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    @t_utumiiiii

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    探偵パロ泥庭同人誌(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12268948)の時空で、令嬢が忘れてったパイプを助手が勝手に吸ってる二次

    たばこ※探偵パロ泥庭 床に所狭しと物が転がっていて散らかり放題というわけではないが、部屋の主人が思いつきのままに行動するだけして後片付けをしない(し、助手として雇用されている体だが実質雑用係か使い走りに近い身分のピアソンも、お世辞にもきっちりとした性質ではないので、主人に放り出されて床に転がっているものを、とりあえず上に上げておく程度のことしかしない)ことから、依頼人を通すというにはどこか雑然とした雰囲気の事務所は、今は無人だった。昼下がりの黄味がかった陽光が窓から差し込んで、卓上に積まれた諸々の書類や、厚手の本の表面を焼いていた。
     出入口近くのコート掛けからは例のインバネスコートが消えているから、事務所の主人たる探偵は、どこかへ出かけているのだろう。ピアソンは昨晩の夜遊びが祟って、午後になってからようやく、屋根裏に置かれた彼のベッドから起き出してきたところだった。いつになく静かな事務所に降りてみると、そういえば、クリーチャーが一人で、この部屋に残されるのは珍しい(大概は連れまわされるか、そうでなければ、例の大家が憲兵か何かのように目を光らせているかのどちらかだった)。

     あの娘もようやく、私を信頼する気になったのか。あくび混じりにそんなことを考えては、寝癖のついた硬い髪をばりばり掻き毟ってフケを落としながら、自分以外に人のいない事務所を新鮮な気分で見回したピアソンが、目をつけたのは小振りなパイプだった。彼の雇用主であるエマが、普段被っている鹿撃ち帽の上に引っ掛けているものだ。
     それが今、彼女が普段使っている机の上に置き去りにされていた。なんだ、忘れ物か? というか、クリーチャーは常々疑問に思っていたことだが、あいつパイプ吸うのか? あの女が吸っている場面を、クリーチャーは見たことがない。なら、オモチャだろうか。それかアクセサリー? とはいえパイプ型というのは、ハットピンにするにしては可愛げがない形だ。ピアソンがそれを手に取ってよく見ると、サイズは確かに心許なくはあるが、木目は滑らかで、オモチャというには、よほど作りがちゃんとしているように見えた。宝飾品が埋め込まれている風でもない。

     そこで、自分の上着のポケットを漁ってマッチの箱を取り出し、パイプに火を付けたのは出来心からだった。他人のものに口をつけるのに、今更躊躇するような上品な育ち方をしたピアソンではないものの、一応、雇い主のものを勝手に拝借するのだから、何より、まあ、バレないようにしなければ、という具合の心構えを新たにするために、ひとつ息を整えると、おずおずと躊躇いがちにそれを口元に持っていき、吸口を唇で浅く挟んで、吸い込む、と、激しく咳き込んだ。
     タバコというより、砂糖掛けにした香辛料なんかを刻んで、中にたっぷり入れてるんじゃないかという風味があった。趣味の悪い香水、上品ぶったやつがやたらありがたがるが、口の中で下品なぐらいにべたつく異国の菓子の臭い、ゲーッ。ピアソンは甘たるい芳香を放つパイプを遠ざけながら、砂糖焼けした喉からあまたるい煙を追い払おうとゼイゼイとしきりに咳を繰り返していて、階下から登ってくる編み上げブーツの足音に気付かなかった。

     程なくして、ガチャリと気取らない音を立ててドアが開き、出かけていたはずのエマが顔を出す。寝起きの格好で、片手に持ったパイプを自分から遠ざけながら咳き込んでいたところ、雇用主の予期せぬ帰宅を見てぎょっと目を剥かんばかりの有様になったピアソンに、「あら、起きてたの」と、彼女は普段通りの、見てる分には感じのいいぐらいの微笑みのままにそう言った。

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    @t_utumiiiii

    DOODLE公共マップ泥庭

    ※日記のないキャラクターの言動を背景推理等から捏造
    ※捏造荘園設定
    一曲分(泥庭) 大勢の招待客(サバイバー)を招待し、顔も見せずに長らく荘園に閉じ込めている張本人であるのだが、その荘園主の計らいとして時折門戸を開く公共マップと言う場所は、所謂試合のためのマップを流用した娯楽用のマップであり、そのマップの中にもハンターは現れるが、それらと遭遇したところで、普段の試合のように、氷でできた手で心臓をきつく握られるような不愉快な緊張が走ることもないし、向こうは向こうで、例のような攻撃を加えてくることはない。
     日々試合の再現と荘園との往復ばかりで、およそ気晴らしらしいものに飢えているサバイバーは、思い思いにそのマップを利用していた――期間中頻繁に繰り出して、支度されている様々な娯楽を熱狂的に楽しむものもいれば、電飾で彩られたそれを一頻り見回してから、もう十分とそれきり全く足を運ばないものもいる。荘園に囚われたサバイバーの一人であるピアソンは、公共マップの利用に伴うタスク報酬と、そこで提供される無料の飲食を目当てに時折足を運ぶ程度だった。無論気が向けば、そのマップで提供される他の娯楽に興じることもあったが、公共マップ内に設けられた大きな目玉の一つであるダンスホールに、彼が敢えて足を踏み入れることは殆どなかった。当然二人一組になって踊る社交ダンスのエリアは、二人一組でなければ立ち入ることもできないからである。
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    recommended works

    @t_utumiiiii

    DOODLE #不穏なお題30日チャレンジ 1(2).「お肉」(傭オフェ)
    ※あんまり気持ちよくない描写
    (傭オフェ) ウィリアム・ウェッブ・エリスは、同じく試合の招待客であるナワーブと共に、荘園の屋敷で試合開始の案内を待っていた。
     ここ数日の間、窓の外はいかにも12月らしい有様で吹雪いており、「試合が終わるまでの間、ここからは誰も出られない」という制約がなかろうが、とても外に出られる天候ではない。空は雪雲によって分厚く遮られ、薄暗い屋敷の中は昼間から薄暗く、日記を書くには蝋燭を灯かなければいけないほどだった。しかも、室内の空気は、窓を締め切っていても吐く息が白く染まる程に冷やされているため、招待客(サバイバー)自ら薪木を入れることのできるストーブのある台所に集まって寝泊まりをするようになっていた。
     果たして荘園主は、やがて行われるべき「試合」のことを――彼がウィリアムを招待し、ウィリアムが起死回生を掛けて挑む筈の試合のことを、覚えているのだろうか? という不安を、ウィリアムは、敢えてはっきりと口にしたことはない。(言ったところで仕方がない)と彼は鷹揚に振る舞うフリをするが、実のところ、その不安を口に出して、現実を改めて認識することが恐ろしいのだ。野人の“失踪”による欠員は速やかに補填されたにも関わらず、新しく誰かがここを訪れる気配もないどころか、屋敷に招かれたときには(姿は見えないのだが)使用人がやっていたのだろう館内のあらゆること――食事の提供や清掃、各部屋に暖気を行き渡らせる仕事等――の一切が滞り、屋敷からは、人の滞在しているらしい気配がまるで失せていた。
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