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    kouyamaki

    2020年5月、自粛で漫画を読み『秘密』の薪さんと青木にはまる。現在は書いてみたものを投下中。2次創作は素人。

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    kouyamaki

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    pixivに上げていた読み切りシリーズ。鈴誕に寄せて?あくまでバディな鈴青を書いてみたかったが挫折。カップルにならない鈴薪青。文脈は適当。薪室長、鈴木副室長、駆け出しの青木で。

    #秘密
    secrets
    #薪剛
    Maki Tsuyoshi
    #鈴木克洋
    katsuyoSuzuki
    #青木一行
    Aoki Ikkou
    #青薪
    AoMaki
    #鈴薪
    suzukiSalary
    #鈴薪青
    suzuki
    #腐向け
    Rot

    読み切り #9 Cigarette Break「青木、火くれる?」
     喫煙所に顔を出した鈴木が、無遠慮にタバコを咥えた口元を近づけてくる。
     こういう時、イケメンは罪作りだな。
     青木はぼんやり思う。だが、青木も何となく鈴木とのこのキスには慣れてしまった。
     青木はすっと鈴木に呼吸を合わせる。
     鈴木のチェ・ブランコの先に点った火。
     整った鼻筋にほんの一瞬差した赤。
     ゆったりと、鈴木の最初の一吸いの香りが広がる。僅かに紅茶のような香ばしさ。
     疲れのせいか少々気怠げな様子でも、イケメンはイケメン。
     なんだか悔しい。
     これじゃ、薪さんが苦労するわけだ。
     青木も煙りを吐いて、室長に心から同情する。
     薪が大学時代からの親友にして現在は自分の右腕である、副室長の鈴木に微妙な好意を持っているのは、色恋沙汰に疎い青木にもわかる。
     
     青木はもちろん、鈴木も習慣的な喫煙者ではない。
     それこそ今日のように、少しでも強制的に脳と体を休ませたい時に1~2本吸う。
     自分達が挙げた証拠で、慌ただしくSITを強制捜査に送り出した。現地到着と突入開始まで、第9の捜査官達は全員、交替で強制的に休息を取っている。
     今回は岡部がSITに同行しており、突入の際は後衛の配置につく。
     政治も絡む事件だ。薪の命令を必ず遂行し、突入の結末を確認できる者を現場に送り込む必要があった。
     岡部はSITやSPも一目置く猛者だ。それでも、岡部やSITに100%の安全を保証してやれないもどかしさ。
     青木でも1本吸いたくなる。
     待機中の自分達が次にスキャンするのは、射殺された容疑者や、犠牲になったSIT隊員の脳かもしれないのだ。

     青木の手から灰皿にゆっくりと散る灰を、鈴木は目で追う。
     火の点いたタバコを燃え尽きるまで手に持っているだけでいい。火が点いている間は他に何もできないし、何もするな。青木にそう教えたのは鈴木だ。
     青木は体力も集中力もあるが、休息の取り方は色々と教えておかねばならない。薪の綺麗な顔に引っかかってくれたおかげで第9が拾った、これでも優秀な人材だ。
     それこそ本人は無自覚だが、薪への憧れというより薪に恋して、青木は第9にやってきた。
     「オレ…ソンケーしてましたから、ずっと。」
     初対面の薪を真っ直ぐに見つめた青木は、鈴木も同席していたというのに、臆面もなく言い切った。
     鈴木はそんな青木の横顔をまじまじと観察し、次に薪の横顔に呟いた。
     「…たまにはお前の美貌も役に立つんだな、薪。」
     薪は青木の挨拶に面食らって、真っ赤になって硬直していた。
     少々乱れた前髪をかきあげる青木を見やり、鈴木は深く煙を吸う。
     ちょっと妬けるな。
     青木は人柄も容姿も、間違いなく薪の好みだ。 
     自分より背が高いのは、はっきり言って腹が立つ。
     温厚で素直な性格。頭もそこそこ使える。いざとなれば肝は据わっているし、大胆で行動力もある。
     青木の天然ぶりに圧倒されて、薪は日々どぎまぎしている。薪が青木にはすぐに手が出てしまうのは、その恥ずかしさの裏返しだ。
     「必ずオレが後ろについて支えますから。」
     真正面からそんなことを言われて、まあ、全く絆されるなというのも無理だろう。
     それに。
     青木はそのうち化ける。鈴木はそう思っている。もちろん、まだまだ薪や自分の隣に並び立てる男ではない。それまではせいぜい、自分が鍛えてやろうと思う鈴木は大人の男だ。
     薪が手駒に使える男、薪の味方になる男は多いに越したことはない。

     「…突入の開始が少し早まりそうだ。」
     喫煙所に入ってきたのは薪だった。これまた少々疲れた様子で、襟元を軽く緩める。
     スマートフォンで呼び出さずにわざわざ顔を出したのは、自分も一服したいからだろう。
     鈴木は無言で薪に一本渡す。
     あ。
     逃げ損ねた青木は、その場面に居合わせるハメになった。
     シガーキス。
     青木に背を向け、長身を折り曲げて、鈴木は薪の顔を覗き込む。
     鈴木の逞しい背中越しに見ると、2人はキスしているようにしか見えない。
     青木は動けない。
     さっき自分も鈴木とキスしたが、いま目の前で繰り広げられる大人のキスは、自分のそれとは全く違う。
     鈴木の背中が膨らむ。そして2人から満足げな吐息のように、煙りが広がった。
     濃厚に漂う大人の甘さ。
     青木は自分の欲望に気づいてしまった。
     キスがしたい。
     …誰と?
     
     「どうした青木?」
     動けない青木に声をかけたのは薪だった。
     鈴木の鉄壁のセキュリティチェックを突破して、鈴木が気を許す相手には、薪は基本的に無防備だ。自分が鈴木に甘えているところを、青木に見られても平気なのである。
     薪の白い頬が、疲れた表情からほんの少し生気を取り戻している。襟元からのぞく白い喉。
     大きく真っ直ぐな琥珀の瞳は、どんな難事件でも真実を見極める。
     その瞳が今は青木を捉えている。
     琥珀の瞳から逃れようとした青木の視線は、薪の白い首筋に釘付けになる。
     鈴木のキスで目覚めたばかりの、絶世の美人。
     薪は美しい。
     青木はみるみる赤くなった。
     にやりと青木を振り返る鈴木は余裕をかましている。確信犯だ。

     「さ、先に戻ってます!」
     燃え殻を灰皿にねじ込み、青木が転がり出たスライドドアがばたん、と閉まった。
     「…どうしたんだあいつ?」
     薪は優雅に灰を灰皿に落とす。
     「ま、若いし。色々あるんだろ。」
     鈴木はキュッと火をもみ消す。
     「…行くのか?」
     「ああ。」
     ほんの一瞬拗ねた瞳の薪を置いて、鈴木は素早く青木を追う。
     「青木、ちょっと待てよ。」
     「何ですか!お2人でいちゃいちゃしてればいいじゃないですか!!!」
     振り返った青木は、真っ赤な顔で涙目になりそうである。
     きそうになったのか。
     鈴木は青木に心から同情する。
     まあ、薪と連むようになった10代終わりの鈴木も、何度となくきそうになったのでわかる。青木が可愛くてついついからかってしまったが、若い男のその辺を責めるのは可哀想だ。
     「わかったわかった!からかって悪かった。」
     鈴木が薪を置いて自分を追ってきてくれたのが、青木は実はちょっと嬉しい。
     実際に第9に配属されてみると、青木は薪より、直接一から指導してくれる鈴木に強い影響を受けている。そして、あの世代から長官か総監に登り詰めるのは、薪ではなく鈴木、と噂される理由を理解しつつある。
     今回も第9が主導権を握るために暗躍しつつ、関係部署を上手く使って、結果的に捜査を強力に押し進めたのは鈴木だ。

     デカい男2人の長い足に、後ろから薪が追いついてきた。
     「岡部から僕の私用のiPhoneに連絡がきた。」
     鈴木と青木の顔色がさっと変わる。
     薪の私用の連絡先を知るのは、翻って薪が仕事で絶対の信頼を置いている人間だけだ。つまり鈴木と岡部である。
     「青木、お前の私用の連絡先を教えろ。」
     「え?」
     薪の求めに青木は驚く。
     青木が薪の私用の連絡先を今まで知らされていなかったのは、悔しいが仕方のないことだった。
     MRI捜査は副産物で時に思いも寄らない秘密を暴き出す。想像以上に政治が絡む世界だ。まだ駆け出しの青木がそれに巻き込まれても戦力にならない。
     何となく声を潜めて、青木は自分の電話番号とメールアドレスを薪に伝える。
     女性にそれを囁くよりずっとドキドキする。
     すぐに薪からメールが届く。空かと思ったが文面があった。
     『あまりに長すぎる休息はかえって苦痛である』
     「お前は万が一の際のバックアップだ。誰もお前が僕とそこまで繋がっているとは思わないだろうからな。」
     薪はニヤリとする。

     「青木。いいのか?」
     鈴木がさり気なく確認する。
     薪と共にこの一歩を踏み出すことは、青木のキャリアを、人生を大きく左右するかもしれない。だが、そういう鈴木自身は楽しそうに笑みを浮かべている。
     「はい!」
     青木の気持ちの良い返事に迷いは無かった。
     惹かれているのだ。薪に。鈴木に。
     2人について行きたい。その先にあるものを見てみたい。2人と同じものを見てみたい。
     「戻りましょう!」
     踵を翻して青木は先に立つ。
     広いが、まだ頼りがいがあるとまでは言えない背中。薪と鈴木は顔を見合わせて小さく笑うと、青木の後を追った。
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    kouyamaki

    DONEpixivに上げた「青木の選択」シリーズの続き。
    #10「悪行」

    悪戯の後、薪さんと青木がくっつくまでの話。他のシリーズとは別軸の2人です。

    季節感はフィクションです。ネモフィラと球根生産のチューリップがまだ同時に咲いているような、4月下旬~5月上旬のイメージです。

    このシリーズはあと1~2回で完結の予定です。最後まで書くのが目標です。お付き合い頂ければ幸いです。
    #10「悪行」光が残した絵のキリンのガントリークレーンは、5基になっていた。









     去年の暑い夏は光を苦しめた。暑くなる前に海で眠らせてやりたいと青木の母は言う。
     どんたくが終わってしまえば福岡は初夏だ。どんどん気温が上がる。梅雨に入れば湿気も重くうっとおしい。
     49日までまだあったが、青木も舞も散骨に賛成した。49日といっても、生前の光の希望で宗教的な葬儀は一切執り行っていない。青木家3人と薪で小さな骨を拾った。
     船を出してくれる葬儀社や、付き合いのある生花問屋の伝手で、青木の母は大量のチューリップの花びらを用意することにした。球根生産のための、花摘みの最後の季節だったのだ。
     かつて散華と名うって、100万枚のチューリップの花びらをヘリから地上に撒いてみせた前衛いけばな作家がいた。
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    kouyamaki

    DONEpixivに上げた「青木の選択」シリーズの続き。
    #9「悪計」

    悪戯の後、薪さんと青木がくっつくまでの話。他のシリーズとは別軸の2人です。

    福岡の土地勘無しで色々フィクションで書いています。おかしな点が多々あると思います。お目こぼし頂ければ幸いです。

    この話では季節はまだ冬です。

    このシリーズはあと1~2回で完結の予定です。お付き合い頂ければ幸いです。
    #9「悪計」 青木はクリスマス時期に取った休みを、予定通り消化しきれなかった。
     例年12月下旬に固まる予算案の決定がずれ込み、年越しとなった。来年度中は諦めていた分の研究計画予算をどさくさに紛れて計上すべく、青木は休みを切り上げて霞が関へ向かった。
     ここにきて、新しい省庁の設置が見込まれている。そこに新たな権益を確保すべく、警察庁もこどもに関する行政に急に積極的な姿勢を見せている。
     利用できるものは利用する。
     警察官僚出身の政治家へのレクチャーは、秋にミドリのもとを訪れた件の児童精神科医が協力してくれた。彼の計画への参画もほぼ確実となった。
     立場上、青木はミドリやつばき園の子供達には直接何もできない。せめてできるのは、子供達のその後を長期に渡って追う、この新たな研究計画を軌道に乗せることだ。
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