最後の一人指先に触れたコアの残滓は術者の体内に時間をかけて蓄積し、やがて精神を冒す。さながら重金属が人間の身体を蝕むように。
「KKはやっぱりすごいなぁ」
マレビト退治の依頼をこなしたところでようやく一服。誰にも邪魔されずにこの街を一望できるこのビルの上はオレと暁人のお気にいりの場所だ。普段オレがタバコを吸えば必ず一言言う暁人だが、ここにいるときだけはただただ静かに煙の流れて行く先を眺めている。
「なんだ?急に褒められてもなんも出ないぞ」
「さっきマレビト倒してる時5体同時にコア引き抜いてたから」コアの引き抜き方を思い出しているのだろう、左手で何かをつかむ動作を繰り返している。
「あの夜はできたから当たり前にできるものだと思ってさ。今は一体引き抜くので精一杯だよ」
エーテルショットも全然当たらないしさぁ…と悲しそうにつぶやく暁人。
マレビトのコア。暁人に触れさせないようにオレが立ち回っているだけだ。
指先に残るマレビトの残滓。マレビト退治の末あちらの世界に行ってしまった適合者は決して少ない数ではない。今もオレの胸の奥にはドロリとしたものが蟲のように蠢いている。
「…一体だけで良いんだよ」
暁人の肩を抱き寄せてそのこめかみにキスをしてやる。
──オレがいつかマレビトになっちまったら、そん時は頼む。