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    @t_utumiiiii

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    「ハズビンホテルへようこそ」S1E7までのネタバレを含みますが、皆の好感度はS1E4ぐらいの時期をイメージした二次です。チャーリーとヴァギーが思い思いに(アラスターって距離感バグってるな)と思ってる感じの話。

    Trespassing(アラチャ) ヴァギーは彼女の恋人であるチャーリーの可愛らしい雛のような顔に弱い。ただでさえ可愛らしい恋人から、甘えるように目を潤ませながら見つめられると、彼女は大概の事を許してしまうし、彼女にもあの顔にどうにも弱いという自覚はあった。それによって引き起こされるのが、武器商人の良客リストに入っていそうなあのヌルヌルしたトカゲがホテルに居着くぐらいのことならまだいい。あの顔に弱いと思って見なかったことに出来る。しかし、“ラジオデーモン”がチャーリーの夢に絡むことについて、ヴァギーは未だに――いかにも警告色らしい唐辛子の色をしたあの男がホテルにしっかりと居着くようになった上、その屋上からラジオの電波を飛ばし始め、いよいよここを縄張りにし始めた頃になっても――蟠るものを感じていた。
     彼女の途方もない夢――罪人に贖罪の機会を設け、条件を満たしたものは地獄から再出発できるようにする――にあたって、確かに、あの悪魔の存在、つまり目に見える「力」というものがある程度有用だということは、ヴァギーにも理解できる。そもそもあの男さえいなければ起こらなかった襲撃にせよ、あれがいるからこそ、ホテル側の被害が最小限に済んでいるし、それで外壁が一枚剥ぎ取られたところで、あれは苦も無く、ただ指を鳴らすだけで、不気味にうぞうぞ動く影から有象無象の魂を取り出し、意のままに働かせる。そうやって、あの男がホテルに協力する目的は何? あれは間違っても、罪人の更生(チャーリーの夢)なんて信じていない。彼女の夢が潰えるさまを、手ぐすね引いて楽しみにしている? そうかもしれないと思うだけで、ヴァギーはあのニヤケ面に槍を叩き込むのに十分な理由を得たとすら思う。
     しかし、アラスターについて考えている時のヴァギーが、腹立たしさと同時に感じているものは、あえて言うのなら、恐怖だった。彼女は自分の力で、チャーリーの夢をサポートする――少なくとも、彼女の身を守る――ことぐらいはできると考えている。彼女の手元に残された天使の武器――鋭い天使の槍は、罪人の命を刈り取る形をしている。今となっては不名誉であり、絶対に暴かれてはならない身の上の汚点でしかない、悪魔祓い(エクソシスト)であったこと、つまり、エクスターミネーションの最前線に従事していたという後ろ暗い過去こそが、恋人を守るに値する力と自負を彼女に与えていた。魂の贖罪を夢見る彼女を守ること。それこそが、せめてもの償いに、なるのかもしれない?(魂の再挑戦を信じているチャーリーと共に時間を過ごしながらも、冷静で現実的な面を強く持ち合わせる、それを悪く言うと、少々頭の固いところがあるヴァギーは、そんな虫の良いことがあるとも思えなかった。彼女はあの日、路地裏で子どもの罪人をあわやというところまで追い詰めたその瞬間まで、唯一の機会を自らふいにして光に背を向けた罪人が、痛みや怯えなんかを感じるようなものだとは思ってもみなかったことを、まだ覚えている。)
     要するに、彼女は罪人、そして悪魔を殺すことにかけては、それなりの自負を持っていた。しかしそれは、あのいかにも怪しい、牙をむき出したような作り物の笑顔の前にはどうにも脆く、疑わしくなってしまう。ラジオデーモン。ある日突然地獄に現れ、たった一晩にして、これまで地獄を支配してきた上級悪魔たちを消し去り、その空席に収まった。人間の魂にしては考えられないほど強大な力を持ち、それはこの上ない残忍さを持つあの古代の悪魔たちにも匹敵すると、皆が考えている――かたや、一体の悪魔祓い。あれは、私の手に負えるもの? そんなわけがない。そこまで自分の力を過大に信じることはできない。あれを身内にするにはリスクが高すぎる。かといって向こうから押しかけて来たものを、どうやって丁重に押し戻すってわけ? それができるとしたらチャーリーだ。彼女は地獄のプリンセス。けれどあの日、チャーリーは「誰しも機会を与えられるべきだと思うの」と言った。そして私が心配していることをわかってはいるみたいで、遠慮がちに微笑みながら「自分の身は自分で守れるよ」とも言った。チャーリーのその言葉を、信用していないわけじゃない。ただ、あまりに得体が知れなさ過ぎる――その上あのニヤケ面、こちらの思惑もとっくに見透かしているみたいに、やたらとチャーリーに顔を近づけて!

     という恋人の懸念には勿論、限りない理解を示しつつ――とはいえ、チャーリーはヴァギーの感じている程、彼を恐ろし気な、得体の知れないものとは考えていなかった。というのも、件の悪魔が妙に親し気な、悪く言えば、つい最近知り合ったものが、まるで長年の連れ合いであるかのような馴れ馴れしい振る舞いをするということは、チャーリーの尺度からしてもまあ事実ではあるものの、その目は、例えば彼女の恋人がするように、愛し気に彼女の瞳や頬、唇に触れるのではなく、ただ物体の表面を見るように彼女を見ているということが、感覚として何となく伝わっていたからだ。
     (彼はそういう人なのだろう)とチャーリーは理解していた。あくまで社交の上で、ビジネスライクに親しみを表す(そしてそれがエンターテイメント業界であればこそ、振る舞いが多少エスカレートするところもあるのだろう)けれども、そこに何か思惑があるタイプではないということだ。彼はこのホテルに、チャーリーが持っているものとは異なる期待をしていることは、彼女にも何となく理解できていた。その目論見に一枚噛む為に、アラスターは、少なくとも彼の領分で良い仕事をしている。ホテルの主たるコンセプト部分――罪人の贖罪――は、彼の得意分野ではないというだけで。でも、それは問題ないわ! そこを考えるのは私の仕事っていうだけ。今のところ、アラスターはホテルでの事業を進めることに賛成しているみたいだし、本当に惜しみなく手を貸してくれる。だから、彼の実際のところがどうあれ、しばらくは、手を貸してもらっても問題ない――というのがチャーリーの考えだった。
     でも確かに、距離感には気を付けるべきかも。それはそうね。前も、エンジェルを困らせてしまったばっかり。彼は友愛のハグを許してくれるけれど、時々困った顔をしながら、魅力的に細長いすべすべの腕を二対つかって私の腕をそっと握ると、遠慮がちな力で放してくれるように促してくることがある。私たちは皆、家族のようなものよね! そして家族であっても、人それぞれにパーソナルスペースというものがあるわ。特に彼、アラスターは、他人から触られることを、あまり好んでいないみたい。距離感のレッスンを絶えず脳内で復習することは、チャーリーにとって重要な、そしてなかなかに骨の折れることだった。彼女は全身で親愛を表す性質なのだ。

    「あら、ごめんなさい!」
     ホテルに新たに導入しようと考えている設備について相談を聞いてもらったその時、チャーリーは彼の提示した(そして、彼に相談するときまって返って来る、サドっ気の強い回答ではない、珍しくチャーリーの好むような)提案に感動して、思わず彼の黒い手を両手で握ったチャーリーは、親指の付け根を、彼のいくらか骨ばった黒い指の先にある真紅の爪が掠めて行った感触に気付くと、彼女の方から握ったその手を慌てて解いた。
    「私ったら、またやっちゃったわ! 境界線についてあれだけ学んだのに! よく反省して、復習しないと……」
    『反省ですか? 私は、いっこうに構いませんがね。』
     ぶつぶつ呟きながら(というのもここ数日、彼女は少々煮詰まっていた。)自分の白い両掌を見下ろすチャーリーの頭の上から、ノイズ混じりの声が降ってくる。彼女が顔を上げてそちらを見ると、アラスターは、普段通りの貼り付けたような完璧な(そして胡散臭い)笑顔はそのまま首を傾ぎ、警告灯のような赤色をバックにした黒い瞳孔が、不思議そうにチャーリーを見下ろしている。
    「……あなたは、他の人から触られるのが苦手なのだと思っていたわ」
    『ええ、それはそうですが』
    「そうよね! 私が間違えちゃった。不用意にパーソナルスペースへ踏み込むだなんて」
    『構いませんよ? あなたは。麗しのお嬢さん!』
     機械を通して聞こえるようなノイズ混じりの声が、古めかしい美辞麗句をハミングするように続けながら、チャーリーが自分で自分を戒めるように握っていた彼女の白い手に、彼の黒い手が重ねられる。それが衣服の一部なのか、それとも元々そのような作りの手であるのかは兎も角、生々しい程真紅の爪は彼女の手の平の上を這うと、まだ柔らかな輪郭を残す白い指と指の間をなぞり、男性体のものであることが手触りでわかる骨ばった手その間に捻じ込まれ、あっと言う間に、指と指を絡めるような、さも親し気なやり方で彼女の手を握っている。
    『マイ・ディア、あなたは、特別ですからね。』
     口元に持って行ったマイクに声を吹き込むような響き方をする割りに、ノイズには哄笑の気配が混ざっている。握られた手に引き寄せられ――より直接的には、ぼんやり立っていた踝に足を小気味よくぶつけられて、不意打ちによろめいたところで、いつのまにか腰の後ろに回っていた腕にわざとらしく背中を支えられ、ホールドの姿勢のまま、その場でくるりと一回転。
     少しだけ地面から浮いていたチャーリーが履いている、エナメル靴の黒い爪先から床の上に下ろしてやりながら、『きみは存外、距離感を保つのがお上手です』と、アラスターはまるで種明かしをするように続けた。
    『既に立場のある方だからでしょうね。あなたには、私に寄りかかってやろうという卑しさが無い。必要以上に立ち入りもしない。チャーリー、あなたは、私に興味がないと言ってもいいでしょう!』
     妙な方向に転がっていく話に驚き、それまで少しぼんやりしていたチャーリーは、素早く口を挟もうとした。言葉を口にすることが叶ったのならば、彼女はおそらく、(違うわ! あなたに興味がないなんてことはない。あなたは、私たちの大事な仲間だもの。是非、あなたの好きなものや楽しい経験をみんなとシェアしましょう。できれば、サドっ気は弱めてもらえると嬉しいけれど……)というようなことを続けたに違いないが、彼女がそうやって言葉を続けるよりも早く、つい先ほどまで彼女の指に絡んでいた真紅の爪を持つ黒い指が、彼女の唇の前に一本立てられ、それを目の当たりにしたチャーリーは、その意味を頭で理解するよりも先に、反射で言葉を呑み込む。
    『私、そういうのが、すッごく、好みなんですよォ!』
     とびきりの胡散臭い笑顔を浮かべながら、まるで親愛を見せるように――獲物に向かって焦点を定め、見据えるように――警戒色の目を細めた悪魔は、彼女に沈黙を強いた指を解くと、白く柔らかな少女らしい輪郭を残す彼女の頬から顎にかけてのライン擦れ擦れを、柔らかくはない指の腹で縁どるように掠めさせる。
    『並び立つのが、私の好みですからね。勿論! 支配も素晴らしい関係の有り様ですが。ハハハッ!』
     そうやって彼女の顎を包むように触れかけさせた手を、出し抜けに近づけた時と同じだけ唐突に引っ込めながら続けられるアラスターの言葉を、チャーリーは、勿論、真っ赤な嘘!――とまでは言わないものの、まあ言葉のあやのようなものだろうと理解した。彼と知り合ってからそこまで長い時間は経っていないけれど、彼が自分と並び立つものを好んでいるようにはとても思えない。もしかして、これも心境の変化かも? そこまで判断できるほど私は、まだ彼の心を開けてはいない。
    「あ、あはは~、どうも……」
     兎に角、ここはあまり突っ込んでいかない方がいいかも。そう判断したチャーリーが、遠慮がちに(ありていに言えば、やや引き気味に)笑いながらそっと後退るのを、アラスターは愉し気に細い眉尻を下げつつ、ニヤニヤと見送った。

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    Replies from the creator

    @t_utumiiiii

    DOODLE弁護士の衣装が出ない話(探偵と弁護士) ※荘園設定に対する好き勝手な捏造
    No hatred, no emotion, no frolic, nothing.(探偵と弁護士) 行方不明となった依頼人の娘を探すため、その痕跡を追って――また、ある日を境にそれ以前の記憶を失った探偵が、過去に小説家として活動する際用いていたらしいペンネーム宛に届いた招待状に誘われたこともあり――その荘園へと到達したきり、フロアから出られなくなってしまった探偵は、どこからが夢境なのか境の判然としないままに、腹も空かず、眠気もなく、催しもしない、長い長い時間を、過去の参加者の日記――書き手によって言い分や場面の描写に食い違いがあり、それを単純に並べたところで、真実というひとつの一枚絵を描けるようには、到底思えないが――を、眺めるように読み進めている内に知った一人の先駆者の存在、つまり、ここで行われていた「ゲーム」が全て終わったあと、廃墟と化したこの荘園に残されたアイデンティティの痕跡からインスピレーションを得たと思われる芸術家(荘園の中に残されたサインによると、その名は「アーノルド・クレイバーグ」)に倣って、彼はいつしか、自らの内なるインスピレーションを捉え、それを発散させることに熱中し始めた(あまり現実的ではない時間感覚に陥っているだけに留まらず、悪魔的な事故のような偶然によって倒れた扉の向こうの板か何かによって、物理的にここに閉じ込められてもいる彼には最早、自分の内側に向かって手がかりを探ることしかできないという、かなり現実的な都合もそこにはあった。)。
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    recommended works

    @t_utumiiiii

    DOODLE #不穏なお題30日チャレンジ 1(2).「お肉」(傭オフェ)
    ※あんまり気持ちよくない描写
    (傭オフェ) ウィリアム・ウェッブ・エリスは、同じく試合の招待客であるナワーブと共に、荘園の屋敷で試合開始の案内を待っていた。
     ここ数日の間、窓の外はいかにも12月らしい有様で吹雪いており、「試合が終わるまでの間、ここからは誰も出られない」という制約がなかろうが、とても外に出られる天候ではない。空は雪雲によって分厚く遮られ、薄暗い屋敷の中は昼間から薄暗く、日記を書くには蝋燭を灯かなければいけないほどだった。しかも、室内の空気は、窓を締め切っていても吐く息が白く染まる程に冷やされているため、招待客(サバイバー)自ら薪木を入れることのできるストーブのある台所に集まって寝泊まりをするようになっていた。
     果たして荘園主は、やがて行われるべき「試合」のことを――彼がウィリアムを招待し、ウィリアムが起死回生を掛けて挑む筈の試合のことを、覚えているのだろうか? という不安を、ウィリアムは、敢えてはっきりと口にしたことはない。(言ったところで仕方がない)と彼は鷹揚に振る舞うフリをするが、実のところ、その不安を口に出して、現実を改めて認識することが恐ろしいのだ。野人の“失踪”による欠員は速やかに補填されたにも関わらず、新しく誰かがここを訪れる気配もないどころか、屋敷に招かれたときには(姿は見えないのだが)使用人がやっていたのだろう館内のあらゆること――食事の提供や清掃、各部屋に暖気を行き渡らせる仕事等――の一切が滞り、屋敷からは、人の滞在しているらしい気配がまるで失せていた。
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