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    @t_utumiiiii

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    2024春節イベの獅子舞が骨董修復士に振られる二次

    獅子の妻問い(獅子舞と骨董修復士 泥→庭) 点睛に必要な龍舞道具が行方不明になっていること、そして龍舞隊がチャイナタウンへ戻ってきた理由も、それらの道具が偶然にもこのチャイナタウンに流れ着いたことを耳にしたからだということを知り、本業である骨董の修復を行いつつ、龍舞隊の「龍舞名簿」に名を連ねたいという願いに協力する為、必要な道具を探すことにした骨董修復士は、何かと為すべきことが多い中で手が足りていない状況から必然的に、店を閉めてからも作業台に灯りを灯したままにして、作業を続けることが多くなっていた。
     その日も、「ガタン」と戸口から聞こえて来た音(猫か風が扉にぶつかったのだろう)に気を取られた彼女が顔を上げた時には、時刻は既に真夜中に入りつつある頃だった。いけない、またこんな時間まで夜更かししてしまうなんて。このところ夜更かしが続いていたから、今日こそは早く寝ようと思っていたのに。ああ、でもこの作業は、今日にも終わらせた方が、後が楽で……などと彼女がぐるぐる考えている内に、カラカラカラと引き戸が開けられていく音が続く。まさか、私ったら、鍵を閉め忘れたのかしら? 
    「ごめんなさい! もうお店は終わりなの。」
     閉店後に店に顔を出してくる人物には、何人か心当たりがない訳でもない。懸鑑楼の女将は、ここが踏ん張りどころであるという状況に置かれ根を詰めがちな彼女を何かと気遣って、手の空いている時にお茶を入れて来てくれたりすることもあるし、骨董鑑定士が作業に熱中していることもある(骨董修復士は一度、彼が店内にまだ留まっていることに気付かないまま店の鍵を閉めてしまい、えらく機嫌を損ねられたことがあった。)。元の骨董屋の主人と懇意らしい易学先生が時間外にやってきて、彼女の根の詰め方に小言めいたことを言いつつ何やら蔵書を借りていくこともあったし、質屋の学徒が「良かった! まだ居た」というようなことを言いながら、時間外に修復の依頼を持ち込んだりすることも時々あった(骨董修復士も人のことを言えた性質ではないものの、没頭すると特に時間を忘れる性質らしい彼女が、質屋の主人から昼頃に言いつけられていたものをついつい時間を忘れて作業に熱中してしまい、ついこの時間になってしまった……ということらしい。)。
     とはいえ、時間外は時間外だ。彼女が一旦断りを入れながら作業台から顔を上げると、戸口には、その誰でもない人影が立っていた――それを見た彼女は一瞬、獅子頭のお化けが現れたのかと思って息を呑んだ程だった。しかし暗い戸口に立っている人影とはいえ、灯りに慣れた目ながらによく凝らして見れば、その下に人間の顔があることがわかる。お化けではない。あれは、チャイナタウンに滞在している民間劇団の演者の一人だ。前に「龍舞団の龍舞がどんなものか教えてほしい」と、彼女に聞いて来たことがある。
    「……獅子舞さん?」
     獅子頭の人影に向かって骨董修復士が問いかけてみると、演者はうんともああともつかない寝ぼけたような返事を返して来たと思うと、こんな夜更けに覚束ない足取りで何の用があるのか、作業台に寄って来る。そもそも貴重な品々の多い骨董品店に千鳥足で踏み入るべきではない、というのは兎も角、いっそう繊細な作業を壊れやすい品々の上に施している作業台のある場所には、関係者以外立ち入って欲しくないのだけれど、そうやって頭ごなしに言うには、今の彼は、少し様子がおかしい――目が据わっている。チャイナタウンに逗留している占い師(新春の予言)から、数日前に、彼が懸鑑楼で安酒を飲んで寒さをしのいでいるというような話を聞いたような、聞かなかったような。今の彼は、少し飲み過ぎているのかもしれない。
    「ここは骨董屋なの。お酒はないのよ。」
     千鳥足でいきなり倒れられても困ると気を回した骨董修復士が、相談客の為に時々使うことがあるらしい固い木の椅子を奥から持ってきて、酔っぱらっている様子の獅子舞がぼーっと立っているのを腕を取って促すと、彼は思いの他大人しく、彼女から勧められた椅子に座った。近づいて顔を見れば、血色がいいとはいえない顔が赤らんでいるのが見えるし、吐く息からも酒精の臭いが強い。やっぱり、身も世も無く酔っぱらっているみたい。
    「それで、あなたはどこに住んでいるの? 困ったわ。劇団長さんの連絡先も、私は知らないし、女将さんに相談するしかないかしら?」
     兎に角お水を飲んでもらって、それで、何とか自力で帰って貰えないかしら。と、エマがぶつぶつ呟きながら店の奥から水を汲んで戻ってくると、目深に被った獅子頭の下で既に寝ているようにも見えた彼が、物知り顔で腕を組んだまま、作業台に覆いかぶさるように前かがみになって、何かを見ている。彼が闖入してくるまで、彼女が丁度手掛けていた掛軸だ。一見して、作業台の上に寝そべりかかっているように誤解されかねないその光景に、骨董修復士は一瞬悲鳴を上げかけたものの、この手の酔っ払いを大声で刺激しない方が良いということも、それなりの期間一人で生活していた彼女は既に知っていることでもあった。彼女は咄嗟に開いた口の前に、作業用の手袋を嵌めた手を宛がって息を呑んでから、「……それは、今直してるところなの」と何事も無かったかのように声を掛けてみる。
     そうやって穏やかに振舞っていれば、それに向かって、いきなり事を荒立てに来る人はそうそういない。この酔っ払いも他聞には漏れないようで、重いのだろう頭をぐらぐら揺らしながら「ふーん」と鼻を鳴らしている。これがどう転じるかさっぱり読めない酔っ払い相手であることは兎も角、ひとまず無体を働く様子はない獅子舞の挙動に、骨董修復士は安堵するようにこっそりと息を吐きつつ、被っている獅子が重いのかそれとも単純に眠気に負けつつあるのか、こっくりこっくりと首を揺らす獅子舞に手を貸し、被っている獅子頭を脱がすのを手伝ってやろうとした(このせいでバランスを崩して、この場に転げられても困る。)のだが、彼女がそうやって手を貸そうとすると、獅子舞は両手で被ったそれを掴み、控えめに抗ったので、そっとしておくことにして、作業台を覗き込むように前かがみになっていた男の腕をそれとなく引くと、再び椅子の上に座らせる。

     大層酔っぱらっているらしい獅子舞は、骨董修復士が手を貸してやって再び椅子に座らせると、そのままうつらうつらとして今にも鼾を掻きだしそうだったので、丁度いいし、この人の酔いが少し覚めるまで、この作業を進めてしまおうかしら――いずれにせよ、部外者に上がり込まれたままじゃ、お店から離れることはできないし――と思った骨董修復士が手を動かし始めると、今しがた寝息を立て始めたようにも見えた獅子舞はまだ起きていたようで、派手な赤の獅子頭の下から、目を細めながら彼女の手元を眺めていたかと思うと口を開いて、「お、お前は、……その、手が器用だな」と言うと、さらに続けて、「きっと良い嫁さんになるよ」と言った。
    「そうなの?」
    「そうさ! よ、嫁さんは、手が器用って、相場が決まってるもんだろ。……お前、知らないのか?」
     ヒク、としゃっくりをするように喉ぼとけを動かしながらへらへら笑う軽薄な気配に、骨董修復士は微かに眉を寄せた――相手を若い娘だと見ると、目に見えて侮った態度を取り、敬意を払わない態度というのは珍しくもないが、やはり、向けられるたびに不愉快なものだ――ものの、敢えてここではっきり渋面をして、酔っ払いの機嫌を下手に損なっても良くないと気を配ると、彼女は適当に微笑みながら返す。
    「私、そういうのは、よくわからないの。長い間一人で居たから……」
     それは骨董修復士にとっては大して同情を引く為の話題でもない、単純な事実だった。ずっと一人で年を越し、一人で自分の身を立てていた彼女にとって、最早それは大したことではなかったものの、獅子舞には何か響くものがあったらしい。彼は、被っている獅子頭の下で驚いたような顔をしてぽかんと口を開いていたかと思うと、唇を引き結び、何かを言いかけて止め、それから酔っ払いの赤ら顔をいっそう赤くしながら、へらへら笑う形に口角を緩めて、「そ、それは、それはいけないな」と、取り繕ったような調子で口を開くと、続けてさらに、「俺が貰ってやろうか?」と、さも名案らしく、突拍子もないこと言い出した。
    「そ、それだけ手先が、器用ってんなら、衣装の繕い物も、舞台の小道具だってできるだろ。だ、団長だって、よ、喜んで迎えるさ」
     「な、なあ?」と、いかにも気安い調子で言いながら顔を上げた彼は、眉間に皺を作るようなやり方で、若干怖い顔ながら、人懐っこくも見える調子で笑って見せる。それに、今まさに酔っ払いの戯言に付き合わされている骨董修復士は、呆れて肩を竦めながら「あなたは、自分が寂しいんでしょう」と返した。
    「それなら、一緒に居られる人を選ばなくちゃ。私はだめなの、だって、このお店を任されているもの。あなたと、一緒にはいられないわ。」
     毅然とした態度で続けられる、骨董修復士のきっぱりとした断り文句に、獅子舞は多少機嫌を損ねた様子で、にやっと上げていた口角を詰まらなさそうに引き下ろしながら「わか、わかったような口を、き、聞きやがって……」と口の中で言葉を扱うようにもごもごと不機嫌にぼやいたものの、また名案を思いついたのか、獅子頭自体の重みにつられて俯きがちになっていたところから顔を上げると、(話しかけてくるなら歩けるでしょうし、これじゃあ作業にもならないから、今日はもう切り上げて帰ろうかしら)などと思いながら、道具の筆を手に逡巡していた骨董修復士の、薄く白粉を叩いた下に、そばかすの透けて見える横顔をにんまりと見遣る。
    「じゃ、じゃあ、じゃあさ! 俺が、か、通って、通ってやるっていったら、どう、どうするんだ?」
    「……それじゃあ、あなたの問題は解決しないの。それに、そういうの、現地妻っていうんでしょう。知ってるのよ。」
     度々の中断にそろそろうんざりした骨董修復士が、それまで作業に使っていた筆を濡らして先端の糊を取り除き、一旦今日の作業を終わりにしようとしながら唇を尖らせて続けた言葉は成程図星だったらしく、「よそにもお嫁さんを作るなんて、許さないの。」と、彼女が軽口らしく返してくる様に、獅子舞は「ぐう」と喉に言葉が籠るような音を漏らしながら、まるで年端のいかない子供が拗ねでもするように十秒程黙り込んでから、まるで意を決しでもするようにぎゅっと目を瞑り、金輪際酒は飲まないとでも誓うような調子(つまり、全く信用ならない調子のいい様子)で「……いや、しない! 他に、げ、げん、現地づま……なんてさ、作らないから! なあ!」と追いすがるように手を伸ばしてくるのを、その頃には作業台に広げていたあらゆる道具を手早く纏めて片付けていた骨董修復士はそれとなく躱して「もう店じまいなのよ」と最初に掛けた言葉と同じような意味合いのそれを繰り返した。
    「あなたも、自分のお家で休んだ方がいいと思うの。明日もあるでしょう? こんな固い椅子の上で寝たら、疲れなんて取れないわ。」
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    Replies from the creator

    @t_utumiiiii

    DOODLE弁護士の衣装が出ない話(探偵と弁護士) ※荘園設定に対する好き勝手な捏造
    No hatred, no emotion, no frolic, nothing.(探偵と弁護士) 行方不明となった依頼人の娘を探すため、その痕跡を追って――また、ある日を境にそれ以前の記憶を失った探偵が、過去に小説家として活動する際用いていたらしいペンネーム宛に届いた招待状に誘われたこともあり――その荘園へと到達したきり、フロアから出られなくなってしまった探偵は、どこからが夢境なのか境の判然としないままに、腹も空かず、眠気もなく、催しもしない、長い長い時間を、過去の参加者の日記――書き手によって言い分や場面の描写に食い違いがあり、それを単純に並べたところで、真実というひとつの一枚絵を描けるようには、到底思えないが――を、眺めるように読み進めている内に知った一人の先駆者の存在、つまり、ここで行われていた「ゲーム」が全て終わったあと、廃墟と化したこの荘園に残されたアイデンティティの痕跡からインスピレーションを得たと思われる芸術家(荘園の中に残されたサインによると、その名は「アーノルド・クレイバーグ」)に倣って、彼はいつしか、自らの内なるインスピレーションを捉え、それを発散させることに熱中し始めた(あまり現実的ではない時間感覚に陥っているだけに留まらず、悪魔的な事故のような偶然によって倒れた扉の向こうの板か何かによって、物理的にここに閉じ込められてもいる彼には最早、自分の内側に向かって手がかりを探ることしかできないという、かなり現実的な都合もそこにはあった。)。
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    recommended works

    @t_utumiiiii

    DOODLE #不穏なお題30日チャレンジ 1(2).「お肉」(傭オフェ)
    ※あんまり気持ちよくない描写
    (傭オフェ) ウィリアム・ウェッブ・エリスは、同じく試合の招待客であるナワーブと共に、荘園の屋敷で試合開始の案内を待っていた。
     ここ数日の間、窓の外はいかにも12月らしい有様で吹雪いており、「試合が終わるまでの間、ここからは誰も出られない」という制約がなかろうが、とても外に出られる天候ではない。空は雪雲によって分厚く遮られ、薄暗い屋敷の中は昼間から薄暗く、日記を書くには蝋燭を灯かなければいけないほどだった。しかも、室内の空気は、窓を締め切っていても吐く息が白く染まる程に冷やされているため、招待客(サバイバー)自ら薪木を入れることのできるストーブのある台所に集まって寝泊まりをするようになっていた。
     果たして荘園主は、やがて行われるべき「試合」のことを――彼がウィリアムを招待し、ウィリアムが起死回生を掛けて挑む筈の試合のことを、覚えているのだろうか? という不安を、ウィリアムは、敢えてはっきりと口にしたことはない。(言ったところで仕方がない)と彼は鷹揚に振る舞うフリをするが、実のところ、その不安を口に出して、現実を改めて認識することが恐ろしいのだ。野人の“失踪”による欠員は速やかに補填されたにも関わらず、新しく誰かがここを訪れる気配もないどころか、屋敷に招かれたときには(姿は見えないのだが)使用人がやっていたのだろう館内のあらゆること――食事の提供や清掃、各部屋に暖気を行き渡らせる仕事等――の一切が滞り、屋敷からは、人の滞在しているらしい気配がまるで失せていた。
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