From B's last towards A's past(A)→
「教授。――やっぱり、僕の手は取れない?」
摩天楼の中にある深淵。暗闇から伸びた大きな手がアベンチュリンの掌上に一枚のチップを戻した後、金色に光る双環が端的に、是、とだけ答えた。彼が身に纏う何らかの奇物の効果だろうか、瞳以外の容姿はぼんやりとした影に紛れて全く見えない。
「どうしてか、聞いてもいい?」
「解決できる問題のために君に余計なリスクを背負わせたくない」
「君は現状を、解決できる問題だと捉えてるんだ」
はじめて徹底的な情報隠匿を決断した翌朝の、夜の化身のように警戒心の強いひとりの猛禽を、完全に隠れてしまう前に捕まえられたのは僥倖だった。
「いつ戻ってくるつもりなの?」
「僕が其の視線を射止めるか、君が賭けに負けたら」
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