side:Peter 抱きしめられて、腕の中に閉じこめられる。オーデコロンと体臭の混ざり合った、よく知ったハリーの匂いに頭の芯から電流が走って、身体がぐずぐずに融けてしまいそうになる。
「ハリー…、ダメ、ダメだよ…」
カケラも思っていない言葉が口をつく。そう、こんなのは嘘だ。どうせ誰かに抱かれることになるなら、ハリー、君がいい。
「こんなに発情した甘い匂いで雄を誘っておいて、言うことがそれか?」
誰でもいいわけじゃない。君だから。言える訳のないセリフが胸の内で渦巻く。詰るような口調とは裏腹にハリーの手は優しく僕の指先を捕まえて、口付けた。ハリーの唇に触れられた指先は電撃が走ったようにピリピリと痺れ、その痺れは全身へと至った。甘い痺れに僕の身体は彼のなすがままに崩れていってしまいそうになる。
「父さんが帰ってくるまでの間だって我慢できなくてそんな甘い匂いをさせてる癖に。なにがダメなんだ」
このまま…ハリーに抱かれてしまいたかった。ぐずぐずに融けていきそうな体の中心で、心臓だけがキリキリと引き絞られるように痛む。こんな、こんなフェロモンなんかのせいでハリーを惑わせている第二の性が憎かった。ハリーが僕を欲してくれている訳ではなくて、ハリーの中のαという性が、僕の中で目覚めたΩという性に引き寄せられているだけ。動物の本能みたいな、ハリーの意志なんてそこにはない、肉体の反射だというのに。
ハリーが僕に恋して、求めてくれているような錯覚をしてしまう。ハリーに求められているという多幸感に溺れてしまいそうになる。
「僕の、つがい…は、君のパパなんだから…っ」
「その見境のない身体を慰めてほしくて仕方ない癖に、よく言う」