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    shigxx

    目(さかん)です。絵をポンポンあげます。
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    shigxx

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    現パロ本家分家ちょぎくにの二人が学園を卒業する前のお話です。ずっと国広視点。
    プロットとして書いたものなので雑です…いつか絵で描けたらいいなぁ😌

    【3年生冬休みのプロット】
    今年は実家に帰らず寮で皆や長義と年を越した。…姫はじめもした。卒業したら俺たちはどうなるのだろうか。あまり考えたくない。……長義はうんと優しくしてくれる。それがつらい。きっとこうして二人でいれるのは今だけなのだろう。どうして俺たちはこんな形で生まれてきてしまったのだろうか。



    【駆け落ち】
    長義は日に日に弱っていった。
    食もどんどん細くなり最近は話しかけてもどこか上の空で見てるこちらが痛々しくてたまらない。心配で心配で、俺は長義の前に跪いて、俺に出来ることはないか、あんたのためなら何でもする、と言った。長義は緩慢な動作でこちらを振り向きどこか虚ろな目で、なら一生俺のそばにいてくれ、と言った。その頬には一筋の涙が流れていた。俺たちは男同士で、親戚同士で、同じ山姥切の名でも本家は本家の仕来り、分家には分家の仕来りがある。そしてそれは恐らく分家の俺よりも本家の長義の方が俄然厳しい。この名前がある限り、俺たちは名に縛られ、満足に動くことも出来ない。だがそれがどうしたというのだ。なら名を捨てればいい。逃げてしまえばいい。ここは彼の家でも俺の家でもない。ならここから新しく始めればいい。
    彼の白い頬を滑る涙を拭う。そして彼の手を取って俺はこう言った。
    「駆け落ちしよう」と。
    俺は長義の手を引いて走り出した。最寄りの駅まで行って適当な切符を買って電車に乗り込む。平日の夜、車内には疲れきった様子のサラリーマンがぽつぽつといるだけでとても閑散としていた。手を繋いだまま乗り込んだ車両の端まで行って長義と並んで座った。どこまで行こうかなんて考えていない。出来るだけ遠くへ行けたらそれでいいと思っていた。チラリと長義を見る。結局彼に有無も言わせず連れてきてしまった。今更ながらに、こんなこと望んでないのでは……と無鉄砲な自分の行為を恥じた。しかし予想に反して長義の表情は穏やかで、むしろここ数日の中で一番晴れた顔をしていた。あまり見つめすぎたのか長義が俺の視線に気付いてこちらを振り返る。優しく微笑んで、「お前がこんなことをするとは思わなかった」なんて言われた。久しぶりに見た彼の笑顔に思わず胸が高鳴ってしまう。そして彼は「少し眠いから肩貸してくれ」と俺の肩に頭を預けて瞼を閉じてしまった。程なくしてすーすーと眠りについた彼の頭を手を繋いでない方の手でそっと撫でる。幸せだと思った。この距離を誰にも譲りたくないと思った。きっと彼はずっと眠れていなかったのだろう。長義を守りたい。嫌なことや悪いことから遠ざけて幸せになってほしいと切に思う。それを出来るのが俺であったらいいのに。
    ガタガタと揺れる電車が徐々に速度を落とす。半分眠っていたところへ「次は終点、終点○○」のアナウンスがかかる。眠い目を擦り隣で眠っている長義を起こして電車を降りる。降りた先は自分たちの学寮がある場所とは打って変わって高いビルの立ち並ぶいわゆる都会というやつだった。夜半にも関わらずあちこちがライトアップされていて幻想的な雰囲気だ。どこに行けばいいか迷っていると長義は繋いだままだった手をぐいと引っ張って何も言わず歩き出した。
    「お、おいどこへ」
    「眠ったら腹が減った。飯食うぞ」
    「…!ああ!」
    居酒屋が立ち並ぶ駅前で適当に入りやすそうなレストランを探す。往来の多い中男同士で手を繋いでるのは少し恥ずかしかったが長義は離してくれなかった。逸れるとダメだろ、と言われると何も返せない。でも本当は手を繋いでくれるのは嬉しかった。
    「ここにしよう」そう言って彼がひとつの店の前で立ち止まる。どうやらイタリアンのようだった。うん、外さなさそうだ。早速店内に入って席に案内されメニューを広げる。さすがに時間が時間なだけに少し値の張るディナーしかないがそこに文句は言っていられない。二人で一番手頃なコースを選んで注文をする。注文の際にワインの類を勧められたが、あくまでも未成年の自分たちが飲むわけにもいかないので丁重にお断りした。暫くして机に料理が運ばれてくる。即席で決めた店とはいえさすが長義といったところか。料理はどれもこれも舌鼓を打つ美味さであっという間に平らげてしまった。最近食の細かった長義も少し心配していたがそれも杞憂だったらしく難なく平らげていた。
    「なかなか美味しかったね」
    「ああ、あんたが選択は間違ってなかったな」
    「当たり前だな。……代金だが、俺に払わせてくれないかな」
    「そんな、悪い。自分の分は自分で払う」
    「いやね、幼稚な理由なのだけど、この家から送られてくる金を自分のためだけに使うのが癪なんだ。だからお前に……いや、すまない。自分勝手すぎた。忘れてくれ」
    「……ご馳走様でした、長義」
    「え?」
    「奢ってくれるんだろう?今日はあんたに甘えたい気分なんだ」
    「お、まえ……!クソ……いつか絶対自分の金で好きなものでもなんでも買ってやる!」
    「ふふ」
    店を出た。特にやることもないのでブラブラと街を散策することにした。長義は顔が良いので途中何人かの女に声をかけられることもあったが「悪いね、俺はこいつでもう手一杯なんだ」と繋いだ手を堂々と見せつけるものだから勘弁してほしかった。フラフラと店やデパートの中を歩いたりしてるうちにいつの間にやらいわゆるいかがわしい通りに来ていたようで見上げるとあちこちにやらしいネオンがピカピカと光っていた。今日はもう帰るつもりは初めからなかった。だから、そう、ある意味必然的にそうなる。
    「…行こっか」
    「…うん」
    長義の少し緊張した声にこちらも緊張した返事を返してしまった。あの日から散々お互いの体を暴いてきたというのに今更こんなことで緊張するなんておかしくて笑った。


    翌朝俺たちがホテルから出ると黒い高級車がホテルの前に停まっていた。中には山姥切本家の現長である長義の祖母と父親が乗っているのが見える。長義は前に進む。俺は呼び止めようとしたが黒い服を着た大男に取り押さえられ、長義を止めることは叶わなかった。
    「分家の子供がうちの子を誑かしたのか。なんと卑しい。」
    長義の祖母がそう言う。しかし長義は静かにこう言った。
    「俺が誘ったんだ。別に赤の他人と不貞をしたわけじゃないんだから誰も公に言わなければ名に傷がつくわけでもないと思うけど?」
    と。祖母と父は軽蔑の眼差しで長義を見やる。長義はそんな目を受けても何処吹く風だ。
    「安心しなよ。あいつにはもちろん口止めもしている。道中何かあったら困るから家まで車で送ってやるべきだと思うけどね」
    その言葉に渋々といった具合で俺の親を電話越しに散々脅して呼び出させ、数分後に来た車に俺は押し込まれ帰された。
    あとから聞いた話だが、あの後長義は押し込まれた車内で「卒業式前になんてことを仕出かしてくれるんだ」や「寄りにもよってあんな卑しい子共と」など散々言われたらしい。挙句の果てには「卒業式までは家にいろ。アレと会うことは許さない」と言われていたそうだ。
    親の車に乗せられた俺はみっともなく泣いていた。長義を守れなかった。連れていかれてしまった。きっと彼はいずれこうなることを分かっていた。俺はなんて馬鹿なことをしたんだろう。彼は大丈夫だろうか。心配で心配で涙が溢れ出る。そんな俺を両親は何も言わず見守っていた。俺の隣に座った小さい方の兄弟は俺の背中をさすって慰めてくれていた。きっと大丈夫だよ。また会えるよと。


    そして卒業式当日。式場には共に過した学友たちやその保護者と先生が折り目正しく規律正しく並べられた椅子に鎮座していた。振り返れば俺の両親と共に堀川の兄弟も出席していた。小さい方兄弟と目が合って軽く手を振ってくれた。ほっと微笑む。周りを見渡すと少し離れた隣のクラスの席の中に長義の姿があった。背筋をぴんと伸ばして、真っ直ぐ式典の方を見つめるその姿はまるで研ぎ澄まされた刀のように美しい。あの日、ホテルの前で別れてから長義は寮に帰ってこなくなった。おそらく本家の屋敷に軟禁されたのだろう。目立った怪我などは見えないが、何もされなかったか心配になる。声をかけたかったがさすがにそんな状況ではないし、そうでなくても近くに彼の親族が来ているはずだ。言葉を交わすのは無理だろう。
    式が始まった。卒業証書授与式だ。先生に呼ばれて生徒が大きく返事をして祭壇を上がっていく。俺も名を呼ばれ証書を授与される。俺のクラス後は長義のクラスだ。同じように名を呼ばれ祭壇を上がる。戻ってくる時は俺の隣の通路を通って自分の席に戻る。やがて長義の番が来た。はい、と彼の声が式場に広がる。久しぶりに聞いた。何故だか胸が苦しくて泣きそうになった。証書を受理した長義は階段を降りて俺の隣の通路を歩いてくる。かつりかつり。そして俺の隣に来た時彼は小さく「あとで、あの教室で」と言って去っていった。
    全ての式が終わり、教室へ移動して最後の別れの挨拶を各々する。自由時間を設けられ皆はそれぞれアルバムの最後のページに寄せ書きをしあっていた。俺は程々にして輪を抜け出し、長義が示したあの教室へ向かう。鍵は空いていた。ガラリと戸を開き、窓際に経つ人物へと視線をやる。開け放たれた窓からまだ寒い風がさわさわと彼の銀の髪とカーテンを揺らす。
    「長義…」
    「…久しぶり国広。…おいで」
    「ッ……」
    腕を広げる長義になりふり構わず抱きつきに行った。
    「ちょうぎっ……長義っ……!おれ…っ」
    ごめんなさい、まもれなかった、なにもできなかった。そう言いながら俺はわんわんと泣いた。長義は強く抱き締めながら、お前のせいじゃない、お前は何も悪くないんだよ、と言った。ひとしきり泣いた俺の涙を拭き取って長義はキスをしてくれる。ちゅ、ちゅ、と優しく何度も啄むように、瞼にも頬にも。そして「お前に大事な話があるんだ」と言った。
    「俺はあの家を継ぐよ。だから、お前と一緒にいられなくなる」
    ごめんね。長義は穏やかにそう言った。ああ、分かっていた。分かっていた事だった。胸が苦しい。こんなことなら生まれてきたくなかった。出会わなければよかった。好きにならなければよかった。俺は言葉も出せずただひたすらに涙が流れた。
    「でも聞いてくれ国広」と彼は言葉を続けた。
    「いつか必ず俺はお前を迎えに行く。だから少しだけ待っていてくれないか。勝手なことを言っているのは分かってる。でも待っててほしい。全て終わらせてくるから。」
    「……あんたが、待ってろと言うなら、待ってる。ずっと……」
    「国広……愛してる。愛してるよ。お前以外何も要らない」
    「……俺も……俺も愛してる、長義」
    深く深くキスをした。長義が好きだ。好きで好きでたまらない。どうしてこんなに好きなんだろう。わからない。でもきっと俺は長義無しでは生きていけない。この学園を出たら俺たちは別々の道を歩む。長義が迎えに来てくれると言ったのだ。俺に出来ることはそれを信じて待つことだ。きっとどれだけの時が過ぎても彼を愛する気持ちは変わらない。俺たちは時間の許す限り寄り添いあっていた。
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