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    omoti_022

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    omoti_022

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    リクエスト頂きました、オメガバ世界線 娘ちゃんと昔のKK+凛子さん達です!
    消化不良になってしまい申し訳ないです…オメガバ要素も1ミリしか生かせてない!!!

    未来の幸せ。人のごった返す渋谷。至る所から会話する老若男女の声が聞こえてくる。いつもと変わらぬ喧騒の中、男はガードレールに身を預け携帯端末に視線を落としていた。気だるげに、時折眉を潜めながら端末の画面から視線を上げない。よくある光景に、誰も気にとめず男の前を過ぎていく。
    そこに、ひとつの影が彼に近付いていく。
    「パパ!」
    ドンッと足元に衝撃。同時に元気な甲高い声に、男は画面から視線を下に落とした。
    自分の右脚。いたのはいたいけな幼女だった。花柄のワンピースと肩までのボブヘアが良く似合っている。
    「……は?」
    「パパ、やっとみつけた!」
    にぱっ!とひまわりのような笑顔を向けられ、男の口から空気が零れた。



    所変わってアジト内。
    絵里香と凛子と並んでオレンジジュースを飲む、事件の渦中たる幼女がいる。
    歳は6歳。名前はさくら。好きな食べ物はケーキ、嫌いな食べ物はナス。
    小学校にあがる直前の年齢である彼女は、アジトに来た際に、やけにしっかりとした口調で自分の事を話した。
    そして、何より驚いたのは、彼女の父親がKKだと言うこと。しかも、未来から来たと言うでは無いか。息子以外身に覚えはないし、これからも子供の作り気のないKKは何度も否定するが、さくらは何度も肯定した。そして、幾度目かの否定の際、泣きそうになってしまった幼女。大きな瞳に涙を溜めて、少し震えながら必死に涙を流すのを耐えるその様は、余りにも心が傷んだ。決して鬼にはなれないKKは、深い深いため息をつき、周りの痛い視線を流しながら認めたのだった。
    しかし、全てが俄には信じ難い事で、ならば母親は?と問いかけたところ、彼女は首を横に振った。
    曰く、
    「パパが自分で見つけるの!」
    と、至極楽しそうににこにことして言うものだがら、凛子達の興味は尽きぬばかり。 特にエドはタイムトラベルという点において興味津々で、パソコンに向かい何やら調べていた。
    KKの方はどうにでもなれと半ば諦め、凛子と絵里香、そして、さくらの会話を眺めていた。
    姦しいとはよく言ったものだ。女が3人集まるだけで、あぁも盛り上がるものなのか。
    と、KKは心中で独り言ちる。
    「え~?あのKKが?」
    「うん!パパはママのこと大好きだもん!」
    「そりゃあ、見てみたいね。甘々なKK」
    凛子の愉快を隠しきれない視線が向けられ、舌打ちが出た。自分の預かり知らぬ所で何かが起こっている不愉快さは良いものでは無い。
    苛立ちを隠さずに立ち上がり、ズカズカとソファまで近付いた。
    「おい」
    「パパ?」
    きょとりと首を傾げた彼女。KKを見上げる瞳は自分とは違う柔らかいブラウン。けれども、髪色や目の形は自分と酷似していた。故に、自分の子なのだろうという漠然としたものはあったが、常識として認めたくはなかった。
    「お前、未来から来たんなら帰れんだろ。いつ帰んだ」
    吐き捨てた言葉に、さくらの表情が変わった。
    天真爛漫な笑顔から怯えたものに変わる。
    「わかんない」
    「は?」
    「わか、んない…」
    みるみるうちに溜まっていく涙。そして、誰も止めるすべはなく遂に決壊した。
    甲高い幼女の泣き声がこだまする。わんわんと人目もはばからず泣き喚く彼女は、自然とKKに手を伸ばした。
    「パパぁ…!!!」
    それから、KKにソファから身を乗り出して抱きつこうとかするものだから、慌てて凛子が支える。それでも止まらず、パパと泣くさくらに数回視線をさ迷わせた後、観念したKKはぎごちなく彼女を抱き上げた。
    「お、落ち着けって…」
    ぽん、ぽん。とぐずる小さな背中を叩く。
    実の息子にさえしたことは少ないのに、未来の娘(不本意)にする事になろうとは。
    可笑しな気持ちのまま、さくらが落ち着くまで抱き上げていたのだった。


    それから、泣き疲れたのかスヤスヤと眠るさくらを抱き上げながら、KKは疲れた顔をしていた。
    「様になってたじゃない、パパ」
    「うるせぇ」
    「いいお父さんだったよ、パパ」
    「いい加減にしろよ」
    周囲からの野次がうるさい。ウンザリしながらさくらの麿い頭を撫でる。よく手入れされた黒髪の手触りは良い。よく愛されていると分かるものだった。だから、ますます自分の子供であると信じる事が出来なかった。
    息子は自分の顔を覚えているのかすら危うい。なのに、この少女は自分に助けを求めてきた。柔い両手をめいっぱい伸ばし、確かに自分を呼んだ。息子すら満足に愛せない自分に、こんな子が出来るはずがないのだ。

    どう吐き出せばいいのか分からない感情を何度目かのため息として吐き出すと、丁度エドが奥から出てきた。手にはいつものようにドライブレコーダーがある。
    『KK、近くの神社にいってくれないか。異常な反応がある』
    「この状況見てから言えよ」
    『その子に関係があるのかもしれないし、追いかけている男に関係があるのかもしれない。それ程に大きな反応だ』
    再生された機械音に、その場は緊張に包まれた。
    「何処だ」
    『幽玄坂だ。大きな神社があっただろう』
    「了解」
    すぐに立ち上がろうとしたが、腕の中にさくらが居ることを思い出し、誰かに預けようと身体を離そうとした。しかし、キツくシャツを握られ、幾ら引っ張ろうとも離れない。
    凛子達も加勢するが、何処に力があるのかビクともせず、遂にさくらが目を覚ました。真っ赤に腫らした瞳でKKを見上げる。
    「ぱぱぁ…?」
    くしくしと目元を擦り、首を傾げた彼女。
    「……さくら。仕事入ったから避けてくれねぇか」
    遠い昔。ぐずる息子に言い聞かせた事を思い出し口にすると、さくらはKKの胸元に顔を埋めた。
    「や」
    誰もが予想した展開だ。幼女の扱いに長けたものなどここには居らず、さくらをどうしようかと手招いていると、丁度よくインターホンが鳴った。
    「わ、私、出てくるね」
    「よろしく」
    玄関に掛けていった絵里香を見送り、大人組は目配せしながらさくらの扱いを相談する。けれど、解決策など見つかる訳もなく。
    無理矢理引き剥がすか、とKKが提案した時。
    絵里香が戻ってきた。
    「ねぇ、みんな…」
    「どうした?」
    「あのさ…さくらちゃんのお母さんって人が来てるんだけど……」
    その言葉にいち早く反応したのはさくらだった。
    「ママ!?」
    「う、うん、でも、男の人で…」
    「ママだ!」
    「おい!!」
    周囲が止めるのも聞かず、さくらは小さな体で玄関まで駆けた。そして、鍵を回して扉を勢いよく開けた。
    「ママ!」
    「さくら!!」
    追いかけてきたKK達が見たのは、飛び込んだ彼女を受け止めた青年だった。タクティカルジャケットとパンツ。それに顔を覆う狐面。
    「ママ!ママ!!」
    「良かった…!」
    異様な風貌ではあるが、さくらは青年をママと呼んでいた。
    マンションの廊下。キツく抱き締め合うふたりに戸惑いながら、KKは声を掛けた。
    「おい」
    その声に弾かれるように青年は顔を上げた。そして、狐面がKKを向く。面の下で見ているのだろうと想像出来たが、長く続き。
    「KKだ…」
    「は?」
    青年が名前を口にする。何故知られているのだと疑問に思ったが、答えを出す前に青年が慌てて首を横に振った。
    「え、えっと、お邪魔してすみませんでした。さくらを預かって頂きありがとうございます」
    矢継ぎ早にそう口にしたかと思うと、くるりと背を向け、手を宙に翳す。そして、飛んだ。
    「……は!?」
    見えた馴染みのあるワイヤーにKKは慌てて廊下に出る。上空で滑空し、ビルの上に着地した青年が見えた。それから、彼の腕の中で、無邪気にこちらに手を振る少女も。
    「パパ!待ってるからねー!!」
    そんな事を行って、二人は夜の渋谷に消えていった。



    嵐が過ぎ去った静けさの中。狐に摘まれたような感覚に陥った。まさに夢。けれど、あの少女が泣いた涙の冷たさが、コートに残っている。そして、青年が居た場所から香る鼻腔を擽る甘い匂いもまた、ふたりはそこに居たのだと感じる。
    「KK」
    凛子に肩を叩かれ、漸く動く事ができた。
    「追いかけなくていいの?」
    そう問われ、KKは二人が再び去っていった夜空を見上げ、首を横に振った。

    「待ってる、って言ってたからな」



















    【おまけ】


    星が瞬く夜空を駆ける影がふたつ。
    「ママ、パパかっこよかったね」
    くふくふと微笑む腕の中の少女に、青年は力なく微笑んだ。
    「ママ、若いパパの事よく見てないからなぁ…」
    「パパね、おヒゲ少なかったよ。後、少しだけツンツンしてた!」
    「ツンツン?」
    「さくらの事、ガキって呼ぶの。さくらお姉さんだもん!」
    「あ〜……あのKKならねぇ…」
    ふわふわとした会話をしながらビル群を軽やかに駆け抜け、ふたりは大きな社のある神社に降りた。
    「後ね、後ね」
    「さくら、少しお口チャックね」
    まだ話し足りないと目を輝かせる少女に、青年が柔らかく微笑む。
    「ん!」
    「ありがとう、良い子」
    素直に従った少女。青年はそんな彼女の麿い頭を撫で、神社の鳥居を見上げた。そして、片手を向け、力を込めた。
    空間が歪む。鳥居を境に景色が波紋のように脈打ち、向こう側を歪めていく。景色がめちゃくちゃになった後、鈴が着いた数珠が、リンッ…と冷涼な音を立てた。

    すると、徐々に波紋が凪い、向こう側の景色が戻っていく。それから、完全に元に戻ると男が現れた。青年と揃いのタクティカルジャケットを羽織っている。
    「無事か?」
    「この通り。さくらも無事」
    「パパ!」
    その男は、先程少女が一緒にいた男と瓜二つだった。
    しかし、彼は手を伸ばした少女を素直に受け取り、しっかりと腕の中に収める。そして、大雑把に、されど優しく少女の頭を撫でた。先程の男とは違い、隠し切れない愛情が含まれていた。
    それから、青年にも手を伸ばす。
    「ほら」
    「ん、ありがとう」
    その手を取った青年が鳥居を越える。

    途端。

    最初から存在していなかった様に、3人は消えたのだった。
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    「なあ。暁人クーン。オレとバイトと、どっちが大事なんだよぉー」
    「…は?」

    突然の言葉に、文字通り目をまん丸くして、皿洗いを終えたばかりでエプロンを外す手が止まる。
    1529

    リキュール

    DONE日本ゲーム大賞優秀賞おめでとうございます!(遅刻)
    おめでたいと祝われるK暁です。本編後KK生存if、『黒猫』より少し前。
    愛したくて仕方がないが我慢していたKK×子供扱いされたくない暁人のお話。
    吉事あれば腹の内を晒せ「(おや、ちょうどいいところに)」

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