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    @t_utumiiiii

    @t_utumiiiii

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    @t_utumiiiii

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    幸運児くんと機械人形の声が同じなのは普通に声優の問題だと思いますが……という感じの二次です(機械技師と幸運児)※ご都合荘園設定※日記背景推理のないキャラクターの言動を捏造しています

    かたちのない(機械技師と幸運児) 機械技師トレイシー・レズニックは機械人形を操る技術を持ち、荘園の試合(ゲーム)にあたっては解読速度と手持ちの機械人形を用いたトリッキーな戦法、そして、「最後の試合」が終わるときまで試合で損壊しようが死ぬこともなく荘園に戻され、その中での共同生活を強いられる招待客(サバイバー)の面々の中では、幾分高飛車な性格で知られていた。
     例えば、荘園の中の共同生活に適応しているようなサバイバーの一人である庭師のエマ・ウッズから、イベントの飾りについて相談を受けると、「……それってさ、全員が参加しないといけないの? 荘園主の命令?」と、彼女は怪訝な顔で返す。それに対して、「荘園主さんからは、何も言われていないけれど……みんなでやったほうが、きっと楽しいの!」と、絵本の登場人物か何かのように楽しげに答えるエマに向かって、トレイシーがさらに返す言葉というのは「そのイベント? にさ、私の時間を占有する価値があるの? 説明して。」である。
     とはいえ、最終的にはイベント開催にあたっての「労働力」として彼女は機械人形を貸し出すし、イベントの中で何らかの機械仕掛けが必要なのであれば、それこそ技術屋の腕の見せ所だと言うように自らを売り込みに来ることもあるのだから、何だかんだ彼女は人が良い方ではある。ただ、高飛車な物言いをして、自分にとってあまり価値のない他人――歯車の動き一つの重要さを理解しない、並一通りの愚か者――の言葉を跳ね除けることがある、というだけのことだ。

     一方、彼女やその他大勢のサバイバーのように(おそらく)荘園に招かれ、今はそこで暮らしている幸運児には、この荘園に至る以前の記憶がない。荘園を訪れるサバイバーたちの目から見ると、過度に簡素が過ぎるように見える長袖Tシャツとジーパンという匿名性の高い出で立ちは、彼の性格や生い立ち、社会の中の身分というものを何ら反映するようにも見えず、そういった背景のない彼にはそれらしい役職や、自己紹介をするような時に述べる職歴もない。
     ただ、何も持たない彼は何かと幸運の女神に好かれているようで、あらゆる場面を運良く切り抜ける才を持っていたことから、自分の名前らしいものも記憶にない彼ら、誰からというわけでもなく自然と「幸運児(ラックボーイ)」と呼ばれるようになり、それが荘園の中での彼の名前となった。

     彼は試合のフィールドに設置されたボックスから出てきたアイテムを使いこなす程度の器用さを持ち合わせていたものの、歯車の名前やひとつひとつの動き、組み合わせによる効果の違いを知るわけでもなく、ただ「こういう風に操作すれば動く」ということがわかるだけの、“並一通りの愚か者”に当て嵌まる側の存在であることを自負していた。特別な何かができるというわけではないということは、彼のコンプレックスでもあった(とはいえ、彼はそれと同じだけ、幸運は人間の生存にとって重要な要素であるとも理解していた)。
     故に、壊れた機械人形を小脇に抱えて試合から帰ってきたトレイシーが、自分が着ている濃灰色のTシャツの裾を掴んでくるとき、彼が覚えるのは困惑だった。
     それがたまたま、医師エミリー・ダイアーや彼女に心酔しているエマに協力を依頼されて荘園内の清掃活動に勤しんでいるようなときであれば、「一も二もなく手が必要な時に、目の前にいたのが自分だったのだろう」とも理解できなくもない。しかし、幸運児の部屋の前にまで来て、突然の来客のノックに応じた幸運児が「はーい」と在室を知らせながらドアを開けようとするよりも先にドアをガチャリと開け、黒い機械油に汚れている頬を雑に手の甲で拭いつつ、小動物めいた丸い目で彼の眼鏡のブリッジを見遣り、「暇?」と簡潔に問いかけてきたトレイシーに驚いた幸運児が何か言うよりも早く、彼の手首を掴むと言うにはささやかな力で握って歩き出す様に、幸運児は全く納得の行く回答を出せていなかったし、彼女からその理由を明かされることもなかった。

     トレイシーは時折、そうやって、作業場のように改造している荘園での自分の部屋に幸運児を連れ込むと、いつものごとく作業の補佐を命じた。
     それもまだ招待客の人数が少ない内は、機械いじりの経験を持たない面々の中で、ある程度器用そうな相手を選んだのだろう(当時から荘園にいる面々の中で、機械や工学に明るい面子はいない。単純な「手先の器用さ」だけで人を選ぶのならば、“慈善家”と名乗っていたピアソンが適任だろうと幸運児は思ったものの、歯車の一つ一つが重要になる彼女の作業行程において、ピアソンの「悪い癖」を考えると、次点の自分に話が回ってきたというのは納得の行く話だった。)と思えたが、今や専門家が加入した荘園の中で、未だに自分に声がかかる理由が、やはりよくわからない――というのが幸運児の思うところだった。
     トレイシーが言うには、この手の分野で一番知識と技術があると思われる囚人とは“専門性”が合わないらしい。それなら何かと器用なポストマンの彼はどうなのかと幸運児が提案してみると、「あの人喋らないじゃん、よく知らないし」と、トレイシーはうんざりしたように言った後、いたって鋭いことの多い物言いの割に無垢なほど丸い目をわかりやすく歪ませながら、「あんたがやりたくないなら、はっきり言って」と一言。
     そう言われると、幸運児は何も言えなくなった。何をとっても並一通りに人の良い彼は、手を貸してくれと言われてそれを無下に断ることが苦手だった。こうも睨まれていると思うと尚更だ。露骨に機嫌を損ねたらしい彼女を相手に、「い、いや」と、幸運児は狼狽えながら返す。
    「レズニックさんを手伝うのが、嫌なわけじゃないんだ。ただ僕は、こういうことはもっと器用な人に頼んだほうが良いと思っただけ……」
     そうしておどおどと視線を泳がせた幸運児に、スパナでネジを緩める手を止めていたトレイシーは、大げさなため息を吐いたかと思うと、「それやめてって、何回も言ってるよね。」と、若干刺々しい声で言う。
    「それって?」
     そこに返された気の抜けたような幸運児の返答に、彼女は舌足らずに拙い舌打ちさえした。
    「“レズニックさん”っていうの、やめて。言ったよね、“トレイシー”って呼んで。」
     幸運児は人見知りをする方ではないが、しかし他人と親しい間柄になるような性分でもない。付かず離れずといった距離感が彼にとっては心地よく、殊に何かと過去に問題を抱えた人物の多いここで、その態度は彼の処世術にもなっていた。
    「そ、そうだったね ごめん、トレイシー」
     しかし、そのように呼べと言われるのだから仕方がない。(女性相手に名前を呼び捨てなんて、ちょっと僕、馴れ馴れしすぎない?)とは思うものの、幸運児として他に嫌な理由というのは、特になかった。
     そうして兎に角、幸運児が間違えずに従ったのを見ると、トレイシーは機械人形を見るときの目――少なくとも、彼女にとって「愚かな」他人を見るときよりかは波立っていない、透明な眼差しを向けて、「うん」と、柔らかいと言うほどでもないが、先刻の不機嫌が抜け落ちたような返答をする。
    「……それで、僕は何をすればいい?」
    「そこに箇条書きにしてあるから、作業を番号順に読み上げて」
    「あぁこれね、うん、わかった」

     父親の声をまだ覚えていると思う、たぶん。トレイシーに明確な自信はなかった。時計を操作したところで実際に流れている時を支配することは出来ず、頭蓋骨の内側にだけ存在する形を持たない記憶というものの存在は、この上なく不確かだ。
     それでも、試合にあたって機械人形に音声機能を搭載するときには、できるだけそのように近づけた。トレイシーはいつか、それに命が宿ることを――否、そこに命を宿らせることを画策している。金のことしか考えない愚かな凡人どもによって止められた父の時を今一度、父が認めてくれたこの才能で呼び戻すのだ。
     トレイシーは才知に富んだ若き職人であり、人間の肉体には複数のばらつきがあって、神が作り給うた被造物の癖になんて適当なんだ、というようなことを常々思っている。金属こそが何よりも真摯で、一番頼りになる友人であることをトレイシーは知っている。その友人はまだ流暢に喋ることができないが、いずれ彼女が新たなアイデアを得る時には、その問題も解決されるだろう。その友人が自ら考え、彼女に意見し、魂を持つまでには、どれ程の発明を経る必要があるのか……その果てに、機械人形も死を経験するのだろうか? 
     トレイシーは目を閉じ、鉄の友人の声に、記憶の中だけにある父親の声になるたけ似せたそれに似ている声色に、耳を澄ませる。その男は記憶の中にある父とは比べ物にならず、どちらかというと鉄の友人の挙動らしい頼りなげな調子で箇条書きの順番を読み上げていたものの、トレイシーが今や完全に手を止めているのを見て取ったのか、「トレイシー、疲れたのかい?」と人の良さそうな調子で問うてくる。
    「朝と昼は食べた?」
     続けて聞かれた質問は何ら珍しくもなかった。幸運児は、トレイシーの日頃の集中力の副産物である不摂生について、ある程度把握していたからだ(彼の他には、彼女が時折貧血で倒れるのを見かけたサバイバーや、その度にきまって運ばれる先になる医師が概ね把握している。ダイアー医師は常々規則正しい生活をするように彼女に言い聞かせようとしているが、トレイシーはあまり聞く耳を持っていない。)。時刻はじきに15時を過ぎようとしている。
    「食べてない、たぶん。」
     その問いかけに、トレイシーが指示をする時や思考をまとめる時よりも幾分柔い子供の声で返すのを、幸運児は(疲れのせいで、ちょっとぼーっとしているんだろうな)と、大して気にした様子もなく立ち上がると、「サンドイッチとか貰って来るよ」と続けながら部屋を後にする。
    「うん、お願い」
     極めて正気で頭脳明晰な彼女は、そうやって閉じたドアに向かって(ありがとうお父さん)と言ってみるほど、思い込むこともできなかったが。
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    Replies from the creator

    @t_utumiiiii

    DOODLE公共マップ泥庭

    ※日記のないキャラクターの言動を背景推理等から捏造
    ※捏造荘園設定
    一曲分(泥庭) 大勢の招待客(サバイバー)を招待し、顔も見せずに長らく荘園に閉じ込めている張本人であるのだが、その荘園主の計らいとして時折門戸を開く公共マップと言う場所は、所謂試合のためのマップを流用した娯楽用のマップであり、そのマップの中にもハンターは現れるが、それらと遭遇したところで、普段の試合のように、氷でできた手で心臓をきつく握られるような不愉快な緊張が走ることもないし、向こうは向こうで、例のような攻撃を加えてくることはない。
     日々試合の再現と荘園との往復ばかりで、およそ気晴らしらしいものに飢えているサバイバーは、思い思いにそのマップを利用していた――期間中頻繁に繰り出して、支度されている様々な娯楽を熱狂的に楽しむものもいれば、電飾で彩られたそれを一頻り見回してから、もう十分とそれきり全く足を運ばないものもいる。荘園に囚われたサバイバーの一人であるピアソンは、公共マップの利用に伴うタスク報酬と、そこで提供される無料の飲食を目当てに時折足を運ぶ程度だった。無論気が向けば、そのマップで提供される他の娯楽に興じることもあったが、公共マップ内に設けられた大きな目玉の一つであるダンスホールに、彼が敢えて足を踏み入れることは殆どなかった。当然二人一組になって踊る社交ダンスのエリアは、二人一組でなければ立ち入ることもできないからである。
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    @t_utumiiiii

    DOODLE※日記のないキャラクターの言動を背景推理等から捏造
    ※捏造荘園設定

    マーサが香水使ってたらエブリンさん超怒りそう みたいな
    嫌いなもの:全ての香水の匂い(広義のウィラマサでエブマサ) チェス盤から逃れることを望んだ駒であった彼女は、空を飛び立つことを夢見た鷹の姿に身を包んでこの荘園を訪れ、その結果、煉獄のようなこの荘園に囚われることとなった。そこにあったのは、天国というにはあまりに苦痛が多く、しかし地獄というにはどうにも生ぬるい生活の繰り返しである。命を懸けた試合の末に絶命しようとも、次の瞬間には、荘園に用意された、自分の部屋の中に戻される――繰り返される試合の再現、訪れ続ける招待客(サバイバー)、未だに姿を見せない荘園主、荘園主からの通知を時折伝えに来る仮面の〝女〟(ナイチンゲールと名乗る〝それ〟は、一見して、特に上半身は女性の形を取ってはいるものの、鳥籠を模したスカートの骨組みの下には猛禽類の脚があり、常に嘴の付いた仮面で顔を隠している。招待客の殆どは、彼女のそれを「悪趣味な仮装」だと思って真剣に見ていなかったが、彼女には、それがメイクの類等ではないことがわかっていた。)――彼女はその内に、現状について生真面目に考えることを止め、考え方を変えることにした。考えてみれば、この荘園に囚われていることで、少なくとも、あのチェス盤の上から逃げおおせることには成功している。
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    @t_utumiiiii

    DOODLEクリスマスシーズンだけど寮に残ってる傭兵とオフェンスの象牙衣装学パロ二次妄想ですが、デモリー学院イベントの設定に準じたものではないです。
    the Holdover's Party(傭兵とオフェンス ※学パロ) 冬休み期間を迎えた学園構内は火が消えたように静かで、小鳥が枝から飛び立つ時のささやかな羽ばたきが、窓の外からその木が見える寮の自室で、所持品の整理をしている――大事に持っている小刀で、丁寧に鉛筆を削って揃えていた。彼はあまり真面目に授業に出る性質ではなく、これらの尖った鉛筆はもっぱら、不良生徒に絡まれた時の飛び道具として活用される――ナワーブの耳にも、はっきりと聞こえてくる程だった。この時期になると、クリスマスや年越しの期間を家族と過ごすために、ほとんどの生徒が各々荷物をまとめて、学園から引き払う。普段は外泊のために届け出が必要な寮も、逆に「寮に残るための申請」を提出する必要がある。
     それほどまでに人数が減り、時に耳鳴りがするほど静まり返っている構内に対して、ナワーブはこれといった感慨を持たなかった――「帝国版図を広く視野に入れた学生を育成するため」というお題目から、毎年ごく少数入学を許可される「保護国からの留学生」である彼には、故郷に戻るための軍資金がなかった。それはナワーブにとっての悲劇でも何でもない。ありふれた事実としての貧乏である。それに、この時期にありがちな孤独というのも、彼にとっては大した問題でもなかった。毎年彼の先輩や、或いは優秀であった同輩、後輩といった留学生が、ここの“風潮”に押し潰され、ある時は素行の悪い生徒に搾取されるなどして、ひとり一人、廃人のようにされて戻されてくる様を目の当たりにしていた彼は、自分が「留学生」の枠としてこの学園に送り込まれることを知ったとき、ここでの「学友」と一定の距離を置くことを、戒律として己に課していたからだ。あらゆる人付き合いをフードを被ってやり過ごしていた彼にとって、学園での孤独はすっかり慣れっこだった。
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    @t_utumiiiii

    DOODLE象牙衣装泥庭二人とも怪我してるみたいで可愛いね🎶という趣旨の象牙衣装学パロ二次妄想(デモリー学院イベントの設定ではない)です
    可哀想な人(泥庭医 ※学パロ) 施設育ちのピアソンが、少なくとも両親の揃った中流階級以上の生徒が多いその学園に入学することになった経緯は、ある種“お恵み”のようなものであった。
     そこには施設へ多額の寄付したとある富豪の意向があり、また、学園側にもその富豪の意向と、「生徒たちの社会学習と寛容さを養う機会として」(露悪的な言い方になるが、要はひとつの「社会的な教材」として)という題目があり、かくして国内でも有数の貧困問題地区に位置するバイシャストリートの孤児院から、何人かの孤児の身柄を「特別給費生」として学園に預けることになったのだ。
     当然、そこには選抜が必須であり、学園側からの要求は「幼児教育の場ではない」のでつまりはハイティーン、少なくとも10代の、ある程度は文章を読み書きできるもの(学園には「アルファベットから教える余裕はない」のだ)であり、その時点で相当対象者が絞れてしまった――自活できる年齢になると、設備の悪い孤児院に子供がわざわざ留まる理由もない。彼らは勝手に出ていくか、そうでなければ大人に目をつけられ、誘惑ないしだまし討ちのようにして屋根の下から連れ出されるものだ。あとに残るのは自分の下の世話もおぼつかないウスノロか、自分の名前のスペルだけようやっと覚えた子供ばかり――兎も角、そういうわけでそもそも数少ない対象者の中で、学園側が課した小論文試験を通ったものの内の一人がピアソンだった。
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    recommended works

    @t_utumiiiii

    DOODLE #不穏なお題30日チャレンジ 1(2).「お肉」(傭オフェ)
    ※あんまり気持ちよくない描写
    (傭オフェ) ウィリアム・ウェッブ・エリスは、同じく試合の招待客であるナワーブと共に、荘園の屋敷で試合開始の案内を待っていた。
     ここ数日の間、窓の外はいかにも12月らしい有様で吹雪いており、「試合が終わるまでの間、ここからは誰も出られない」という制約がなかろうが、とても外に出られる天候ではない。空は雪雲によって分厚く遮られ、薄暗い屋敷の中は昼間から薄暗く、日記を書くには蝋燭を灯かなければいけないほどだった。しかも、室内の空気は、窓を締め切っていても吐く息が白く染まる程に冷やされているため、招待客(サバイバー)自ら薪木を入れることのできるストーブのある台所に集まって寝泊まりをするようになっていた。
     果たして荘園主は、やがて行われるべき「試合」のことを――彼がウィリアムを招待し、ウィリアムが起死回生を掛けて挑む筈の試合のことを、覚えているのだろうか? という不安を、ウィリアムは、敢えてはっきりと口にしたことはない。(言ったところで仕方がない)と彼は鷹揚に振る舞うフリをするが、実のところ、その不安を口に出して、現実を改めて認識することが恐ろしいのだ。野人の“失踪”による欠員は速やかに補填されたにも関わらず、新しく誰かがここを訪れる気配もないどころか、屋敷に招かれたときには(姿は見えないのだが)使用人がやっていたのだろう館内のあらゆること――食事の提供や清掃、各部屋に暖気を行き渡らせる仕事等――の一切が滞り、屋敷からは、人の滞在しているらしい気配がまるで失せていた。
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