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    5210tiya

    ちょっと注意な絵やねたばれが心配な絵を置いてます。

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    5210tiya

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    博物館で見た幻
    (カルデアに山南さんが来ていない世界線です。邪馬台国までにかなり出来上がっている南土です。とても雰囲気小説です)

    ##南土

    これはとあるカルデア。

    今回聖杯が博物館にかざられているということでマスター含めサーヴァント達は博物館を探っていた。その中には土方もいた。
    隣ではしゃいでいる沖田を尻目に土方はゆっくりと歩みを進めていた。
    と、土方はある展示物が目に入りそこから目が離せなくなった。見覚えのあるふさげた埴輪。それはついこの前に戦いがあった邪馬台国の出土品だった。
    「山南…」
    いつもすれ違ってばかりだったが邪馬台国で最後にお互いの思いを打ち明けられたことを思い出し土方はふっ…と気を緩めた。
    そんなことを思いながらガラス越しに赤い手袋が触れたその瞬間、突然しん…と音が無くなった。
    気づけば周りは夜のように暗くなり、騒がしかった人々も消えマスターも沖田もいなくなっていた。先程まではなんでもなかった展示品が不気味に感じられた。
    土方は異変を感じ、原因を探ろうとした。
    「…ッ…」
    その時首元に冷たさを感じた。まるで気配がしなかったがその存在は突然幽霊のように現れた。
    「動いたら斬る」
    それは厳しくはあったがどこか優しくて懐かしい声だった。
    「山南…?」
    「やはり土方くんなんだね。まさかこんなところで会うなんて…」
    山南は見慣れた隊服ではなく邪馬台国で見た服でもなく警備員の格好をしていた。

    その現代的な格好とは裏腹に刀を構えた山南と展示物を守るガラス越しに目が合う。
    目は獲物を狩る時のようなそんな鋭い瞳だった。
    「土方くん、ここで君達が何かをしようとしているのはわかっているよ。私は警備員だからね。それを阻止しなければいけないんだ」
    「ほぉ…俺を斬るっていうのか…?」
    「あぁ…抵抗するならね」
    そんな短い会話の後、首に刀を突きつけられているというのにそれを全く気にすることもなく土方は刀を抜き後ろに振り翳した。

    「なに…?」
    思いっきり後ろに向かって向けた刀は山南をすり抜け空を切っていた。
    「土方くん…君はやはり昔の仲間でも構わずそういうことをするんだね」
    山南はどこか嬉しそうにそう呟くといきなり土方の両手を自分の両手で掴み後ろのガラスに押さえつけた。

    「んん…っ…」
    山南はいきなり激しく口づけをしてきた。持っていたお互いの刀が下に落ちる音が静かな博物館に響き渡る。
    無理やりにこじ開けられた口に山南の生温かい舌が侵入してくる。
    そんな突然の事態だというのに先程までは殺そうとした相手だというのに土方は驚くほど恐れを感じなかった。むしろ胸は高鳴り目の前にいる山南の温度を感じられることが嬉しかった。
    壁に押し付けられたお互いの手を絡ませ合う。力は強いが振り解けないほどでもない。
    それはまさに愛し合う恋人の熱いキスのようだ…と土方は他人事のように思った。そして、熱に浮かされたように目の前の山南の激しいキスに応えようとしていた。
    「はぁ…っ…」
    唇と唇が名残惜しそうに離れる。もう何時間も経ったような一瞬だったようなそんな朦朧とした意識の中、山南は頬を赤らめながらもあんなキスをしたとは思えない爽やかな笑みを浮かべていた。

    「土方くんそんなに赤くなってしまって可愛らしいね」
    いつもの手を口元に持ってくるポーズで笑う山南。そこで息を整えた土方は思っていたことを口にした。

    「お前…幻だな…」
    山南は少し驚いた顔をしたが八重歯を見せて微笑んだ。
    「ははは…君にはみんなお見通しだね」
    「当たり前だ。それにこんなことする警備員がいてたまるか…」
    怒ったように言うと山南は「確かにそうだね」とまた優しげに微笑んだ。
    「そう…私はあの邪馬台国で君に会った山南だよ。あの時は君に迷惑をかけて悪かったね。そのお礼に君を驚かせたかったんだ」
    「お礼になってねぇぞ…」
    そんな何気ない会話がなんだかとてもかけがえのないものに感じたのも束の間、山南の姿がキラキラと輝き出した。
    「私はもう消えるけどまた絶対にまた会えるよね…土方くん」
    山南はとても寂しそうに噛み締めるように問いかけてきた。土方はそれに対して無言だったが山南はいつもの笑顔に戻りこう言った。
    「あと、最初に君は私を幻だと言ったね。でも、私は今確実に存在していたんだよ。きっとそれはこの邪馬台国の埴輪の縁もあるだろうけど、君が私のことを思い出してくれたからだよ」
    「阿呆が…俺はお前のことを忘れたことなんて一度もねぇよ」
    最後に土方がそう言うと山南は今にも泣きそうなそれでいて幸せな笑顔を浮かべながら闇に消えていった。

    「土方さん!!!」
    聴き慣れた高い声。気づけば展示品の前で立ち尽くした土方を沖田が下から覗き込んでいた。「どうしたんですか?ぼーっとして…?」
    先程まで目の前で話していた存在はすっかりいなくなっていた。人々が博物館を歩き回る音や声が騒々しい。
    土方は目の前の出土品を目の前にして
    「早くお前も来いよ…」
    と呟いた。
    「えっ…?埴輪ですか…!!!土方さん何言ってんですか!全く意味わかんないんですから…!」
    そんな沖田の言葉を背中に土方はまた聖杯の探索に戻るのであった。
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