猫の日 2月22日、猫の日。テレビには、世界の可愛い猫ちゃんのホームビデオが面白おかしく流れている。
「燐音くんって猫ちゃんみたいっすよね〜」
アパートのテレビの前で、ニキはのんびりと口に出す。それを耳にした燐音はニキの膝の上に乗せていた頭を傾けてその瞳にニキを写すと、不機嫌そうに眉を寄せた。
「"ネコ"はニキだろォ?」
「え? 僕はどっちかっていうと犬っぽいねって言われること多いっすよ」
「そういうことじゃねェけど。まァいいや」
テレビではどこかのだれかさん家の猫ちゃんがキュウリにビックリして飛び跳ねている。ニキは「なはは」と呑気に笑いながらいつもの癖で燐音の髪の毛を撫で付けていた。
「一応聞いとくけど。なんで俺っちが猫ちゃんなワケ?」
「んー? 最初はツンツンしてるけど気ぃ許したらベタベタしてくる、みたいな?」
自身の頭を撫でてくるニキの手を退けるわけでもなく、されるがままに燐音はニキをじっと見上げる。
「拾った当初の"おにいさん"は猫ちゃんみたいにシャーッ! って色んなものを警戒してたっすけど、今となっちゃベタベタじゃないっすか。僕とかにさぁ?」
ニキは「なははん」と得意げに笑って燐音を見下ろしてくる。
「ハッ、俺っちが猫ちゃんでニキが飼い主ってワケ?」
「そっすよ〜。【ぼくの なまえは あまぎりんね です】って書かれた段ボールに入ってた燐音くんを拾って早ウン年っす」
くすくすと笑うニキは楽しげに目を細める。燐音も笑みを深めると自身の頭を撫でる彼の手を取って、薬指に光るリングへと口付ける。
「拾った猫ちゃんがまさかテメェの旦那さんになるなんて、14歳の可愛い可愛いニキちゃんは思ってなかっただろうなァ」
「たぶん17歳だった猫ちゃんも、拾ってくれた子をお嫁さんにするなんて思ってなかったっすよ」
「そう? 猫ちゃんは一目惚れだったかもしンねェよ」
そのままニキの指先へとキスを送るとかぷりと甘噛みしてくる。そのくすぐったさにニキが小さく身動ぐと燐音は満足げに笑って今度は手の甲に唇を押し付けて、すりと頬を寄せてくる。
「なは、随分と甘えんぼうになっちゃったっすね?」
「飼い主のセキニンだろォ? ほら、甘えたな旦那さんを可愛がってみろよ」
挑発的に見上げてくる瞳を見つめ返せば自然と視線が絡み合う。それが合図だと言わんばかりに燐音が瞳を伏せると、ニキは頬をじんわりと染めた。おずおずと燐音の頬に手を添え、ゆっくりと顔を寄せていく。
そこから先は2人だけの水入らずの時間。結局、ドロドロに甘やかされたのは飼い主か猫ちゃんか。どうでもいいと言うように、テレビの中の猫が欠伸をした。