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    Jeff

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    お題:「ダイエット」
    #LH1dr1wr
    ワンドロワンライ参加作品
    2024/05/26

    #ラーヒュン
    rahun
    #LH1dr1wr

    Dungeon「お前が」
     ヒュンケルは、自分の声量に驚いて俯いた。
     ぽそぽそと続ける。
    「お前が……言ってくれたから」
     ラーハルトは頭を抱えて突っ伏したまま、「何をだ」と言い返す。
    「俺の、頬骨がきれいだって」
     そうだ、確かに言った。
     戦後にひと回り細くなってしまった相棒は、彫刻めいた美を纏っている。
     痩せた腕を切なそうに見ている元戦士に、慰め半分、情欲半分で。
     青白い頬に触れ、甘く囁いてみたのだった。
     まさかその一言が、ヒュンケルの歪んだ美意識に着火してしまうとは。うかつだった。
    「だから、その。お前もやはり、ああいうのが好みなんだろうなと」
     当人はもじもじと顔を赤らめる。
    「?」
    「もう少しだけ痩せたら、近づけるかと思ったんだ」
     中指の指輪を弄る。
    「父さんは、本当にハンサムだったから」
     ラーハルトは顔を上げて、また突っ伏した。
     生ける骸骨の化け物に育てられたとはいえ、ここまで常識が抜け落ちるものだろうか。
     この男、ひとりで生かしておくには危険すぎる。
    「分かっていると思うが、ヒュンケル」
    「分かってる。もうダイエットはやめる」
    「どこでそんな言葉を覚えたのか知らんが」
    「姫の茶会で」
    「だろうさ。そして、『骨』を目指すのは健康的なダイエットとは言わん。自傷行為だ」
    「それも分かってる、衝動的だったんだ。なんと言うか」
     と、ヒュンケルはまた緑色の指輪を撫でた。
    「ラーハルトのこととなると、俺は時々、正気を失ってしまって」
     お前はずっと出張で、ダイと各国行脚だったし。
     ひとりで待っているのも退屈で。
     と、ヒュンケルはぶつぶつ言い訳する。
    「それで。わざわざ大勇者を訪問して、情報を盗んで」
     ラーハルトが頬杖をつきながら追及する。
    「人聞きが悪いぞ。先生にちゃんと頼んだんだ」
     ヒュンケルは明後日の方向に目を逸らす。
    「厳重に警護された破邪の洞窟に単身潜って」
    「ああ」
    「最深部ギリギリまで降りて」
    「そう」
    「けったいな指輪を手に入れてきたと」
    「うむ」
    「どこが衝動的なんだ」
     怒られて、ヒュンケルは首をすくめる。
    「――まあ見てくれ。この文献」
     しかしめげずに、どさりと古文書を開いた。
    「とある勇敢な武器商人の伝説だ。神秘のダンジョンを踏破し、財宝を手に入れたと言う」
     ラーハルトが覗き込むと、おどろおどろしい怪物の挿絵。
     丸っこい人物が、数匹がかりで洞穴の入り口からつまみ出されている。
     怪物の足元には、魔界語で『ももんじゃ』と注釈が付いていた。
    「詳細を読むと、彼の冒険は破邪の洞窟にそっくりなんだ。俺の予想通り、最深部には伝説のダンジョンが保存されていた。そしてついに、古代の挑戦者が悩まされた、呪いのアイテムが手に入ったんだ。人呼んで」
     ぎらりと緑の宝石が光る。
    「『ハラペコの指輪』」
     ラーハルトは無表情に、目をキラキラさせた相棒を見返す。
    「聞きたくないが一応聞いてやる。 一体、効能はなんだ」
    「たちどころに空腹になる。装備するとどんどん痩せ衰えてしまう、らしい」
     だいえっとに最適じゃないか。と、ヒュンケルが胸を張る。
    「……仮説は認めるが」
     ラーハルトはページを繰りながら、
    「本当に結果が出たと思うか?」
     二人して、じっと挿絵を見つめる。
     しましまのチュニックを着こなした恰幅の良い英雄、伝説の武器商人は、なんとなくキングスライムに似ていた。
    「……」
    「こいつが、特別にハラペコに弱かったんじゃないか」
    「む」
    「だろ?」
     ヒュンケルはこくりと頷いて、指輪を外した。
    「確かに」
     きゅう、とおなかを鳴らすヒュンケルの肩をぽんぽんと労う。
    馬鹿な真似をしないように」
    「……」
    「返事」
    「はい」
     まったく。目を離したらこれだ。
     しかし、せっかく前人未踏の領域まで降りたのに、収穫がこの仕様もない指輪だけで良いのだろうか。というまっとうな感想はしまいこんだ。
    「……早めの夕食だ。何がいい」
     しょんぼり肩を落としていたヒュンケルが、ぱ、と顔を輝かせる。
    「ニジマスを焼いたやつと、いつものシチューと、それから」
    「分かった。腹いっぱい食わせてやる。手伝え」
    「うむ。……ところであの指輪、どうしたらいいだろう」
     ヒュンケルがしおらしく聞く。
    「癪だが、明日大勇者に相談だ。どこかに封印して貰え」
    「先生に怒られるだろうな」
    「怒られろ。間違っても指輪を誰かに贈ったりするなよ」
    「なぜ? 御婦人方は皆、あんなにダイエットが大好きなのに」
    「自分で考えろ、馬鹿」
     食卓に残され、寂しそうにきらめくハラペコの指輪。
     騒がしい闖入者、食いしん坊の武器商人を、ちょっと懐かしんでいるようにも見えた。
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    ムーンストーン

    DONEメガンテを巡るポップとダイの攻防戦。(ダイは籠城戦です。外から友軍が来ないと敗ける…)R-18は念の為。
    ほぼ会話オンリーです。ダイが弱々で、アニメ58話冒頭の戦意喪失ダイにキュンとなって衝動的に(略)
    別の話になる予定だったので後で統合するかもしれません。
    魔法契約設定も含めて捏造だらけですが、ダイ大の「メガンテは魔法が使える人ならだれでも使用可能」設定だと契約なしで使えるかも?と妄想しました。
    The Point of No Return 回帰不能点〜ダイ酒場兼宿屋は夜になってもざわめきが消えない。
    人里離れたデルムリン島育ちのダイが人の気配の濃厚さに気疲れしているのを悟ったポップはダイに先に風呂へ入れと促した。
    カラスの行水ですぐ部屋に戻ったダイと入れ替わりにポップが一階の風呂に行くと、ダイは寝る前の準備として二人の荷物をすぐ持ち出せるようにそれぞれのベット上の足元に置いた。
    それは二人がデルムリン島から冒険の旅にでたときからの習慣だった。

    不思議なことに魔王軍に夜襲をかけられたことはほとんどないが、野生動物や凶暴化したモンスターに襲われたことは何度もある。

    ダイが相手を剣で切り払えば返り血で服や荷物が汚れるし、ポップがうっかり最近出力が上がり続けているメラを放とうものなら山火事になりかねない。
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