ナレアイ「なんやリコリス、さっきから緊張でもしとんか?」
「僕?」
神辰がざっくばらんに掛けた声に、ソファの隣に座るリコリスは少し驚いた顔をしてモノクルを磨く手を止めた。
「さぁ、特に自覚はないけれど、君はどうしてそう思ったのかな? どういうところが君にはそう見えたんだろう、神辰J威弦Ⅲ世? 参考までに聞かせてもらえると嬉しいのだけれど」
「相変わらず一つ言うたら十も二十も返すヤツやな……」
呆れて肩を竦めながら、神辰はこの楽屋に入ってからのことを思い出す。彼よりよほど騒がしい連中が多いので、あまり目立ってはいなかったけれど。
「例えばさっきからモノクル弄ってるフリしてずーっと周り見てるやろ。ほんで目は落ち着かん割に、ここ座ってからいっこも立ち歩かへんし。この席ええよな、扉も鏡もよぉ見えて。あとはまぁ……お兄やんの勘?」
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