Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    @t_utumiiiii

    @t_utumiiiii

    ・オタクの二次
    ・文章の無断転載・引用・無許可の翻訳を禁じています。
    ・Don't use, repost or translate my Fanfiction Novel without my permission. If you do so, I ask for payment.

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍰 🎈 🎁 🍮
    POIPOI 127

    @t_utumiiiii

    ☆quiet follow

    ※ハズビンホテルへようこそS1Ep8のネタバレを若干含みます
    アラスターは何でチャーリーに手を貸しているのか? という感じの妄想(広義のアラチャ)

    (アラチャ) 私が彼女を支援すると決めたのには、彼女が持つ「後継者」という地位が全くの無関係である、とはいえないだろう。地獄の王の後継者にしてリリスの娘。地獄のプリンセス。側近く取り入っておいて、まあ損にはならない肩書だ。それが今のところ、全く実を伴わない肩書きばかりの権威であろうと、それによって容易に開くドアが存在することもまた事実だ。物事を成し遂げねばならないときは反発の少ない道を選ぶほうが、より容易な目的達成につながる。彼女は特別な切り札、ともすれば、裏口の鍵に繋がるやも知れませんね。ええ、それは否定できない。
     とはいえ、それだけを目当てに、私はホテルの扉を叩いたわけではない。端から「地獄のプリンセス」を目当てにするならば、もっと早いうちから取り入る道もあっただろう(スポンサーだなんて回りくどい方法を取る道が最善とは限らない。)。それに、そもそも他人の権威を宛てにするのは趣味ではない。次に踏み上がるべき階段を見つけるために、肩書きやタイトルを持つ人物に目をつけることこそあれ、その点において、シャーロット・モーニングスターはほぼ無害、口だけ、肩書だけ、踏むべきステップではない。予め目をつけておくなんてことはしていなかった。道沿いの店にあるショーウィンドウに置かれたあの不格好な箱から、救済を高らかに歌い上げるその声を耳にするまでは。


     尻尾を巻いてのこのことホテルに戻ってきた私をチャーリーは一頻り歓待した後、忌々しいことにまだ治り切らない傷を腹に抱える私が、再会の席から早々に退散しようとするところ、彼女はこれまで殺人を犯してはいないのだろう白く柔い手で、何ら苦も無く振り払えそうな程の些細な力で以て、私の爪先を赤く彩った黒い手を握り、「アル、あなたのお陰よ」と、明け透けな好意と感謝を述べた。
    「あなたが居なければ、私たちには、天使に対抗する術も無かった。勿論、それよりも前に、私がもっと、上手くやれていればよかったんだけど……でも、あなたが居てくれて本当によかった。」
    『どういたしまして!』
     マイクのノイズを通して返礼を述べる。しかしチャーリーにはそれが聞こえていなかったのか、彼女は彼女自身の内側に燻る、言うなれば使命感と奉仕の感覚に燃える炎に突き動かされるように私の手を握ったまま、黒真珠もかくやという様子にその瞳を潤ませて、「私はきっとあなたの……あなたたちの気持ちに応えるわ。あなたたちと一緒に、私はきっと実現する……私の夢を。」などと感傷的に呟いていると、私を捕まえている彼女の周りに、彼女のガールフレンドやお友達が、地獄に似つかわしくなく優し気な微笑みと共に集まって、思い思いに彼女の肩を支え、腰を抱き、生暖かい人肌によるグループ・ハグの様相を呈し始める場に、私はどうにも居心地悪く片眉を引き上げながらもそこに留まったのは、彼女が「いえ、そうね、アル。あなたは死後の救済については、私と意見が異なるでしょうけれど、」と、まだ私に向けての話を続けていたからだ。話の途中で退出する程無礼なことはない。そうだろう?
    「アラスター、あなたの望みがどこにあろうと、あなたは、私を助けてくれたわ! 私はそのことについて、いくらでもお礼を言いたいの。心からね。」
    『チャーリー、マイ・ディア。この私、友を助けることにかわる喜びはありませんとも!』
     たっぷりの笑顔と共に向けた私の返事に、彼女はかえってぎこちない微笑みを返してきたが、勿論、その通りだ。ここで私の友情を信用するような、生易しいお姫様というわけでもないだろう。私の両手をしっかり握る彼女の白い手を指でそれとなく退かし、手と同じだけ白い頬を片手で抓むと、ふにふにと柔らかくあまり地獄らしくない手応えが返ってくるし、それ以上に、彼女の腰を抱いていた彼女のガールフレンドからの鋭い視線が突き刺さって、私はつい、口角が引きあがってしまう。
    『私はあなたの修道女! この献身を疑う必要はありませんよ。それは私が保証しましょう、ええ、勿論!』

     罪人の救済を演説する彼女の美しい夢は、この地獄に於いて存在することが信じられない程のふわふわに甘やかな夢であり、それこそが、私に必要なものだった。
     ある日唐突に地獄の世界に存在することになった私は、存在する以上の努めとして常に上昇することを目指し、勤勉にエンターテイメントを続けたが、この世界は、言ってしまえば易しく、生身で存在したあの地球よりも退屈なものだった。何せ、言ってしまえば、悪意は悪意以上のものには成り得ない。かつて与えられていたチャンスを棒に振ったろくでなしの吹き溜まり。この世は全て予定調和だ。全く以て死んでいる。地獄的な退屈。
     あの日私の耳に届いた「魂の贖罪」を謳う彼女の夢は、ここに蔓延る悪意とは対極にあるコンセプトであり、それこそが私に必要なピースだと、その時にピンと来た。この娘に手を貸そう。聞けば地獄のプリンセスと言う。側近く取り入って置いて損になる相手でもないだろう。ともすれば彼女こそが、バックドアの鍵になるやもしれない? 
     勿論彼女がそうであるからこそ、例の番組を通して私は彼女を知ることができたし、権威ある血筋に連なる彼女であるからこそ、そのふわふわな夢を下手に踏み躙られることなく、大事に抱えていることを許されたのであろうが、しかし、もし、そうでなくとも――彼女が地獄のプリンセスという地位でなかろうと、ひとたび彼女の全く地獄らしからぬ贖罪の夢を聞いたなら、私はたちまち手を差し伸べたに違いない。何せ、エンターテイメントの骨頂たりうる、最悪のカタストロフを引き起こすのは、往々にして善意と利他、この上なく甘やかな、思いやりの心に他ならず、その心はこの地獄に於いて殊に希少だ。その得難い夢が、そこら中に転がっている一山いくらのくだらない雑魚どもの横槍で中途半端に摘み取られることのないように、是非とも手を貸してやらなければ。

    『私は、あなたの夢の行き先を見たいのですよ、マイ・ディア。そのための尽力は惜しみませんとも。』
     彼女の頬をふにふにと生易しく伸ばしていた指を離してから、このあたりの景色にはあまり馴染まない明るいブロンドの髪を軽く撫でると、彼女の影であるようにぴっとりとそこに立っている彼女のガールフレンドが額にビキビキと青筋を立てる愉快な音が聞こえて来た。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👍💖💖💖💖💖👏🙏💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    @t_utumiiiii

    DOODLE弁護士の衣装が出ない話(探偵と弁護士) ※荘園設定に対する好き勝手な捏造
    No hatred, no emotion, no frolic, nothing.(探偵と弁護士) 行方不明となった依頼人の娘を探すため、その痕跡を追って――また、ある日を境にそれ以前の記憶を失った探偵が、過去に小説家として活動する際用いていたらしいペンネーム宛に届いた招待状に誘われたこともあり――その荘園へと到達したきり、フロアから出られなくなってしまった探偵は、どこからが夢境なのか境の判然としないままに、腹も空かず、眠気もなく、催しもしない、長い長い時間を、過去の参加者の日記――書き手によって言い分や場面の描写に食い違いがあり、それを単純に並べたところで、真実というひとつの一枚絵を描けるようには、到底思えないが――を、眺めるように読み進めている内に知った一人の先駆者の存在、つまり、ここで行われていた「ゲーム」が全て終わったあと、廃墟と化したこの荘園に残されたアイデンティティの痕跡からインスピレーションを得たと思われる芸術家(荘園の中に残されたサインによると、その名は「アーノルド・クレイバーグ」)に倣って、彼はいつしか、自らの内なるインスピレーションを捉え、それを発散させることに熱中し始めた(あまり現実的ではない時間感覚に陥っているだけに留まらず、悪魔的な事故のような偶然によって倒れた扉の向こうの板か何かによって、物理的にここに閉じ込められてもいる彼には最早、自分の内側に向かって手がかりを探ることしかできないという、かなり現実的な都合もそこにはあった。)。
    2791