おばみつは箱から出たい(SS) 鎹烏が、それぞれ主人である柱の元へ飛ぶ。
『伝令!伝令!伊黒ト甘露寺ガ箱二閉ジ込メラレタ!』
「あァ!?なんだとォ」
「あら、それは大変」
「放っておきなさい」
「うむ、問題ないな!」
「わざと入ったのか」
「えっと、何の話だっけ」
「そのうち出てくるだろ」
情けないことに、二人は箱のようなものに閉じ込められてしまった。油断したわけではないのだが、如何ともしがたい状況なのは否定できない。鬼の気配などなかった。気が付けば、二人の身体は細工を組み合わせるように押し込められていた。
身動きひとつできないという訳ではないが、取り敢えず互いに離れよう、という訳にもいかない狭さ。
勿論二人ともここをどう出るかを考えている。観察してみたところ、壁の下の部分には刀の切先が入る程度、二寸程の幅の隙間はある。空気穴なのか何なのか。流石に鏑丸も通れない。
無駄な体力は使わないに限るが、壊せるか試してみた。柔らかいようでそうでない妙な感触で、あまり手応えを感じない。
静かだ。外の音が聞こえない。周りに何もないのか。身動きした時の衣擦れの音、息遣いが妙によく聞こえるし、柱ともなれば、集中すれば相手の心臓がどう動いているか分かる。
(甘露寺、脈が早いな)
(伊黒さんにバレてるわよね…)
面倒見の良い(?)宇髄、皆ああ言っていたものの様子伺いに来る。
「おいおい、随分と立派な宿だな。どうだ、出られそうか?」
「いや… 外から壊せないか。それから下に少しだけ隙間がある…」
「どこだ?ああ、これか?こりゃちょうどいい、
コレがあれば安心だな」
スス…
隙間から宇髄が何やら差し入れる。
「あら、何かしら。伊黒さん、私が取るわね」
「甘露寺、あまり動かないでくれ」
「大丈夫、私身体柔らかいの」
「それは理解しているがそういう事じゃない」
「これ何かしら」
「0.01…?コレはどう使うんだ、忍の道具か?」
元忍は思わずカッとなった。
「おい伊黒、ふざけてんのか!まさかソレが何なのか知らねぇのか!」
宇髄の怒号が聞こえる。
「甘露寺も知らねえか」
「はい、初めて見ました」
「はあ…… 無知ってのは自分も相手も守れないぞ、お前ら」
「ごめんなさい、何だか…よくわからないけれど勉強不足でした」
「誰にでも知らん事はある、勿体ぶるな」
「あーもうそんなに教えて欲しいなら説明してやるよ。その袋の中に、細長い袋状になる輪っかが入ってる。落として汚したりしないように気を付けろ。開けてみても良いが、まだ取り出すな」
「ん、なんだかフニャフニャね… ベタベタしてるわ」
「それを伊黒に付けろ」
「………どこに付けるのかしら?」
「おう、良い質問だな。お前に無くて伊黒にある物にだよ」
「私にないもの」
「言っておくが、ちゃんと用意できてから取り出せよ」
「用意?宇髄さん、何を用意…」
伊黒の方が早く気が付いた。
「おい宇髄、これは何なんだ?ここを出るのに必要な道具なんだよな?」
「いや、俺はそんなの一言も言ってねぇよ。気が効くだろ」
「話がこれっぽっちも噛み合ってない、これは何なんだと言っている」
宇髄はめんどくさくてキレた。
「そこまで説明させんじゃねえ!無知すぎるお前らに合わせてわざわざ遠回しに説明してやったんだぞ!+>%^#*#{^}^!ただし%%*~$>^$€#%}だぞ、いいな!あーもう俺も任務があるから行くぞ。アホらしい」
宇髄の丁寧なご説明に、やっと理解した。渡されたこれが何なのか。
「伊黒さん、これってもしや……何々しないと出られないって言う例の、ご都合血鬼術…」
「そんなくだらない術は存在しない。ご都合血鬼術は鬼の術ではない、アレは二次創作者共が自分達の都合の為に生み出した
甘露寺、おい、甘露寺やめろ」
「動かないで、輪っかが落ちちゃう」
「早まるな、待て触るな」
「動いちゃダメよ、伊黒さん」
〈鎹烏より〉
箱からは無事脱出
見えないため箱の中の様子は分からず
少々髪や衣服に乱れあり
詳しくは蛇柱と恋柱からの報告待ち