息の出来る場所(ラーヒュン)「貴様のその自己肯定感や戦闘以外の自己評価の低さは何なんだ」
「は……?」
不愉快そうな顔で告げられて、ヒュンケルはぽかんとした。あまりにも突然すぎる発言だったからだ。彼らは確か、他愛ない雑談をしていた筈なのである。
ここは、カール王国に与えられたヒュンケルの私室だ。戦い続きの人生で肉体を損なった弟子を、王配となったアバンが引き取ったのだ。せめて、それぐらいさせてください、と。
かつて、誤解から彼らの道は分かたれた。あの日、幼かったヒュンケルの手を離したことを、アバンは今も悔いている。その師匠の優しさに、顔向けなど出来ないと思いながらヒュンケルは甘えるカタチになった。
ただそれは、彼がアバンを頼ろうと思ったのが理由では、ない。
5236