輝く星によせて「世界のステージで、スターとして輝くためにも」
「——これからもよろしく頼むぞ、類!」
そう言って手を伸ばしてくれた司が、まぶしい、と思った。
***
「そこで、講師役の演出家の方が――」
昼休み、屋上に続く階段で、類と司はいつものようにふたり並んで昼食をとったあと、思い思いに過ごしていた。
よほどワークショップでの経験が刺激になっているのだろう。ワークショップが始まってからというもの、司はよく類にそこであったことを聞かせてくれていた。
目に見えて成長している、と思う。それに、最近の司はとても生き生きしていて。そうやって夢への階段を着実に上っている司を喜ばしいと思う。
(そう思ってるはずなのにな……)
ふいに、いつかの帰り道に寧々とした会話を思い出す。
『えむくんは僕達の別れが近づいたことを実感してしまったのではないかな』
『じゃあ、えむは……わたし達と離れ離れになることが寂しいから、元気ないってこと?』
(えむくんだけのことじゃない、あれは僕の――)
「類、聞いているのか!」
司の大声が直撃して、咄嗟に耳を抑えた。いつのまにか自分の考えにふけっていたことに気づき、慌てて取り繕う。
「すまない、少し作業に集中してしまっていたよ。何だい?」
「む。その割には手が止まっていたようだが……、まぁいい。ワークショップの仲間がな、変人ツーの方の演出家にも会ってみたいって言っていた、という話だ」
司の言葉に、類は目を瞬かせる。
「変人ツー?」
「ああ。オレがワンで、お前がツーだろ?」
「いや、それは知っているけれど……。なんでワークショップの人がそれを」
首を傾げながら疑問を司にぶつけると、顔にありありと不本意です、という表情を浮かべて司が言った。
「それがだな、なぜかオレが周りに変人と呼ばれていないか、という話になってだな。不名誉ながら変人ワンツーと呼ばれていることと、お前がツーだということを紹介したんだ。そうしたら、変人ツーが定着した」
類はますます首をひねる。
「なんで僕のことまで……?」
「ん? だって変人ワンツーなんだからふたりでセットだろ?」
せっと、と小さな声で呟く類に気づかず、司は続ける。
「休憩時間に類の演出について話していたらより興味をもったようでな。類だけじゃない、えむのアクロバティックな動きや、寧々の歌にも興味をもっていたぞ!」
ふふん、と司は胸を張る。
「さすが我がワンダーランズ×ショウタイムのメンバーだ! オレの話だけでそこまで興味をもってもらえるなんてな。今度ワンダーステージへショーを見に来ると言っていた人もいたし、最高のショーにしなくてはな!」
当たり前のようにそんなことを言う司を、まぶしい、と思った。
「司くん」
思わず声をかける。司が類の方を見て、首を傾げた。
(僕はこのまま四人でショーを――)
口を開きかけたまま、数瞬、司と見つめ合う。
……ぽすり、と司の肩に頭を預けた。
「……前にも言ったけど、あまり無理しないようにね。稽古の掛け持ちは大変だから」
「? ああ、体調は常に万全だから大丈夫だが、……類?」
頭を預けたまま、顔を伏せる類を不思議に思ったのだろう、司が類の名を呼ぶ。それに返事を返せずにいると、司がそっと類の頭を撫でた。
「もしかして眠いのか? また徹夜したんだろう。お前の方こそあまり無理をするなよ」
「……うん」
「仕方がない。このまま肩を貸してやろう。ただし、昼休みの間だけだからな」
いつもよりずいぶんと小さな声で告げる司に、くすりと笑いがこぼれる。
「そうだね。このままでいさせてもらうよ。……もう少しだけ」
頭を撫でる司の手は暖かい。その感触を味わいながら、ゆっくりと目を閉じた。