語彙力の消失美人でまつ毛長くて顔がよくて可愛くてしかもエロい。
土方さんが絡むと、俺の語彙力はいちじるしく低下する。
だって本当にエロいのだ。土方さんはまず、俺に言葉責めや焦らしを覚えさせた。いい生徒の俺がそれらを覚えて実践すると、ままならない快楽に震えるようになった。
自ら感じるために俺を変える、その手腕が既にエロい。
俺の正面で唐揚げ定食(の、沢庵)を口に運ぶ様さえエロい。白米や沢庵を食べるために薄い唇が開かれ、赤い舌を覗かせるのが…俺しか見ていないところが公衆の面前であらわになるところがエロい。
しかし、エロいとばかり言ってもいられない。このカルデアには、好色なサーヴァントも多い。熱い舌の温度や、骨ばった抱き心地を知る者が現れたら、俺は迷わず宝具を使う。
「おい、そば伸びるぞ」
土方さんは沢庵から顔を上げる。
「外であんまりエロいこと考えんなよ」
そのまま正面の俺に手を伸ばして、唇についていたコロッケの衣を取ってくれる。衣のついた指を舐める舌先がまたエロい。
こんな煽情的な姿を誰彼もが見ていいものだろうか、いやよくない。
俺はそばをすすりながら周囲をねめ回す。
「器用な奴だな…」
唐揚げをまるまる残した土方さんは、処置なしとばかりにつぶやく。
そばを汁まで完食した俺に、土方さんは呼びかける。
「今からてめぇの部屋行くぞ」
その言葉に含まれていること。
唐揚げはキッチンサーヴァントに包んでもらって、後ほど俺が部屋で平らげることになるのだろう。土方さんの偏食は、俺がいるから許されている部分もある。
二人分のトレイを持って、食器を下げる。カウンターにはエミヤがいて、
「公衆の面前でいちゃつくのもほどほどにしたまえよ」
とお袋さんみたいな小言を言う。
「こうしないと安心できないんでね」
「少しは落ち着け」
そう言うこの弓兵は、土方さんが生前どれだけ女と男から狙われ続けてきたか知らない。
「僕ぁいつだって落ち着いてますよ」
だから俺は、俺からあの人を損ねようとする者どもからあの人を守るのだ。