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    omoti_022

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    POIPOI 19

    omoti_022

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    有名な洒落怖の怪異とショタkkのはなし。
    ショタ時代はKKでは無いという解釈なので、少年呼びです。祖父母を捏造してます。
    怖くない。

    魅入られて。照りつける日差しと、じっとりと肌にまとわりつく茹だるような暑さ。それだけで鬱陶しいほどなのに、蝉の声がけたたましくこだまする。

    「あっつい…」

    涼しさを求めて比較的風通しのよい日陰の縁側に座っていた少年は、力なく呟いた。小さな手で額に滲む汗を拭い、右手で団扇を仰いだ。彼の後ろには首を振る扇風機があるのだが、茹だる暑さは変わらない。

    もう何度も自身の祖父母に、暑いから川に行きたいと抗議したのだが、ふたりは取り合ってはくれず。少年の本当の目的を悟っているのか、特に祖父の方は頑なに首を縦に振ることはなかった。逆に、家から出るな。と言われてしまった始末。反論しようにも厳格な祖父には逆らえず、今の状況だった。

    かと言って、大人しくすることなど、年端もいかない男児には到底無理な話で。
    廊下の外に放り出した足をパタパタと動かす。傍らに置かれたスイカ。丁度食べ終えたばかりで、手持ち無沙汰だった。
    何か面白い事でも。出来れば妖怪がいないかな。と川にいた河童を思い出していれば、ふと、家の生垣の向こう側に影が見えた。
    咄嗟にそこに顔を向けると、女が立っていた。サンサンと照りつける太陽に負けないほど、真っ白なワンピースと顔を隠すほどのつば広ハットを被った女だった。こちらを見て、じっと立っている。
    少年は見たことの無い女に戸惑う。田舎特有の御近所の距離の近さ故に、この地域に知らない顔はいないと言ってもいい。
    しかし、人同士の距離が近い故に、玄関から入らず、庭から声をかけてくる住民も多かった。少年も祖父母の友人に庭から声をかけられる事に慣れていた。
    その部類の人達だろう。と楽観的に考えて、少年は女に声をかけた。

    「あの、ばあちゃんに用事ですか?」

    女の人だから祖母に用だろう。という安易な考えだった。
    しかし、女は何も答えない。
    やけに蝉の声が大きく聞こえて、暑さが肌にまとわりつく。

    「あの…」

    女は答えない。
    変わらず、蝉の声と暑さが全身に絡みつき、額から汗が垂れた。
    何だか気味悪くなった少年は、一度奥に引っこみ祖母を呼んで来ようとした。

    「……ぽ」
    「え?」

    腰を上げた所で、何かの音がした。振り返ると、まだ真っ白いワンピースの女がいる。けれども、微動だにしない。この鬱陶しい暑さの中、身動きもせず、こちらを見ているのだ。そして、動揺からか動けなかった為に気づいた。気づいてしまった。

    女は、真っ直ぐ、彼を見ているとわかった。

    何故だかは分からない。つばの広いハットで顔は隠れているのに、少年はそう確信したのだ。

    その瞬間。
    女が得体の知れないものへと変わり、薄気味悪さが恐怖に変わった。
    冷水を浴びせられたように、身体から血の気が引き、ぎゅぅ…!と心臓を鷲掴みにされるような感覚に陥る。身体が思うように動かず、喉はへばりついたかのように音が出てこない。
    恐怖で固まった視線は、女から離れなかった。

    「ぽ」

    あの音は、女から出ていた。

    「ぽ…ぽ、ぽっ…」

    性別も意味も、何も理解できない音をだして、女はそこにいた。さっきまでうるさいほど聞こえていた周りの音は消え、耳に女の声がこびり付く。
    どくどくと心臓がうるさい。逃げなきゃ、逃げなきゃ。と思うばかりで、心中でありったけ叫んでも、声すら出なかった。

    それから、どれくらいの時間が経ったのか。少年の体感では数時間ほどだったが、実際は数分も経っていないような時間。
    恐怖でその場に縫い付けられていた少年は、女がこちらに来ない事を悟る。来れないのか来ないのか。どちらかは分からないが、恐怖に固まった身体を無理矢理に動かした。
    もう我慢の限界だった。

    小さい身体をめいっぱい使い、その場から駆け出した。追いかけてくる気配はなかったが、それでも後ろを振り向けばあの化け物がいるのではないかと思い、一心不乱に廊下を駆け抜け、祖母がいる居間に飛び込んだ。
    襖が開けられていた事で、飛び込んできた孫に祖母は驚いた。

    「何しんとんだ、けぇ」

    ホワホワとした祖母を見て、少年の恐怖に固まった感情がようやく動いた。

    そこからは、祖母にすがりついて、わんわんと泣き喚いた。しわくちゃの温かな掌で慰められながら、たどたどしくも事の顛末を説明する。すると、祖母の顔色が変わったのをみて、少年は幼いながらにもこれがただの化け物ではない事を悟った。







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