Give me cigar喫煙者にますます当たりの強い世の中になってゆく。土方さんは僕の顔を覗き込んで、
「もう限界だろ」
と言ってくれる。しかし普段と違って僕のコンディションは上がらない。
「いや、もう少しなら」
「無理するてめぇを見てらんねぇんだよ」
骨ばった大きな手で頭を撫でられても、今の僕はうまく喜べない。
見た目いかにもヘビースモーカーな土方さんよりも、へらへらしている僕の方が重症ニコチン中毒なのだ。
ニコチン切れを感じてから喫煙OKの場所を探すのでは遅かった。チェーン店にも個人経営店にも貼ってある『全面禁煙』のステッカーが恨めしい。
うろうろしているうちに、大きな公園に出た。というより土方さんはここのことを念頭に入れて歩いていたようだ。
「ここなら喫煙所がある、吸っていこう」
「寒くないですか?」
「てめぇが気になるならもっと歩いてもいいが」
「いや、僕じゃなくて土方さんが」
「後であっためてくれりゃいい」
何気ない言葉の、意味を咀嚼して僕は飛び上がる。どうしてそんな熱烈なことをあっさり言うの このセクシーヒジカタ!
土方さんは僕の反応ににやりと片方の口角を上げ、「可愛い奴だな」と言う。
後で絶対、可愛いだけじゃないところを見せてやるからな。覚悟しておけよ土方歳三。