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    L5XU2BQpn8sTSCA

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    L5XU2BQpn8sTSCA

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    ドラエマイキー1万字超えたのに終わる気配ないから誰か読んで
    反社ドラ、マイ/置いて行かれた一般人エマ
    モブがエマちゃんに絡んでくる
    いつか支部に上げたいと思い続けてる

    マイキーを始めとする東京卍會は、いつの間にか巨大な組織になって、気づいた時には反社会組織となっていた。
    初めてニュースで東京卍會の名前を聞いた時びっくりした。
    ウチが高校卒業した時、マイキーが家から出て行った時からずっとマイキーからの一方的な連絡しか取れずにいたのに、どうしてって思った。
    ヒナはタケミっちと、ウチはドラケンと一切接触できずにいる。
    ヒナは高校の卒業式の時、ヒナの高校に迎えに来てくれたらしい。
    日が暮れるまでカラオケしたりプリクラ撮ったりして、最後の最後、ヒナの家の前の公園で泣きながら抱きしめてお別れを告げられたとヒナが泣きながらウチに報告してきた。
    「『もう2度と会えない、ごめん。俺はヒナを幸せにできない』って、ヒナは、たけみちくんと幸せになりたかったのに……っ、どうしてっ」
    ぼろぼろ涙を零すその姿にウチは何も言えなかった。
    ただその背中をさすってあげるしかできなかった。
    ヒナと同じ日にウチはドラケンとマイキーから別れを告げられていた。
    『俺らはこれから、戻ることが許されない世界に行く。そこにはエマもじいちゃんも連れて行けない。会えなくなるけどずっと思ってるから』
    そう言ってマイキーはお兄ちゃんの笑顔で、ウチの頭を撫でた。
    『ごめん、エマ』
    ドラケンがウチの目を見ないなんて初めてだった。
    何に対してのごめんなの、どうして連れてってくれないの、置いてかないでよ、ずっとそばにいてよ。
    支離滅裂な言葉を並べてマイキーの胸をポカポカ殴った。
    無敵のマイキーにそんなのが通じるわけないってわかってたけど、この気持ちをどうしたらいいのかわからなかった。
    その次の日、東京卍會の多数のメンバーが行方不明になった。
    幹部連中で唯一残った三ツ谷にどこに消えたのか尋ねても、知らないの一点張り。
    しかもルナとマナが段々自立してきて、うちに遊びに来る回数が増えたタイミングで三ツ谷も行方を眩ませた。
    多分ずっとそうする計画があったんだと思う。
    三ツ谷もいなくなった頃初めてマイキーから手紙が届いた。
    その封筒にはただ「佐野エマ様」と宛名だけが書かれていて、うちのポストに直接入れたことだけがわかった。
    『元気か?連絡できなくてごめん。』
    から始まり、ずっとウチとじいちゃんのことを心配して、最後に
    『連れて行けなくてごめん。俺たちのことは探さないで』
    とかかれていた。
    ウチはそれからマイキーたちを探すのをやめた。
    毎月10日に届くその手紙はいつもウチを心配する内容ばかりで、今マイキーが何をやってるのかなんて検討もつかない。
    ただマイキーが生きてるだけで嬉しい。
    ウチはウチの、マイキー達はマイキー達の道を行くんだ。
    そう思ってウチは専門学校に通って、去年ついに就職した。
    マイキーの手紙には『就職おめでとう』と書かれていて、つい泣いてしまった。
    マイキーはウチをそばに置いてはくれないけど、そばにいてくれるんだってわかったから。
    それに気づけるだけ大人になったんだと思う。
    気づけば季節はあっという間に過ぎて、ウチも先輩になった。
    まだまだ未熟だけど新人ちゃんと成長していければいいな。
    「エーマーちゃん」
    仕事も終わり、ロッカールームで着替えているウチに弾んだ声で話しかけてくれたのは、新人教育でお世話になった先輩。
    「どうしました?」
    「今夜暇?」
    やけに気合の入ったメイク、髪型、服装。
    嫌な予感がする。
    「いやぁ……ちょっと、暇じゃないですね」
    「暇だよね?合コンするんだけどさ、女の子1人足りなくて〜」
    先輩は優しくて気が利くいい人なのだが、こうやって余計なお節介、特に色恋についてのお節介を焼いてしまうのが玉に瑕だ。
    「……人数合わせなら、いいですよ」
    「やったー!いい人いたら言ってね、協力するよ!女の子は恋をして更に可愛くなるんだから」
    それなら心配いらないです、ずっと好きな人がいるので、なんて言えない。
    その人と最後に会話をしたのは何年も前の話だ。
    それなのに未だに片想いしてるなんて笑っちゃう。
    とりあえず合コンなら適当にメイク盛って、先輩についていく。
    外で待っていたのは先輩のお友達や後輩の人たちらしく、一緒に歩いて向かう内にみんないい人なのだと知った。
    先輩曰く今日の合コンの相手は有名な私立大学の方たちで、お金持ちで頭もよく、育ちもいいらしい。
    不釣り合いだなぁ。
    ウチはお金持ちじゃないし、頭もそこそこでちゃんと勉強してこなかったし、育ちなんか最悪。
    うーん、全然釣り合わない。
    まあ人数合わせだし、いっか。
    遅れてやってきた男性陣と飲み物を注文して揃ったところで乾杯する。
    「かんぱーい!!」
    女の子達の目がガチだ。
    獲物を狙う肉食獣の目、それに気づかない男性陣も肉食獣の目をしてる。
    おー怖。
    ちょっと気になる人がいた。
    背が高くて、声が低い人。
    少しだけドラケンに似てると思った。
    気づいたらウチの隣に来ていてびっくりした。
    「エマちゃんだよね?俺は」
    「えっと、庄司さんですよね」
    「そう!庄司廉!よろしく」
    にっこり笑う庄司にへらっと曖昧な笑みを返す。
    「エマちゃんってさギャルっぽいよね」
    いきなり距離を詰めてきて、肩とか肩がぶつかる。
    少し離れようにも逆隣は壁で逃げ場がない。
    「そう、ですかねぇ……あは」
    あんまり一般的な男性に免疫のないウチにとって、この距離感はちょっと、怖い。
    口角がうまく上がってる自信はないがとりあえず笑ってみせる。
    「いや俺全然そういうの気にしないから!ギャルも可愛いよね」
    気にしてないなら言わなくていいじゃん。
    「あー、そうですねぇ」
    「なんでかっていうとね、俺昔ちょっとヤンチャしててさ。知ってる?東京卍會!俺入ってたんだよね。無敵のマイキーにも気に入られててさ、家にも行ったことあんだよね〜」
    「えーすごーい!」
    周りの女の子達が感情を上げる中ウチだけはなんだコイツという目で見つめていた。
    それを勘違いしたらしい庄司がさらに話を続ける。
    「もうね、ドラケンとか?三ツ谷、場地とも仲良くて〜、よく遊んでたんだよね」
    「でも東卍って今めっちゃ怖いじゃないですか〜、庄司さんもそういう感じなんですか?」
    流石に反社とは関わりたくない女の子代表で先輩が甘えた声で尋ねる。
    「いやいやいや、高校入った時に辞めたよ、親に泣かれてさ〜せめていい大学にいってくれって。てことでもう関わりないから!」
    よかったぁなんて周りは安堵するがウチはどうしてもこの男が許せない気持ちになっていた。
    ちょくちょく東卍の集会に顔出していたウチはメンバーの顔なら大体覚えているし、マイキーのお気に入りなら顔も名前も覚えてるはずなのにこの男は記憶にない。
    恐らく全部嘘だ。
    そもそも昔ヤンチャしてて〜なんて語る割に筋肉がない、ただのチャラいお兄さんって感じ。
    東卍のメンバーが、東卍に誇りがある人が辞めたことを笑って話すわけがない。
    この人は、嘘吐きだ。
    「すみません、ちょっとお手洗いに」
    一旦離席した後も合コンは続く。
    あまりお酒に強くないウチは烏龍茶をひたすら飲んでいた、はずなのに。
    いつの間にかウーロンハイか何か、お酒を飲んでしまったらしく足元がグラつく。
    飲み会も解散になって、先輩達は2次会をするらしいがお暇させてもらおう。
    「すみません。今日はちょっと、お先に失礼します」
    店先で先輩達に頭を下げる。
    先輩は心配して
    「大丈夫?タクシー呼ぶ?」
    と言ってくれたが、ここから電車に乗れば一駅で家に着く、タクシー代勿体無いからと断らせてもらう。
    すると先程からしつこい、庄司とかいう男が私の腰に腕を回す。
    「俺エマちゃん送ってくね」
    そう言ってみんなと逆方向の駅へと歩き始めた。
    やだなぁ、この腕気持ち悪いなぁ。
    マイキーならウチのことおんぶしてくれるのに。
    ドラケンならウチのことあんま触らないようにしておんぶしてくれるのに。
    お酒を飲むと、こうやってマイキーとドラケンのこと思い出して泣いちゃうから嫌なのに。
    「ねえエマちゃん」
    馴れ馴れしく呼ばないでよ。
    「右と左どっち行きたい?」
    ずっと伏せていた目線を上げれば、右にも左にもあるのはラブホテル。
    おかしい、ホテル街と駅は逆方向なはず。
    「ちょっと回り道しちゃった、ごめんね、遠かったでしょ」
    そういう問題じゃない。
    「早く決めなよ、俺我慢できないから」
    「かえ、ります」
    覚束ない脚に必死で力を入れて自立しようとするも、しっかり掴まれた腰が解放されず上手く逃げられない。
    「いやいやいや、ここまで来てそれはないでしょ。俺ここまで我慢してたんだよ?」
    そっちの事情なんて知らないよ、他にも女の子いたじゃん。
    「帰る、から。離して」
    必死に睨みつけたけど垂れ目と酔いのせいで全然怖くないみたい。
    「じゃあ左ね〜」
    勝手に決めてウチを連れ込もうとする。
    「やだ!離して!」
    大声をだして抵抗するも周りは他人事、誰も助けてはくれない。
    だってそういう街だから。
    「いい加減にしろよこのアマ!優しくしてやればつけ上がりやがって、俺が元東卍だって言ったよな!?今すぐマイキーたち呼んでやろうか?」
    引っ張られる腕が痛い、高めのヒールなんて履いてくるんじゃなかった。
    「どうせ!!どうせマイキーもドラケンも三ツ谷も場地もみんな来ないでしょ!あんたマイキーのオキニじゃないし!そもそもあんた東卍にいなかったし!嘘吐かないでよ!!」
    ああ言ってしまった。
    ずっとマイキーの妹だってバレないようにしてたのに、マイキーがウチのこと守ってくれてるんだからウチもできる限り自衛しようと思ってたのに。
    「はぁ?マイキーと俺親友だけど」
    「マイキーはウチのお兄ちゃん!!あんたなんて見たことない!!」
    裏社会のトップなんて恨みいっぱい買って、一般人の妹なんて弱みにしかならないから、バレないようにしてたのに。
    これだけ騒いでいれば、こんな街でも周囲から視線が突き刺さる。
    それを気まずく思ったのか、男は地べたに座り込んだウチを無理やり引き上げてまた腰に腕を回す。
    「いい加減抵抗やめねえと東卍呼ぶぞ!!」
    「離して!!」
    必死に抵抗しても無駄。
    結局男女じゃ力の差は埋まらない。
    気づけばお気に入りの靴は脱げて、裸足で髪を振り乱して、みっともない姿になっている。
    でも嫌なものは嫌よ。
    ウチは全部、全部大好きなあの人のものなんだから。
    「助けて!」
    通りすがりに助けを求めてもやっぱり無駄。
    ねえ、お願い、助けてウチのヒーロー。

    「おい、その手離せや」

    ウチを引っ張る腕の力がなくなった。
    振り向けばそこにいたのはピシッとしたスーツの男の人。

    「東卍がなんだかって聞こえましたけど、どうかしましたか」

    初めの怖い話し方じゃなく、敬語で穏やかな話し方。

    「他人が口出してくんなよ。俺東卍と仲良いんだわ、巻き込まれたくないなら……あ?」

    庄司は何かに気づいたのか慌て始めた。

    「いや、その、えっと、なんでもねえ、ないです!すいません!!」

    そう言ってどこかに走っていってしまった。
    慰謝料請求してやろうか。
    走っていった方を睨みつけていると、助けてくれた男の人がウチに手を伸ばしてくれて、ウチはその手を取った。

    「おっと、大丈夫ですか?」
    「はい、すみません……」

    足元にあるはずの靴を探すが見つからない。

    「そこに車あるんで、一緒に来てもらってもいいですか?」

    さっきの男なら絶対拒否ったけど、なんだかこの人は大丈夫な気がする。
    どうしてだろう。
    裸足でゆっくり進むウチに合わせて歩いてくれるこの人は一体……。
    向かった先にあったのは高そうな黒塗りの車。
    後部座席はスモークガラスで見えない。
    連れてきてくれた男の人は後部座席を開けた。
    そこには大きな人影があって、男はその人に声をかけた。

    「よろしいですか」

    何も答えない人影、沈黙は肯定らしく、ウチは横向きで座席に座らせられた。
    ちょっと待っててくださいね、そう言って男は元来た道を戻った。ウチの靴を探してくれるらしい。
    車の座席から足をぶらぶら揺らして待つ。
    すると後ろから声がかけられた。

    「……エマ」

    それは聞き覚えがあるものだった。
    ずっと探してた、ずっと諦めていた、ずっと求めてた声。
    ばっと振り返る。
    先程まで一瞥もくれなかった人影がこちらを向いている。
    良く見えないけど、ウチは知ってる。

    「ドラ、ケン?」

    暗闇の中で外の光を映すその眼、綺麗な黒の眼。

    「あぁ」

    その一言を待ってた。
    抱きつけば、記憶のドラケンにはなかった香りがする。

    「会いたかった……っ、ずっと!」

    震えるウチの背中をさする、その大きくて優しい手がウチに触れるのをずっと望んでた。
    年甲斐もなくわんわん泣いていると靴を拾いに行ってくれた男の人が戻ってきたらしく、ドラケンに声をかける。

    「龍宮寺さん、お嬢さんはどうしますか」

    お嬢さん、だって。
    ドラケンはウチを軽く抱きしめたまま受け応える。

    「まんじろ……マイキーに連絡してくれ。今から向かう」

    男の人はドラケンにウチの靴を預けて静かに車のドアを閉め、運転席に座った。

    「エマ、目閉じてろ」
    「なんで?」
    「いいから」

    本当は久しぶりに会ったドラケンと目を見て話したかったけど、大きな手で目を塞がれて大人しくするしかなかった。
    抵抗したら、また消えてしまいそうな気がしたから。
    車が止まる。

    「エマ、自分で目瞑っていられるな?絶対開けるなよ」

    その言葉に頷けばふわりと身体が浮く。
    お姫様抱っこだ。
    びっくりしてバタバタ暴れると大丈夫だから、と優しく言われた。
    僅かに揺られながら、しかし大きな体は安定している。
    途中エレベーターに乗ってどこかに向かったと思う、高いホテルのエレベーターで鳴りそうな音が聞こえたから。
    高いホテルなんてドラマで見ただけで行ったことないからわかんないけど。
    またドラケンが足を止めて、ドアをノックする。

    「入るぞ」

    返事は聞こえなかった。
    それでもドラケンはドアノブに手をかけ、重厚感のある扉を開いた。
    未だにエマは眼を閉じたままだ。
    扉が閉じる音を聞いてドラケンはエマを下ろした。

    「目、開けていいぞ」

    言われた通り目を開く。
    ずっと眼を閉じていたせいでオレンジ色の柔らかな照明に目がチカチカする。
    その向こうに人影。
    間違えるわけがない。
    だってずっと一緒にいたんだ、ずっと探してたんだ。
    明るさに目が慣れなくても駆け出す。
    憧れの大きな部屋の広さが生み出す距離を鬱陶しいと思った。
    早く、早く、早く。

    「マイキー!!」

    窓辺に立つ愛すべき兄、マイキーに勢いよく抱きついた。

    「いてっ」

    流石に無敵のマイキーでも成人女性が勢いよく抱きついてくればたたらを踏んで、後ろの大きな窓に頭をぶつけた。
    そんなこと気にしてはいられなかった。

    「マイキー……!まいき……っ」

    えぐえぐ嗚咽を漏らすウチの頭を優しく撫でてくれるその手は、記憶にあるより少しだけ大きくて分厚くて、流れた時間の長さを感じさせた。
    どれくらいそうしていただろう、泣き止まないウチをマイキーが抱き上げてソファに運んでくれた。
    そこにはドラケンもいて、まるで夢でも見ているかのようだった。
    聞きたいことは沢山あったはずなのに、今はもうなんでも良かった。
    あの黒塗りの車は何とか、どうして目瞑ってなきゃいけなかったのかとか、どうしてウチを置いて行ったのとか、もうどうでもいい。
    生きていてくれたそれだけで十分。
    未だ泣き止まぬウチの頭の上で2人がギャンギャン騒ぎはじめた。
    よくわかんないけど、ウチを帰すか帰さないからしい。
    人の頭上でどんどんヒートアップする言い合いに、ついに堪忍袋の尾が切れた。

    「うるさーい!帰るかどうかはウチが決めます!もう子供じゃないんだから!」

    今まで泣いてたウチが叫んだせいで二人の目が点になる。
    そして2人揃って吹き出した。
    なによ、笑わなくてもいいじゃん。

    「そうだ、そうだな、エマはもう子供じゃねえもんな」

    そう言ってマイキーはウチの肩をバシバシ叩く。
    痛いよ。
    散々腹を抱えて笑ったマイキーが真剣な目でウチに話した。

    「俺たちが今いる場所は暗くて、深い場所。一度潜ったら戻れないんだ。そんな場所にエマがいちゃいけないと思って置いて行った、ヒナちゃん、ルナ、マナも。中学生の時の東卍とは違え、金のためになんだってする。この手は汚れてないとしても、俺らの部下たちの手は汚れてる」
    「もう二度とお天道さんの下を歩けねえような人間になっちまった。エマは俺とマイキーにとって太陽なんだ、失くしたくないし汚したくない。こんな汚れた世界にいないで欲しい」

    しばらく考える。

    「……難しくてよくわかんない。ウチは2人のそばにいたい。汚れても、洗濯してお風呂入ればいいし、戻れないなら進めばいい。ウチのことは最強の2人が守ってくれる。それじゃダメ?」

    子供の頃めちゃくちゃ汚してきた特服を洗ったのは誰だと思ってるの。
    いくらでも汚しておいで、ウチが洗ってあげるから。
    2人はずっと真っ直ぐ進んできたじゃん、迷ってもとりあえず進めばいつかゴールが見えるはずだって。
    今までずっと守ってくれたじゃん。
    だから何回でも言うよ。

    「ウチは、2人のそばにいたい」



    それからはドタバタ騒ぎだった。
    東卍にいるってことが一般にバレるとヤバいからと言われ会社は辞めることになったし、一人暮らしの部屋も解約した。
    今日は先輩たちと最後の飲み会で、ドラケンが迎えにきてくれた。
    タトゥーも隠して、一般人みたいな顔で。
    でも雰囲気が隠せてなくて、先輩達の笑顔は引き攣っていた。
    そんなことは関係ない、だってドラケンは先輩たちに興味はない。
    帰りの運転はドラケンたちと再会した時と同じ人で、高橋さんっていうらしい。
    色々質問攻めにしてしまった。

    「なんであの時助けてくれたんですか?」
    「龍宮寺さんからの指示で一切触れずに大人しく帰らせろとのことだったんですが、靴をなくしてしまっているのでどうしようもなく……後から殴られるのを覚悟しましたよ。結果オーライでお咎めなしですが」

    運転手がははっと笑えばドラケンが運転席を蹴る。

    「そういえば、あの人顔真っ青にして逃げて行ったけどどうしてですか?」
    「あぁ、それは龍宮寺さんのジャケットを見ればわかるかと」

    ばっと振り向いてドラケンのジャケットを漁る。

    「これだろ。あんまカタギの前で付けんなって言ってんだろが」

    そうドラケンが主張したのは卍を四角くデザインしたバッヂ、真ん中にはピンク色の石。
    フロントミラーを見れば、運転手もつけている。

    「東卍の幹部のバッヂです、幹部が認めた者にのみ配られます。幹部によって石の色が違うんですよ。あの男もよく知ってましたね。チャカ出そうか迷ったんですけど、理解があってよかったよかった」

    つまり、あの男は東卍について全く知らないというわけではなくむしろ一般人よりは詳しかったというわけだ。
    とは言うものの、東卍バッヂは少し調べれば出てくる情報なので関わりは一切ないと言い切れる。

    「ウチも欲しい」
    「やだ」
    「なんで」
    「なんでも」

    なんで〜〜〜〜〜!!と車内で叫べばドラケンは少し眉を顰めて片耳を塞ぐ。
    両耳は塞がないでウチの話聞こうとしてる。
    そういうところだよ、ほんと。

    「あーうっせえうっせえ。マイキーにでもねだったらいいだろ」

    違うもん、東卍の印が欲しいんじゃなくてドラケンの印が欲しいんだよ。
    なんで気づいてくれないかな、そういうところだよ、ほんと……。
    東卍の中で生きることが決まってからは眼を瞑らずに東卍に帰る。
    そこでマイキーとドラケンとウチで暮らしてる。
    たまに東卍の幹部の人が遊びにきたりするから、基本賑やか。
    今日も帰れば、ほらやっぱりマイキーと場地がいる。

    「ねえマイキー、ドラケンのマーク欲しいんだけど」
    「あ?あぁ、あれね、ダメ」

    即答されるし、場地笑ってるし。
    血のハロウィンで死にかけた場地は九死に一生を得、結局壱番隊隊長の座に返り咲いた。
    東卍メンバーが出て行った時、場地のお母さんが泣いてその背中を見送ったことを知っている。

    「エマ〜、これは東卍所属限定なんだよ。お前は東卍じゃねぇだろーが」

    酔っ払っているのか間延びした声で場地が言う。
    確かにそう。
    ウチは東卍のメンバーじゃない、マイキーとドラケンが嫌がったし、ウチも東卍に入りたいわけじゃないから。
    しかしその弊害がこんなところで起きるとは。
    今更、東卍に入ると言っても無駄だということはわかっている。
    どうしたらいいかうんうん唸っていると、マイキーが両腕を広げてウチを呼んでいる。
    その腕に飛び込んで、今日も健やかに心臓が動いていることを確認するように胸に耳を当てる。
    ウチが来たばっかの時は冷たくて不健康だった体も、最近ようやく温かくなってきた。
    次は太らせる予定。

    「エマ明日暇?」
    「暇だよ〜、録画したドラマも昨日見ちゃった」

    仕事辞めてこの部屋から1人で出ることを禁止されているウチは、たまにウチの方から誘うことがあっても、マイキーかドラケンに誘われない限りは殆ど外出する予定はできない。

    「明日出かけんぞ」
    「どこ?」
    「ん〜、なーいしょ」

    マイキーの両足の間に横抱きにされながら見上げると、マイキーはにししっていたずらっ子みたいな顔で笑ってた。
    それにつられてウチもへらりと笑う。
    だって嬉しいもの。
    1番鮮明な記憶の中でマイキーは泣きそうなのを我慢した真面目な顔でウチに別れを告げているから、再会した時もなんだか不器用な笑い方しかできなかったから。
    こんな風に心底幸せだって笑ってくれるだけで嬉しいの。
    そこにお酒を決めたドラケンが来る。

    「ケンチン明日行くことになったからよろしく」
    「は?あーわかった何時?」
    「店開いてんだっけ」
    「明日は休み」
    「じゃあ昼頃行こうぜ」

    よくわかんないけど、お昼頃3人で出かけることが決まったみたい。
    その後場地が酔い潰れる直前に壱番隊副隊長改め幹部補佐の、松野千冬が迎えに来てお開きになった。
    酔っ払って覚束ない足取りのマイキーをドラケンが雑に引っ張ってベッドに連れて行く。
    その後ろをウチが歩く。
    マイキーとウチは同じベッドで寝てる。
    めちゃくちゃ大きいベッドで空間が余るから、たまにドラケンも。
    マイキーはウチが部屋から出て行かないように、ウチはマイキーがウチを置いていかないように、そう願いを込めて抱きしめあって眠る。
    最初の頃はマイキーは寝てなかったらしいけど、最近じゃめちゃくちゃ寝てる、子供ばりに寝てる。
    もう一人ぼっちじゃないっていう安心感でよく寝られるからウチも好き。
    ドラケンに投げられたマイキーの腕の中に自分の居場所を探す。
    居心地がいい場所を見つければ瞼が自然と下がってくる。
    そんなウチらにドラケンがタオルケットをかけてくれる。

    「ドラケンは、一緒に、寝ないの?」
    「今日はな。お休みエマ、また明日」

    マイキーを起こさないように小さな声で会話して、ドラケンはウチとマイキーの額に唇を落とす。
    よく寝れるおまじないだって。
    それを合図に頑張って開けてた瞼がすっかり閉じて、ウチは深い眠りの海に落ちる。
    ねえドラケン、明日はどこに連れて行ってくれる?


    目を覚ませば、隣でマイキーが寝てる。
    温かいその体温に包まれてまた寝そうになる。
    すると頭上から低くて心地いい声が聞こえてくる。

    「エマ起きろ、マイキーも」

    ドラケンだ。
    起きなきゃと思って身を捩るとマイキーが腕に力を込めてウチを逃してくれない。
    困って、寝ぼけ眼でドラケンを探せばマイキーの腕からウチを救いあげてくれる。
    マイキーとは違うゴツゴツした大きくて太い腕に抱き締められる。

    「起きたか」
    「……おはよ」

    温かな布団から出たばかりのぽやぽやした体温を少し体温低めのドラケンに移すように首に抱きつく。
    片腕はウチを抱え、もう片方の腕はマイキーを引きずり出す。
    ノッシノッシと怪獣の効果音が似合いそうな歩き方で進む。
    揺すられるうちに目が冴えてきた、マイキーも一応目を覚ました。
    テーブルに置かれているのは優しい黄金色に輝くフレンチトースト。
    ドラケンが意外と料理できるっていうのは最近知った。
    3人で美味しくいただきました、ありがとう。
    時計を見ると10時過ぎを指していた。
    お昼頃に出かけるって言ってたよね。
    大きすぎてスペースが空いているクローゼットを開く。
    どうしようか、どこに出かけるかわからないからうまく決められない。

    「何やってんの」

    開け放たれたクローゼットの前で立ち尽くすウチを見つけたのはドラケン。
    後ろからぬっと現れてウチの肩に顎を乗せる。

    「服どうしよっかなって、行き先わかんないからどういうのがいいのか決めらんなくて」
    「俺が選んでもいい?」

    その言葉に目を見開く。
    嬉しい、嬉しい、嬉しい!
    その気持ちを全面に押し出す。

    「お願い!」
    「おー」

    ドラケンは呑気に返事をして、クローゼットの中を漁る。
    あれ、変なの入ってないよね。
    突然心配になってきた。
    ウチに向けられた広い背中を見つめれば、どうでも良くなってきた。

    「あ……エマちょっと待ってろ」

    クローゼットの中身ではうまく決まらなかったらしいドラケンが部屋を玄関から出て行った。
    ドラケン不在の間に改めて自分でもクローゼットを眺めるが、やはり行き先がわからないとなんともできない。
    するとドラケンが戻ってきた。

    「エマ今日これ」

    その手に引っ提げてきたのは、世間ではめちゃくちゃ有名なブランドのショップバッグ。

    「開けていい?」

    ドラケンが頷いたのを見て、子供みたいにワクワクしながら開ける。
    黒地に少し色味の違う黒でブランド名が書かれた紙袋、中身もなんだか黒い。
    広げてみると、それは漆黒のワンピースだった。
    手に取るだけで素人でもわかる、布の質の良さ、レース部分の技巧、縫い目の細かさ。
    どれもこれもが、これが高価である所以だと物語っている。
    目をキラキラさせているウチに着てみろと促してドラケンは部屋を出て行く。
    あまりにも細かい細工がされすぎていて、壊したりしないかと恐る恐る袖を通す。
    まだ背中のチャックを上げ切っていないのに、姿見に映った自分につい見惚れてしまった。
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