いたって機嫌のよさそうに提案してきた――おそらく徹夜明けであろう――彼女の背後に、彼女がここに来た時から終始引き連れている例の患者の姿はない。そのことについてエミリーが質問してみると、エダは「エミールは試合中よ」と、何食わぬ顔で答えた。
     この荘園で「心理学者」を名乗るエダ・メスマーは、一部の極端な招待客(サバイバー)と比較すれば問題なく会話を行えるだけ随分社交的であるとも言えるが、あまり積極的に他人とかかわり合いになろうとする性質ではない(どちらかといえば、常に例の患者を連れてまるで一対の存在のようにして互いの瞳を見つめ合い、二人の世界を繰り広げている)が、時折こうしてエミリーに声を掛けてくる事があった。勿論、彼女はエミリーにだけ声を掛けるというわけではないが、彼女がエミリーに声を掛け、少しでも彼女が何かに手を煩わせていようものなら、それに対して速やかに支援を持ちかけてくる理由の一つには、間違いなく、荘園主から医師にのみ渡されている「薬剤」を入手したいという狙いがあるのだろうということは、エミリーにも見当がついていた。
     彼女の恋人、もとい患者のためにはそれが必要だとエダは臆面なく主張するが、エミリーは医師という観点からして、エダ・メスマーの行う(エミリーの視点からすると、その非倫理性から)まるでままごとのような“人体実験”を支援するために、彼女に薬品を手渡すことは気が引けた。そこで、「そう数もありませんし、お手を借りるのも悪いわ」と言って申し出をエミリーが断ると、エダは「あらそう」と言ってどこかに行ったかと思うと、おそらくは自室(或いは例の患者に与えられている部屋)から、古い血がついたタオルを持ってくると、彼女の横に立って洗い始めた。

     彼女たちの間に共通する話題は特段多くなく、また、タオルの手洗いを始めたエダも、特別エミリーに話しかけたりはしなかったため、彼女たちはしばらく無言のまま、冷たい水で洗濯仕事を続けていた。しかし、そうしてエミリーが一仕事終えたところで、数枚のタオルを持ち出し、エミリーよりも早くそれを一通り洗い終えていたエダが、「干しに行きましょう」と彼女に声をかけたことで、結果的に二人一緒に、屋敷の中のサンルームに向かうことになった。タイミングがいいのか悪いのか、サンルームの中にも人影がない。エミリーがシーツを干している間に、エダは彼女が持ってきた洗濯籠からエミリーのタオルを取り出すと、それを軽く振って皺を取ってから、用意していた洗濯竿に引っ掻けた。そのように、特別頼んだわけではないものの結果としてエダの手を借り、程なくして物干しを終えたエミリーが仕方なく、「……手伝わせてしまったみたいで、ごめんなさいね」と挨拶程度に言うと、エダは彼女の予想通り、「ところで、ついでになってしまって申し訳ないのだけれど、先生にお願いがあるのよね」と返してきた。
     「最近私、どうにも眠りが浅くて」という言葉で求められた睡眠薬が、その申告から想定された通りの使われ方をしないだろうことは、既にエミリーにも薄々見透かせることであった。しかし、結局手を借りてしまったという事実とともに、エミリーに見透かされているだろうことを知りながらも動じず、エミリーに対して堂々と口実を作っては薬を求めるエダからの圧に屈したように「ええ……後でお渡しします」と言いつつ、エミリーがそれとなく場を濁すために――何せここで大人しく部屋に戻れば、彼女は堂々と部屋の前までついてきて、薬を求めてくるだろう。不適切に利用するとわかっている相手に、それを理解しながら毒にもなり得る薬を渡すことは、正直気が進まない。だから、この場は誤魔化しておいて、後からもう一度要求されたような時に、「ごめんなさい、忘れてしまっていたわ」ということにしよう――部屋に戻る素振りは見せず、サンルームに植えられた植物のひとつひとつの、生命力ある青さを眺めていると、彼女から一旦言質を取ったエダも、それでよしとして退散してくれるでもなく、エミリーに付き添うようにして、サンルームの中の植物を、やや退屈そうに眺め始めていた。

    「……仮に、貴女の治療法が本当に効果的なものだったとして、」
     暫くして、医師のエミリー・ダイアー(この荘園で医師を名乗る人間は、彼女一人しかいない。技術面においては確かに医療のレベルに達した処置を行うことのできる彼女が、実際問題として、現在有効な医師免許を保有しているのか否かを敢えて気にする者は、この荘園に存在しなかった――最後の試合が終了するその時まで、誰一人として、死を以ってしても、敷地外に出ることを許さないこの荘園においては、気休めの鎮静剤や鎮痛剤、止血剤の投与ができればそれで十分だということもある。それは、彼女の素性を概ね把握している元同僚のようなものであるエダにとってもそうだった。)が、その柳眉の間に、ささやかながらしかしはっきりと、懸念を示すように皺を寄せたまま言い出したその言葉に、エダは(元々ツリ目の形をした目をミステリアスに伏し目がちにしている彼女の表情は、彼女が何かを意図しないうちから、他人の目には鋭く映るものだったが、彼女の内心としては)大して気分を害した風もない、れっきとした事実を並べるというような調子でいて、揺るぎのないきっぱりとした声で「催眠療法は、事実効果を発揮しているわ。」と応じる。
    「それは先生も、効果は試合でご覧になったでしょう?」
     茨の棘めいた刺々しい睫毛に縁取られた、霧雨の降る秋の日のような冷たさのある彼女の、勝ち気というには感情の冷めた怜悧な眼差しで見据えられるエミリーの方は、彼女としては話の本筋ではないところで混ぜっ返されていることにうんざりするかのように、音のない溜息を零しつつ、彼女の患者である庭師の手を借りて温室の隅に作り出した、薬草のための一角に視線を逃がしていた。先日そこにエマと植え付けたカモミールの苗は、華奢な薄緑の葉を肌寒さに鳥肌でも立てているかのように逆立てて、土付きの鉢から植え替えられた地面の広さにまだ馴染んでいなさそうなか細い様子の茎ながら、しゃんと並んで植わっている。
    「…………ええ、そうね………それで、その治療が、充分に機能して、貴女の患者が完治したときに、貴女はいったい、どうするつもりなのかしら。」
     憚られることを敢えて口に出したというように、何か罪悪感を覚えているような様子のエミリーが横目に向けてくる視線を受けたエダは、そのようにしてエミリーの見せた、何か重いものを寄越してくるような、やや気遣わしげな表情にこそ違和感を覚えたように首を微かに傾ぎつつ、「どうもこうも、発表するだけよ」ときっぱりと返した。
    「きっと愉快でしょうね、過去にこの療法を、〝無根拠なままごと〟とこき下ろした連中の顔を眺めることは」
     口ではそうやって愉快だと言いながら、さして楽しそうにもない調子で、エダは淡々と続ける。
    「彼のことは?」
     全く動じない彼女に向かって、エミリーがさらに返した質問に対し、それまで面白くもなさそうではあるが、余裕の滲んだ笑顔を見せていたエダは、少しだけ目を見開き、きょとんと質問者を見遣るが、そこに「痛いところを突かれた」というような不安げに揺らぐ雰囲気や、考えたこともなかったという驚くような調子は無い。強いて言い表すのであれば、「何をそんなことを」と疑問に思っている風の沈黙を一拍分だけ挟んでから、エダはいっそう鼻白んだように続けた。
    「勿論、ずっと一緒よ」
     当然でしょう、とまで口には出していないものの、いかにもそう言うようにエダが返してきた言葉に対して、医師であるエミリーはいくつか、非難めいた言葉を続けた。「医療の倫理に反しているわ」(エミリーの非難に対して、「私は医者ではないわ、あくまで学者よ。」と、エダがいっそからかうように薄く笑って返すと、エミリーは流石にはっきりと目を尖らせながら「尚悪いわ」と返した。)「彼は、貴女の実験動物ではないのよ」(「けれど先生、エミールには過去がないのよ。私以外に、そして私以上に彼を大事に思う身元引受人が、果たして現れるかしら?」)「確かに、苦痛を受けている患者は、少なからず、治療者に依存する傾向があるわ……けれど、それはあくまで一時的なもの。健康を回復したら、最早薬を飲むべきではないでしょう。」(「薬剤は、あくまで副次的にしか用いていないわ」)
     エダはエミリーからの非難を、うねるままに伸ばしている自らの長い髪の毛先を人差し指で絡め取り、その先にあるほつれのような枝毛を見遣りながらあからさまに聞き流しつつ、時に微笑みを交えてからかうように言葉を返していたが、そうしている内に、心做しかやつれたようにも見えるエミリーが、言葉尻に疲弊めいた溜息を滲ませながら「治療者によって支配されている限り、彼が健康を回復することはない。わかるでしょう」と続けたその言葉は、しかし、エダにとって、実感を持って受け入れられるものではなかった。勿論、専門的な教育を受けた彼女はそれを当然承知しており、「そういう理屈」としてそれを理解していた。しかし、それはあくまで、一般的なものでしかない。
    「彼は、私の運命よ。最適の症例。最高の実験体で、私のことを本当に理解してくれた男性。」
     「この治療法が完成したとして、それが、恋人と別れなければいけない理由になんて、成り得ないじゃない。」と、彼女の面立ちにやや攻撃的な美しさを添える睫毛に縁どられた怜悧な瞳に、知的なニュアンスを伴う淡々としたアルトの声色はそのまま、まるで少女のような純真の滲む真っ直ぐな調子で続けられたその言葉に、エミリーはいっそのこと苦々しげに思っていることを隠しもせず、いっそう眉を顰めていた。
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    @t_utumiiiii

    DOODLE公共マップ泥庭

    ※日記のないキャラクターの言動を背景推理等から捏造
    ※捏造荘園設定
    一曲分(泥庭) 大勢の招待客(サバイバー)を招待し、顔も見せずに長らく荘園に閉じ込めている張本人であるのだが、その荘園主の計らいとして時折門戸を開く公共マップと言う場所は、所謂試合のためのマップを流用した娯楽用のマップであり、そのマップの中にもハンターは現れるが、それらと遭遇したところで、普段の試合のように、氷でできた手で心臓をきつく握られるような不愉快な緊張が走ることもないし、向こうは向こうで、例のような攻撃を加えてくることはない。
     日々試合の再現と荘園との往復ばかりで、およそ気晴らしらしいものに飢えているサバイバーは、思い思いにそのマップを利用していた――期間中頻繁に繰り出して、支度されている様々な娯楽を熱狂的に楽しむものもいれば、電飾で彩られたそれを一頻り見回してから、もう十分とそれきり全く足を運ばないものもいる。荘園に囚われたサバイバーの一人であるピアソンは、公共マップの利用に伴うタスク報酬と、そこで提供される無料の飲食を目当てに時折足を運ぶ程度だった。無論気が向けば、そのマップで提供される他の娯楽に興じることもあったが、公共マップ内に設けられた大きな目玉の一つであるダンスホールに、彼が敢えて足を踏み入れることは殆どなかった。当然二人一組になって踊る社交ダンスのエリアは、二人一組でなければ立ち入ることもできないからである。
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    @t_utumiiiii

    DOODLE※日記のないキャラクターの言動を背景推理等から捏造
    ※捏造荘園設定

    マーサが香水使ってたらエブリンさん超怒りそう みたいな
    嫌いなもの:全ての香水の匂い(広義のウィラマサでエブマサ) チェス盤から逃れることを望んだ駒であった彼女は、空を飛び立つことを夢見た鷹の姿に身を包んでこの荘園を訪れ、その結果、煉獄のようなこの荘園に囚われることとなった。そこにあったのは、天国というにはあまりに苦痛が多く、しかし地獄というにはどうにも生ぬるい生活の繰り返しである。命を懸けた試合の末に絶命しようとも、次の瞬間には、荘園に用意された、自分の部屋の中に戻される――繰り返される試合の再現、訪れ続ける招待客(サバイバー)、未だに姿を見せない荘園主、荘園主からの通知を時折伝えに来る仮面の〝女〟(ナイチンゲールと名乗る〝それ〟は、一見して、特に上半身は女性の形を取ってはいるものの、鳥籠を模したスカートの骨組みの下には猛禽類の脚があり、常に嘴の付いた仮面で顔を隠している。招待客の殆どは、彼女のそれを「悪趣味な仮装」だと思って真剣に見ていなかったが、彼女には、それがメイクの類等ではないことがわかっていた。)――彼女はその内に、現状について生真面目に考えることを止め、考え方を変えることにした。考えてみれば、この荘園に囚われていることで、少なくとも、あのチェス盤の上から逃げおおせることには成功している。
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    @t_utumiiiii

    DOODLEクリスマスシーズンだけど寮に残ってる傭兵とオフェンスの象牙衣装学パロ二次妄想ですが、デモリー学院イベントの設定に準じたものではないです。
    the Holdover's Party(傭兵とオフェンス ※学パロ) 冬休み期間を迎えた学園構内は火が消えたように静かで、小鳥が枝から飛び立つ時のささやかな羽ばたきが、窓の外からその木が見える寮の自室で、所持品の整理をしている――大事に持っている小刀で、丁寧に鉛筆を削って揃えていた。彼はあまり真面目に授業に出る性質ではなく、これらの尖った鉛筆はもっぱら、不良生徒に絡まれた時の飛び道具として活用される――ナワーブの耳にも、はっきりと聞こえてくる程だった。この時期になると、クリスマスや年越しの期間を家族と過ごすために、ほとんどの生徒が各々荷物をまとめて、学園から引き払う。普段は外泊のために届け出が必要な寮も、逆に「寮に残るための申請」を提出する必要がある。
     それほどまでに人数が減り、時に耳鳴りがするほど静まり返っている構内に対して、ナワーブはこれといった感慨を持たなかった――「帝国版図を広く視野に入れた学生を育成するため」というお題目から、毎年ごく少数入学を許可される「保護国からの留学生」である彼には、故郷に戻るための軍資金がなかった。それはナワーブにとっての悲劇でも何でもない。ありふれた事実としての貧乏である。それに、この時期にありがちな孤独というのも、彼にとっては大した問題でもなかった。毎年彼の先輩や、或いは優秀であった同輩、後輩といった留学生が、ここの“風潮”に押し潰され、ある時は素行の悪い生徒に搾取されるなどして、ひとり一人、廃人のようにされて戻されてくる様を目の当たりにしていた彼は、自分が「留学生」の枠としてこの学園に送り込まれることを知ったとき、ここでの「学友」と一定の距離を置くことを、戒律として己に課していたからだ。あらゆる人付き合いをフードを被ってやり過ごしていた彼にとって、学園での孤独はすっかり慣れっこだった。
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    @t_utumiiiii

    DOODLE象牙衣装泥庭二人とも怪我してるみたいで可愛いね🎶という趣旨の象牙衣装学パロ二次妄想(デモリー学院イベントの設定ではない)です
    可哀想な人(泥庭医 ※学パロ) 施設育ちのピアソンが、少なくとも両親の揃った中流階級以上の生徒が多いその学園に入学することになった経緯は、ある種“お恵み”のようなものであった。
     そこには施設へ多額の寄付したとある富豪の意向があり、また、学園側にもその富豪の意向と、「生徒たちの社会学習と寛容さを養う機会として」(露悪的な言い方になるが、要はひとつの「社会的な教材」として)という題目があり、かくして国内でも有数の貧困問題地区に位置するバイシャストリートの孤児院から、何人かの孤児の身柄を「特別給費生」として学園に預けることになったのだ。
     当然、そこには選抜が必須であり、学園側からの要求は「幼児教育の場ではない」のでつまりはハイティーン、少なくとも10代の、ある程度は文章を読み書きできるもの(学園には「アルファベットから教える余裕はない」のだ)であり、その時点で相当対象者が絞れてしまった――自活できる年齢になると、設備の悪い孤児院に子供がわざわざ留まる理由もない。彼らは勝手に出ていくか、そうでなければ大人に目をつけられ、誘惑ないしだまし討ちのようにして屋根の下から連れ出されるものだ。あとに残るのは自分の下の世話もおぼつかないウスノロか、自分の名前のスペルだけようやっと覚えた子供ばかり――兎も角、そういうわけでそもそも数少ない対象者の中で、学園側が課した小論文試験を通ったものの内の一人がピアソンだった。
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    @t_utumiiiii

    DOODLE #不穏なお題30日チャレンジ 1(2).「お肉」(傭オフェ)
    ※あんまり気持ちよくない描写
    (傭オフェ) ウィリアム・ウェッブ・エリスは、同じく試合の招待客であるナワーブと共に、荘園の屋敷で試合開始の案内を待っていた。
     ここ数日の間、窓の外はいかにも12月らしい有様で吹雪いており、「試合が終わるまでの間、ここからは誰も出られない」という制約がなかろうが、とても外に出られる天候ではない。空は雪雲によって分厚く遮られ、薄暗い屋敷の中は昼間から薄暗く、日記を書くには蝋燭を灯かなければいけないほどだった。しかも、室内の空気は、窓を締め切っていても吐く息が白く染まる程に冷やされているため、招待客(サバイバー)自ら薪木を入れることのできるストーブのある台所に集まって寝泊まりをするようになっていた。
     果たして荘園主は、やがて行われるべき「試合」のことを――彼がウィリアムを招待し、ウィリアムが起死回生を掛けて挑む筈の試合のことを、覚えているのだろうか? という不安を、ウィリアムは、敢えてはっきりと口にしたことはない。(言ったところで仕方がない)と彼は鷹揚に振る舞うフリをするが、実のところ、その不安を口に出して、現実を改めて認識することが恐ろしいのだ。野人の“失踪”による欠員は速やかに補填されたにも関わらず、新しく誰かがここを訪れる気配もないどころか、屋敷に招かれたときには(姿は見えないのだが)使用人がやっていたのだろう館内のあらゆること――食事の提供や清掃、各部屋に暖気を行き渡らせる仕事等――の一切が滞り、屋敷からは、人の滞在しているらしい気配がまるで失せていた。
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