もしもの話 漆黒と暁月の間時空×月×日
ここしばらくやけにボーッとしている。...らしい。
と言うのも自覚がないのだ。リーンに言われなければ気づかなかったが、言われてみればここしばらく自分が何をしたかが思い出せなかったりする。
それはちょうど、エメトセルク...いや、ハーデスを倒しクリスタリウムに帰ってから頻繁に起こっている。最初は数分意識が飛ぶ程度だったのに今や丸一日吹っ飛んだ、なんて事ザラにある。
かつて私の身体を蝕んでいた罪喰いの光は、ハーデス討滅と共に何故か消え去ったと聞いている。その状態なら大丈夫だとヤ・シュトラからのお墨付きだ。
...だが、依然としてその日の記憶は曖昧なまま、朝起きたら次に気づいた時は夜中だったり、知らない間に暁の誰かと食事をしていたり。
サンクレッドとウリエンジェ、リーンはボーッとした私と居合わせる事が多いらしく、流石にアム・アレーンの砂漠で立ち尽くす私を見かけた時は肝が冷えたと小言を貰ったばかりだ。
1つ、思い当たる事が無いでもない。だがこれが本当の事なら、私は今すぐにでも...いいや、それは最後の手段だ。
その「思い当たる事」を裏付ける証拠として、まずテンペストにいる間の記憶ははっきりしている事。次いでラケティカ大森林も若干ではあるが覚えている事が多い。
だがアム・アレーン、若しくはコルシア島だった時は知り合いに声をかけられるまで意識が飛んでいる。多い、なんて次元では無く"必ず"だ。
光は鎮静と停滞を司るもの。長くその光を溜め込み続けた私は、その光を突如溢れさせる事こそ無かったが魂は徐々に侵蝕されてしまったのだろう。
...有り体に言えば、罪喰いになりかけているのだ。
この事は相方に、ゼルにだけ伝えた。
暁の血盟のみんなにはもちろん、グ・ラハにも言わないつもりだ。ただでさえ大罪喰いを何体も討伐した身、自分がどんな罪喰いになるかがわからない以上、剥き出しの魂である暁の面々を危険な目に合わせるわけにはいかないから。
ゼルは「約束」を守ると誓ってくれた。...少し安心した。
×月◯日
フェオ=ウルが私の魂の状態に気づいたらしい。
...残念ながら、彼女の提案には乗れなかった。代わりに、その時が来たらこの紀行録をサンクレッドに渡すよう頼んだ。
ついに意識のない時間が日付を越えるようになってしまった。
せめてみんなを原初世界に帰すまでは保ってくれよ。
△月×△日
気づいたらアーモロートの端でぼーっとしていた。意識が戻った瞬間立てなくなって驚いたが、クリスタリウムに戻ったら1週間経っていたからもっと驚いた。
左腕が動かなかったのは、なんとか隠し通せたみたい。まったく、意識が無い間に骨折なんて馬鹿みたいな話だ。適当にケアルをかけておけばどうにかなるだろう。
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◯月◯×日
もうめのまぇがまっしろだ もじをかくのもぉぼつかない
でもまだ みんなのことはわかるから がんばれそぅだ
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おもい、まぶしい....
すなのにおいと、まぶしいひかり、ここはきっとあむあれーんだ
もうあしがおもい あるけなくて たおれたんだな
ぶきは、おいてこられたみたいだ
よかった きずつけなくてすむ
「ルイ....!!ルイ!!!!!!」
ぜる、ゼルのこえがきこえる
「お前っ......!こんな真っ白になるまで、ひとりで....」
やくそく、ぜると、ぜるなら、だいじょうぶ
「......ぁ.......ぜ、....る........。ゃく、そ............」
だいじょうぶ、だいじょうぶだから なかないでくれ
てはもう、うごかないけど わたしならだいじょうぶだよ
「..........あり、がとう。ゼル........」
わたしをころしてくれてありがとう