P職万斉×社畜山崎「あ~~。だるい~~~~」
仕事終わり。会社を出る頃には日付は変わっていた。
帰宅したら飯が出来てて、それを食ったら即その場で眠れそうなほど俺は疲れていた。
酷い眠気に抗いながら食器をキッチンに持っていけば、ちょうど万斉が自室から出てきた。そういえば今日は休みと言っていた気がする。
仕事柄不規則な生活をしているとはいえ今夜は寝ていたようで、いつもよりも逆立って寝癖のついた髪型が少し笑えた。
「おかえり」
「ただいま~。飯ありがと、ごちそーさん」
「どういたしまして。今日も遅い帰りでござるなぁ」
ふわ、と欠伸をする万斉につられて、俺も大きな欠伸を一つ。そのままトイレに向かう後ろ姿を見送れば、後頭部もくしゃくしゃに乱れていた。
俺はシャワーを済ませて明日の支度をして、早く寝なくては。
気を抜けば落ちてしまいそうな瞼を気合で開けて、蛇口から流れ出る水に触れれば少しだけ目が覚めるような気がした。そのままの勢いで洗ってしまえば、一人分の食器はすぐに片付いて、目が覚めたであろう万斉は寝癖はそのままにしっかりとした足取りで俺の横に立つ。
「隈が…」
指先で目の下を撫でながら、心配そうに顔を覗きこまれる。柔らかな前髪が俺の前髪と重なって、擽ったさに瞼を閉じる。
万斉は、いつも温かい。
「大丈夫だよ。ちょっと忙しくて今だけこんなんだけど、来週には落ち着くからさ。そしたらお願いがあるんだけど、いいかな?」
「おや、拙者が叶えられることなら喜んで」
「へへ…じゃあ、1個だけ」
柔らかな笑みを浮かべる万斉の肩に顔を埋めた俺は、そのまま擦り寄って背中に腕を回した。力を入れてしがみついてみれば俺の体はすっぽりと包まれて、心地よい腕の中だ。
「朝から夜まで、なぁんにも考えないでさ、お前と一緒に居たいなって思ってるんだけど。どうかな?」
恥ずかしくて、顔を見ずに小さな声で甘えれば、俺の体は温かい腕にぎゅうっと包まれた。後頭部を支えるように回されている大きな手のひらからは、より一層の熱を感じた気がした。
黙ったままの万斉が俺を解放する頃には、俺はすっかりと力が抜けてしまう有り様で、ふらふらと凭れ掛かるようにしてその身を万斉に預ける。
そのまま乱暴に担ぐように抱えられ、俺は情けない悲鳴を小さく上げてしまうが、そんな事はお構いなしとばかりに万斉はご機嫌そうに鼻歌交じりで廊下を歩き出した。向かう先はバスルームだ。
「え、ちょ、何を」
「明日…と言っても日付はもう変わっておるが、明日も朝から仕事でござろう?」
「う、うん…」
「何。お疲れの退殿をさっぱりと洗い流してしまおうかと思ってな。そしてゆるりと休まれよ。そして仕事が捗れば、拙者との時間も増えよう」
すとん、と脱衣所に降ろされた瞬間、俺の頬を両手で包みながら万斉はとても良い笑顔でそう話した。
容易くネクタイを解かれ、ボタンに手が掛かった所で俺は慌てて制止しようとするも、力で叶うはずもない。俺はみるみるうちに服をはぎ取られ、同じように素っ裸になった万斉から浴室へと押し込まれた。
「いいい、い、いや、俺一人で入れるし」
「立ったまま眠ってしまいそうだった者の言うことは信用ならんな。大人しく洗われておくといいよ」
「うっぷ!」
すっかり流されてしまった俺は、結局シャワーのあともあれやこれやと世話を焼かれることとなった。
そして髪を乾かす万斉の奇妙な鼻歌を子守唄に、久しぶりの心地よい眠りへと落ちていくのであった。