夜が明ける女神の審判がくだされる時
俺は君と引き離されるのだろう
それでも
ベッドに潜り込む俺に君が言う
「冷たい」と。
冷たい。
血の匂いが
人ならざる体温が
光さえはじめから無ければいいのに。
女神の審判が下される時
破滅の音が鳴らされる時
俺は君と引き離されるだろう
その時こそ 俺は
「 」してしまうに違いない。
このような哀れな魂に
誰が真の審判を下すというのか
それは女神ではなく
(今日粛清したのは君に毒を盛ろうとした男だった君を傷つけた純ハイリア主義の過激派だ俺の顔を見た瞬間に叫びだしたよ嗚呼退魔の騎士様貴方様の純血を残さねばその為にはあの穢れたリトに貴方様の子種を独占などさせるわけにはいかないのですそれからは聞いてない俺の刃が奴の頭蓋を砕いたからだどうしてだろうな何の手応えもないのは俺にとって何の 何の)
ベッドに戻った俺に君は言った
「冷たい」と。
それは俺の血か
粛清し続けた者共の血なのか
(少なくとも君じゃない)
この世界はこんなにも醜く汚れていてどうしようもなく腐っていて
俺の愛する者を全て取り上げたのに
それなのに
(朝靄のなかで存在する君の羽の色も)
(歌声を囀る君の嘴の角度も)
(瞼の裏の紅い色の危うさも)
俺の愛するものは この世界にしか 存在しない
(いつかこの世を去った時リンクはリーバルと我が子が待つパラディソスにはゆけないだろう そんなことはもうとっくに分かりきっている自分の肉がゲヘンナで悪魔共に切り刻まれることもそれは朝になれば太陽が昇り夜になれば沈むほど当たり前のことなのだ女神はかつて自分が退魔の騎士として選んだ男がゲヘンナでのたうち回る様を汚らわしく哀れなものとして蔑むだろうそんなことはちっとも構わないリーバルと我が子の苦しみを清めてくれるなら今この瞬間にゲヘンナに身を投げてしまったって)
その思いに何の意味がある
女神はあの瞬間でさえリーバルと我が子を助けてくれなかったではないか
命を懸けてハイラルのために貴女の世界のために戦ったリトの英傑を
見捨てたではないか
リーバルが暖かい義翼で自分を包む
この瞬間 赤子のようになる
おかしいだろう 厄災と恐れられているこの俺が赤子などと
女神の前でさえ俺は懺悔しない
俺が断罪されたいのは
君だけだから
このまま
君が深く眠り安らかな夢の中にいたまま
心中するのが最もしあわせなのだ
君の好きなタバンタ柄の毛布をかけて苦しみなど一切存在せず
俺が君の息の根を止め このまま俺も死んでしまえば
(この城は凍り誰も俺達に触れられなくなる。)
(そうして何千年も先まで俺達の寄り添った姿は残り続けるだろう。)
それが最もしあわせなのだ
けれどハイラル王国は俺達のことは歴史上から消してしまうのだろう。
「退魔の騎士であるリンクはガノンを封印したあと、聖剣を森へ返し世界の困った人を助ける旅に出ました。
めでたしめでたし」
そうして俺の物語から君の名前は消され
幾千幾億の旋律とともに俺はお伽噺となる
くそったれの物語だ
この世界はどうしようもなく醜く汚れていて腐っているのに
それでも 俺の愛するものはこの世界にしかない
君は この世界にしかいない
そら
今日も君の息の根を止める勇気がなかったから 朝日が昇る
どうしようもなく腐っているのに どうしようもなく愛しい世界が
また 夜が明ける
※パラディソス…天国
※ゲヘンナ…地獄
ファルス(ちんちん)もそうなんですがギリシャ語を流用してます