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    @t_utumiiiii

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    遡及イソップカール(死角)と象牙の塔バッツマン(横木)の二次 
    ※日記がないキャラクターの台詞や行動等を背景推理等をもとに捏造

    He is a type of a misery but...(納棺師(死角)とバッツマン(横木)) 父親を欠いた家庭で育てられた彼には「自閉症、あるいは他の問題があるかもしれない」という推測は、その学年を担当する教師たちの間でも広く共有されており、イソップ・カールは所謂問題児ではあった。しかしながらその「傾向」は、彼を退学処分にするほどのものではないと判断された。むしろ、集団生活の中でその「傾向」を改善し、彼をより良い青年へと育て上げることが、学舎の持つひとつの存在意義なのではないだろうか? どちらかといえば進歩的な価値観を持つ学長の気まぐれな一言により、彼の学生生活は継続されることとなった。母親の神経耗弱の度合いが進んでからは、彼女の忠実な友人エリサの手引きにより、長期休み以外の期間における彼の生活の場は、寄宿舎へと移された。
     そうしてすっかり集団生活の中に置かれることになったとはいえ、イソップに関しての「問題」は、学校側の思惑通り――問題児とはいえ、そのうち集団生活のコツというものを覚え、上手く立ち回るようになるだろう――に進むということはなかった。常に独特のこだわり(とはっきり明言するところまで、彼自身もしっかりとは意識できていないような諸々の拘り)を意識の中に持たざるを得ず、人の気配に敏感な性質の彼はそもそも、およそ集団生活というものに馴染む性質ではなく、そうでなくとも、集団生活という生活様式は、しばしば何らかの形での生贄を必要とするものだった。

     かくして、悪の蔓延る視線の死角に追いやられたイソップは今、空き教室の、外側から鍵を掛けられた掃除ロッカーの内側に閉じ込められていた。何をしても我関せずという顔で押し黙り、露骨に馬鹿にされたところで口答えもしない(とはいえ、集団に囲まれながら折りたたみナイフで頬を切りつけられるような状態で、当意即妙に舌の回る人間なんかも、そうそういるものでもないが)イソップの態度は、集団生活に随分と鬱憤でも溜まっているらしい少年たちの気分を落ち着かせるどころか、かえって逆撫でをするようだった。
     扉をしきりに靴底で蹴り飛ばす音の合間にも、猿のような笑い声が木戸の向こうで割れんばかりに響いてひどくうるさい。猿どもが言うには「変人(フリーク)」の象徴極まるものらしいマスクを剥ぎ取られ(何でも、それを臆面なく着用して出歩くことは、彼らが言うところによると「恥知らず」なことらしい。)、鍵のかかったロッカーの扉を蹴り飛ばされるたびに、狭いロッカーの中で飛び散る埃を吸い込まざる得ない状況のイソップが控えめに咳き込むと、猿どもはいっそう声を高くして笑いながら、大興奮でロッカーの扉を蹴るのであった。
     経験上、程なくして彼らはロッカーを取り囲んで蹴り飛ばしては囃し立てるのを止め、各々のクラスに戻り、何食わぬ顔で授業を受けるのであろうというところは、イソップも理解していた。問題はむしろそこからで、外側から鍵をかけられたこのロッカーから、どのように脱出をするかということだ。猿どもが鍵を開けていくようなことをするわけがない。かといってここは空き教室で、誰かが通りかかった上に、文字通りの死角に入り込んでいるどころか、鍵付きロッカーの中に閉じ込められている彼を見つけ出す確率は、限りなくゼロに低かった。常人なら大声を上げて助けを求めればいいのかもしれないが、イソップにはそもそも大声の上げ方がわからない。

     諸々の現実を前に、イソップが絶望的な気分になって頭を抱えたり、みじめに泣き喚いたりしないのは、彼は自分の身の上に起こる事柄に、そこまでの同情と共感を寄せない性質だったからだ。誇り高いほどの態度で白々と己の生活を貫き、無闇に騒がないその性質が、ある意味で、彼を「死角にした」とも言えるかもしれないし、或いは、救われる望みのない集団生活の中で「死角」に追いやられた人間が、鞄や持ち物、衣服、時にその皮膚を無闇に切り裂かれながら最後に縋るのが、その「誇り高い、物言わぬ犠牲の姿」であるのかもしれないが、いずれにせよ死角のイソップにとってはどうでもいいことだった。
     「何故こうなるのか」ということは、彼にとって大して重要なことではない。そもそもあの猿どもの知能が足りていないのが問題であって、それを教化してこそ学舎の面目躍如と言うべきではないか、と思わないこともないが、イソップのそういった突き放した物言いというのは、彼の頬に応急手当を施した保険医が言うところによると「思いやり」に欠くものらしい。
     人間集団がどのような理屈で動くのかが、イソップにはいまいちはっきりとはわからなかった。自分の意見は、他人の持ち物を切り裂くよりも、思いやりがないというのだろうか? とはいえイソップとしても、ここであからさまな揉め事を起こし、ただでさえ弱っている母の心労を増やすわけにはいかない、という事情があった。母の友人が寄越してくる手紙によると、調子のいい日の、母はイソップの帰りを日々、カレンダーの日付を手繰りながら待っているのだというのだから。
     イソップがそうやって自分の置かれた状況を整理している間にも、外の猿どもがロッカーの戸を蹴りつける音が狭いロッカーの中にガタンガタンバンバンと響き渡って頭が割れそうだ。さっさと静かにしろ! 強張った喉から発することのできない憤りを握りしめた拳で、ロッカーの木戸を内側から叩きつけると、何がそんなに嬉しく楽しいのか、猿がキャキャキャと甲高いぐらいの声を上げて、口々に嘲り笑っている。そこに、鋭い音を立ててヒュッと風を切る音。重い打撃音、笑い声、怒声、喚き声、がなり声、金切声、罵声、悲鳴、ロッカーの扉を殴りつける音。ロッカーの扉を殴る音、音。ふと気づいてイソップが手を止めると、辺りはすっかり静まり返っていた。まるで、ヒタキが窓の外でのどかに囀っているのが聞こえてきそうな程、不自然なぐらいに。

     何かおかしい。暗く埃に塗れむさくるしいロッカーの内側でイソップがひそやかに押し殺した呼吸をしていると、不意に、ドッと鋭い音を立てながら、ロッカーが揺さぶられた。それは、所詮プレップスクールに毛の生えた程の年頃の猿が蹴り出せる生易しいものとは程遠いものだ。打撃の質というものが違う。体格において自分を遥かに勝る相手をよろめかせる程の研ぎ澄まされた一撃が放つ音の気配に、イソップが反射的に身を竦ませていると、軋む音を立てて、ロッカーの扉が開いている。
     先刻内側から叩いている時には、棺に入れられ六フィート下の土の中に埋められているかのように重々しく、びくともしなかった扉を呆気なく押し開けて、イソップが一歩ロッカーの外に出ると、窓から差し込んでいく午後の日差しが、埃塗れの暗がりに鳴らされた彼の視界に飛び込んできた。それに思わず、イソップが端正な程の顔立ちを顰めながら目を背けると、先刻まで自分が掃除道具と一緒に閉じ込められていた木製のロッカーの、元は錠のついていた部分が、文字通り「破れている」のが目に入った。画用紙を拳で殴りつけるような、あからさまな暴虐だ。そこで辺りを見回してみると、引き摺ったような足跡、踏み擦られた血痕、先程までの元気な様子はどこへいったのか、すっかり床に倒れ伏して、背を丸めながら震えているグレーチェックの制服。

     午後の明るさに目が馴染むにつれ見えてきた危険信号に、怯える、というよりも、むしろ危機を見定めるという程の冷静さを以て、彼は目の前の人影に顔を向けた。すると、グリップを擦るような音が聞こえてくる程強く握りしめたクリケットバットを片手に、錠を叩き割るようにして扉を破壊されたロッカーの前に立っていた浅黒い顔の男は、極端な興奮の直後にある、虚脱の只中のような黒々とした目で、イソップを見下ろしていた。そして、彼の灰色水晶の目に見返されたことに気付くと、意志の強そうな形をした凛々しい眉を寄せ、口を戦慄かせながら開き、「何故屈辱に甘んじる?!」と、妙に格式ばった言葉を拙く、そして訛りの強い「粗暴な」発音で、イソップ相手に喚き立てた。
     丁度鼻筋を横切るように鋭い爪痕めいた傷を持ち、そして、見るからに血の気の引いた顔色でこめかみに太い青筋を立てながら、不穏に陰って殺気立った顔色でがなるその男は、彼が「民族風」の着崩し――ネクタイを額に巻き、袖を通すべきブレザーを、腰布のように巻いている――をしているとはいえ、よく見れば、王立クリケットチームを擁するスクールの、紫色が印象的な制服を着ており、校内の事情に通じているものであれば、某校の「誇り高き」チームが火災によって壊滅し、唯一生き残った――彼は「人種的」な都合により、日曜の練習にのみ参加することとなっていたため、難を逃れたのだという――「留学生」の身柄は、一時提携校に預けられているような事情を察することもできたのだろうが、イソップはそういった事柄にてんで興味がない性質だった。
     彼はバッツマン(打者)の言う事に返事らしいものを返さないまま、男の浅黒い顔をじっと観察していた。そして、そのいきり立った獣が、今は奇妙な緊張に強張って、すぐには攻撃行動に移りそうもないことをそれとなく把握すると、バッツマンからふいと視線を外し、黙り込んだまま頬に影を落とす程の長い睫毛を伏せながら、埃や血の散らばった板張りの床に視線を落とす。イソップはしばらくの間、そうやって床を眺めていたかと思うと、やがて目当てのものを見つけたようで、不意に膝を曲げその場に屈み、先刻猿に毟り取られた布製のマスクを拾い上げると、埃を払って耳に掛けた。

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    Replies from the creator

    @t_utumiiiii

    DOODLE弁護士の衣装が出ない話(探偵と弁護士) ※荘園設定に対する好き勝手な捏造
    No hatred, no emotion, no frolic, nothing.(探偵と弁護士) 行方不明となった依頼人の娘を探すため、その痕跡を追って――また、ある日を境にそれ以前の記憶を失った探偵が、過去に小説家として活動する際用いていたらしいペンネーム宛に届いた招待状に誘われたこともあり――その荘園へと到達したきり、フロアから出られなくなってしまった探偵は、どこからが夢境なのか境の判然としないままに、腹も空かず、眠気もなく、催しもしない、長い長い時間を、過去の参加者の日記――書き手によって言い分や場面の描写に食い違いがあり、それを単純に並べたところで、真実というひとつの一枚絵を描けるようには、到底思えないが――を、眺めるように読み進めている内に知った一人の先駆者の存在、つまり、ここで行われていた「ゲーム」が全て終わったあと、廃墟と化したこの荘園に残されたアイデンティティの痕跡からインスピレーションを得たと思われる芸術家(荘園の中に残されたサインによると、その名は「アーノルド・クレイバーグ」)に倣って、彼はいつしか、自らの内なるインスピレーションを捉え、それを発散させることに熱中し始めた(あまり現実的ではない時間感覚に陥っているだけに留まらず、悪魔的な事故のような偶然によって倒れた扉の向こうの板か何かによって、物理的にここに閉じ込められてもいる彼には最早、自分の内側に向かって手がかりを探ることしかできないという、かなり現実的な都合もそこにはあった。)。
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