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    いぬがみ クロ

    @inugamikuro

    ときメモGS4にハマった字書き犬。二次妄想小説を書き散らします。よかったら仲良くしてください。

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    いぬがみ クロ

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    ※R15くらい? 風真くんが少し病んでるかな…。
    ※主人公の名前は「小波 美奈子」にしています。

    #ときメモGS4
    tokiMemoGs4
    #風真玲太
    reitaKazuma
    #風マリ
    mariologyOfTheWind
    #玲マリ
    mariRei

    新世界へ  希望を胸に帰ってきたのに、苦難の連続だった。
     そもそも帰郷の目的である初恋のその人は、俺のことをロクに覚えていなかったし。
     初恋の相手こと、世界一薄情な女、「小波 美奈子」。――彼女は、モンスターだった。

     運動ならば、体育祭で常に一位。
     学業ならば、定期テストで常に一位。
     マジで友達百人できそうな、コミュニケーションお化け。愛されキャラ。
     だから、恋のライバルは山ほど。二十四時間、気が休まらない。
     美奈子が研鑽を積み、魅力的になっていけばいくほど、俺は病んでいく。

     帰ってこないほうが良かったのか?
     しかしあいつの笑顔を見るたび、俺はその疑問を自ら否定する。
     会わないなんて、会えないなんて、今となってはもう考えられない。

     「行くも地獄、戻るも地獄」とは、まさにこのことだ。


     今日も美奈子を待ち構えて、一緒に帰った。
     美奈子のケツばかり追いかけてみっともないが、少しでも一緒にいないと、不安になるのだ。
     ほかの男に取られたらどうしよう。そんなことばかり考えている。
     帰り道、いつものとおり、海岸に寄った。
     冬の海は寒いから、人がいない。
     砂浜に腰を下ろして、他愛のない雑談をする。間が空けば、寄せては返す波を眺めた。
     ――ふたりきりの穏やかな時間。
     本当はこれで満足するべきなんだろう。どうして、俺はそれができないのか。

     小波 美奈子が好きだ。昔からずっと。
     彼女への恋心を意識すれば、同時に湧いてくるわがまま。
     ――独占欲。
     美奈子の全てを支配したい。誰にも見せず、触れさせない。俺だけのものにしたい。

     はっきり言って、俺は異常だ。

    「はあ……」

     俺の吐いたため息は白い煙となって、冷たい空気に溶けた。

    「どうしたの? 最近、元気ないね?」

     横顔に、美奈子の視線を感じる。
     こいつ……。誰のせいだと思っているんだ。

    「体調悪い? 風邪? だから昨日、来なかったのかな?」

     言いながら、美奈子はスマートフォンを差し出す。俺はちらりと目だけ動かして、それを覗いた。
     画面には同じ学年の、七ツ森 実と本多 行が写っている。背景には、動物園が写っていた。

    「七ツ森くんたち、風真くんも誘ったけど、断られたって……。調子、悪かったの?」

     画像の中心にいる美奈子と、男たちの距離が近い。ちくりと針で刺されたような痛みが、胸に走った。
     こういう小さな不快感が積もりに積もって……。俺はきっと、限界が近い。
     美奈子はスマホを自分の前に戻し、ニコニコしながら眺めている。

    「動物園、楽しかったんだよー。動物の赤ちゃんがいっぱいいてね。本多くんの薀蓄が炸裂したし、七ツ森くんおすすめの動物園限定スイーツも美味しかったし」

     やめろ、黙れ。なんでお前の口から、ほかの男の話を聞かなきゃいけない?
     お前は俺のことだけ考えていればいいんだ。

     お前から離れれば、苦しい。
     ――だけど。

    「次は一緒に行こうね」

     そして、ほかの男に愛想を振り撒くお前を、指を咥えて見てろ、と?
     ――だけど。

     ほらな。お前と離れていてもつらいし、お前と一緒にいてもつらいし。
     この生き地獄は、ずっと続くのか?

     だったらいっそ、殺して欲しい。

     死にたい。
     トドメを刺して。

    「あ、のど飴でも食べる? この前、風真くん、バイト先に来てくれたじゃない? あのときこっそりくれた飴、癖になる味だよね。リコリスキャンディ。すごく気に入って、探したんだ」

     こいつのバイト先には、イノリが――やっぱり美奈子に惚れている、氷室 一紀がいる。
     美奈子の奴、わざと言ってるんじゃないのか?
     無邪気どころか、正反対。
     ――邪悪。
     こいつが俺を狂わせて、おかしくして。

     ――俺はただ初恋の相手と再会して、浮かれているだけの、純粋な男でいたかったのに。

    「もう黙ってろ」
    「風真くん……?」

     変な吹っ切れ方をした俺は、美奈子を抱き締めた。そして驚いて目を丸くしている彼女に、強引に口づけた。

    「……っ!?」

     俺の少し先で、長いまつ毛が忙しなく上下している。
     美奈子の唇は、小さくて、柔らかかった。こんなもん、一口で食い破れそうだ。

     好きな女の子とキスしている。なのに喜びよりも、暗闇の中にひとりで立っているような気分だった。
     それでも興奮してしまうのだから、俺という男は本当にしょうもない。
     もしかしたら俺は、なんだかんだ理由をつけても、単にこういうことがしたかっただけなのかもしれなかった。
     ――美奈子にいやらしいことをしたい、と。
     彼女の苦しそうな息遣いが、俺の嗜虐心をそそった。脳みそが獣の思考に染まっていく。

    「美奈子……」
    「う、ん……っ」

     美奈子の唇をざろりと舐めれば、食いしばりが解けた。そのすきに、彼女の口の中へ舌を潜り込ませる。

    「んっ……」
    「お前、さっきまで食ってただろ。飴。リコリスの味がする……」

     どうしていいのか分からないのか、逃げるように動く美奈子の舌を捕まえ、自分の舌を絡ませた。たまらない気持ちになって、彼女をますます強く抱き締める。

     美奈子の唾液が甘い。もっと欲しくて、吸い上げる。
     もっと、もっと――。
     胸に触れると、初めて強く抵抗された。彼女にとっては精一杯だろう力で押される。が、俺にとっては、蚊に刺された程度の衝撃でしかない。
     俺はあざ笑い、短いスカートの中へ手を伸ばした。
     ――そこまでして、美奈子の目に光る涙に気づいた。

    「や、だ……」

     溢れた涙は一粒だったが、俺は大量の氷水をぶっかけられたような気がした。

    「ちっ……」

     俺は舌打ちをして、美奈子を離すと、彼女に背を向けた。
     自分のやったことも理解しているし、これからどうなるかも分かってる。

    「――行けよ」

     絶対に、謝る気はなかった。だって謝ったら、ふわふわした美奈子のことだ。俺を許して、なかったことにするだろう。
     ――そして、ふりだしに戻る。
     そんなのは御免だった。
     だったら、責められたほうがいい。
     痴漢だと、警察に駆け込まれる? それとも、先生に言いつけられるのか。
     氷室教頭は、理詰めてきっちり叱ってくるだろう。
     御影先生はさも分かったような顔で説いてくるか。いや、あの人は美奈子びいきだから、ガチギレしてくるかも……。
     などと考えていると、砂を踏む足音がして、美奈子が俺の前に回り込んだ。

    「ひどいよ、謝ってよ!」

     美奈子は涙を払うと、俺を睨んだ。

    「……………」

     ――嫌だ。
     俺はそっぽを向く。すると美奈子は少しトーンダウンし、モジモジし始めた。

    「そりゃ、風真くんが私のこと好きなのは、知ってたけど……」
    「知ってたのかよ!?」
    「でも、言ってくれないから……。勘違いだったら、バカみたいだし。それなのにこんな突然、ひどいよ!」

     自分の気持ちがバレていたのも、いや伝わっていないほうがおかしいかもしれないが、面と向かって言われると動揺するというか……。
     俺が混乱しているうちに、美奈子の話はわけのわからない方向へ流れていく。

    「女子には準備が必要なんだよ! 歯磨きもしたいし、シャワーも浴びたいし。下着だって……。そういうの考えてくれないで、いきなりなんて! 無神経過ぎる! ――謝って!」
    「えっ」

     それはつまり、美奈子だって満更ではなく。そのうえ、俺を受け入れてくれるということなのだろうか。

    「謝ってよ!」
    「――ごめん」

     考えがまとまらない俺は、三回叱られて、つい謝ってしまった。
     美奈子は満足気に頷くと、次に俺を上目遣いで見詰めた。

    「――今度、『日曜、暇か?』って誘ってくれたら、覚悟を決めておくね」
    「!」




     世界は俺が考えていたより、ずっとイージーでハッピーにできていたらしい。



     ~ 終 ~

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