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    claclaclalan

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    2023.5 スパコミ内超気焔万丈で無料配布していた甘凌。アプリの某記憶が元の話です。

    #甘凌
    ganLing

    カシラの拠り所 逃げ出した宴会場に戻る羽目になったのは、夜も更けて虫の声以外黙る刻だった。眉をひそめた男が訪ねて頭を垂れるのだ。曰く、カシラを連れ帰ってほしい、と。酒のせいで頭が痛み、やっと休める頃にそう宣った甘寧の部下を無遠慮に睨み付けた。顔を青くしながらも奴は怯まず、お願いいたします、と静かに告げた。
     こいつは錦帆賊からの手下らしい。度胸があるのも頷ける。訪問内容や時間には大いに不満があるものの、この男の態度は気に入った。苛立ちは全部あいつにぶつけてやろう。
     外套を羽織って並んで歩く。隣の男は疲れた表情を見せつつ、しっかりとした足取りで見知った城の宴会場へ誘導した。こいつもそれなりに飲まされたであろうに、飲んだくれの右腕ってのも大変だな。そう思うと同情心からお喋りでもしてやりたくなった。
    「あいつが深酒すんの、昔からなのかい?」
    「賊の頃から酒盛りは好きでやしたねえ。けど、殿を前にしてもあれだけ開けっ広げにできるのは、さすが頭です」
    「殿のご厚意だろ。本当に無礼講なんだからさ」
    「そうでやしたね。改めてここは良い国です」
     甘寧と同じことを言うので思わず笑う。外から来た奴らにそう思わせることが出来る程、孫権様のお人柄が良いってことだ。あの方が認められるだけで嬉しくなるのだから、忠実な臣下だと自惚れてしまう。
    「でも、兄貴は今と昔じゃ決定的に違いますよ」
     呼称が変わったので横顔を覗き見ると、過去を懐かしむように目を細めている。前の方が良かったのかと尋ねると、ゆっくりと頭を振った。
    「兄貴は昔っから荒れくれ共をまとめる統率力がありやした。本人は柄じゃねえと言って認めませんけど、俺はあの人が国を興してもおかしくなかったと思っています」
     男が先程よりも歩を緩めて踏み出す。真夜中の昔話なんざ付き合う義理もないが、少し興味が湧いたので、黙ってその速度に従った。
    「粗暴に見えて細かいことに気が付き、よく心配りしてくれやす。兄貴が発破をかけると皆、みるみる力が湧きます」
    「胸焼けするっつの」
     あいつへの褒め言葉を浴びる趣味はないので、これ以上はよせという意味を込めたが、男は快活に笑って流しやがった。晴れやかかつ強引に突き進むとこ、甘寧そっくりだ。お手上げ。俺のため息を続行許可として受け取ったのか、男が引き続きのんびり歩きながら口を開く。
    「兄貴を慕う野郎共が集まって河賊となりやした。俺はありがたくもその頃から右腕としてお供させてもらってます。けどね、凌将軍。兄貴にゃできねえこともあったんですよ」
    「俺は結構思いつくけど。慇懃な挨拶、礼儀、軍紀に従うこと、執務、っつうかじっとしてること、それから」
    「勘弁して下せえ。上長への説教なんざ聞くに堪えねえ」
     おどけて両手を挙げて降参する様子が可笑しく、胸がすっとした。こっちこそむず痒くて倒れそうだったんだ。仕返しには丁度いい。出てもいない汗を手で拭うふりをしてから男がまた前を向く。
    「人を頼れなかったんです。俺らのことは信じてくれていたと思いますが、そうですねえ……端的に言うと甘えられなかった」
     あんな凶悪な顔した筋骨隆々の男が甘える姿なんて誰が見たいんだ。そういう話ではないことくらい分かっているのに、つい反射的に鳥肌が立つ。
    「黄祖は勿論ですが、蘇飛様にもどこか一線引いて接してやしたね」
    「あんた本当に度胸あるぜ」
     よく俺の前でそいつらの名前を出したよな。またしても反射的に殺気立つと、不敬をお詫びします、と簡単に言い放って拱手してきた。まったく、あいつへのツケが溜まる一方だ。
    「兄貴が決断するときはいつも一人でした。本心を隠すのが巧くて、立ち入れなかった。色んな覚悟や業を背負ってここに来たはずです」
    「頭空っぽで気負いもなく降りましたなんつってたらとっくに殺してるぜ」
    「はい。ですから、兄貴はこうやって認められて、今は孫呉に馴染んでます」
     甘寧の不遜な態度はさておき、あいつの戦功は並々ならぬ動きによるものだ。こいつの心酔っぷりには辟易するが、孫呉に甘寧ありと言わしめる実力を間近で見てきた身としては認めざるをえない。面白くない気持ちがそのまま声に乗る。
    「で? 長々お頭自慢はもう聞き飽きたっての。何が言いたいんだあんたは」
    「感謝を伝えたいんですよ。ここに来てから兄貴はぐっと柔らかくなりました。殿や呂蒙様、そして凌将軍。こんなに多くの方に愛されて心許せる兄貴を見られて、嬉しく思ってます。本当にありがとうございやす」
    「――どこから突っ込めばいいやら」
     体が痒くてたまらないって。粟立つ肌を宥める内に宴会場に辿り着いた。
     充満した酒の匂いに顔が歪む。見渡すと孫権様はもういらっしゃらず、いつも残されて標的にされる呂蒙さんも見えなかった。転がっているのは若い将ばかりだ。そいつらを踏まないように避けて進み、卓に突っ伏して寝ている馬鹿の頭を小突く。右腕の男が慌てて声をかけた。
    「兄貴、帰りやしょう。明日に響きます」
     甘寧は全く反応しない。泥酔しているのか熟睡しているのか知らないが、この凌公績様がわざわざ出向いてやったんだ、引き摺ってでも帰してやるっつーの。俺の念が通じたのか、また男は焦ったように甘寧を揺する。
    「凌将軍が来てくれやしたよ」
     その一言で、身動ぎしなかった男がむくっと起き上がった。急に動くので思わず身を引くと、すぐに手首を掴まれる。下から睨め上げてくる焦点の合わない目つきが恐ろしい。
    「凌統」
     名前を呼ばれ、がばっと抱き着かれた。首に回った腕が重たくて仕方ない。将軍がここまで自堕落になっちまって、心底呆れる。それなのにさっき妙な話を聞かされたせいで、その背をやけに優しく叩いてしまった。
    「帰るぜ」
     すぐ近くにある耳にそう囁くと、へへっという締まりのない声が返ってきた。これだけ酔った奴に何言っても無駄だ。文句や愚痴は明日たっぷり聞かせてやろう。このままでは到底歩けないので一旦首の手を外し、片腕だけを回させた。
     目だけで合図すると、右腕の男は丁寧に拱手を施して頭を下げたっきりだった。一緒には来ないのか。身振りや弁え方に感心して、その頭を撫で回してやった。

     寄りかかる体を何度か支え直しながらこいつの邸に向かう。少し歩けば酔いも醒めるだろう。熱い肌が触れると体温が上がってきて、羽織は要らなかったなとぼんやり考えた。覚束ない足取りに合わせて速度を落としてやっているというのに、甘寧がよろけて引っ張られそうになるのを踏ん張って留まる。
    「だから飲み過ぎるなって……。って、心許しすぎだろ、これ」
     紆余曲折色々あって和解したとはいえ、親仇だと付け狙った相手によくもまぁ。呆れを越して笑えて来た。
     こんな姿を部下に見られちゃこいつの面子丸潰れじゃないか。構いやしないから泥酔してんだろうけど、憧憬が失望に勝手に変わる瞬間なんざ見たくもない。
     石畳に腰かけさせ、外套を脱いで頭からかけてやる。ぽつぽつと続く灯篭の灯りくらいじゃ人は特定できないだろう。改めて肩に腕を回させていると、被った衣の中に頭を引っ張られた。外気に晒されているはずなのに、触れた唇は熱かった。至近距離で睨んでも効果がないことは分かっているが、不満をぶつけずにはいられない。
    「……酒くさ」
    「お前は相変わらずいい匂いがする」
     へらへらして笑う顔に、力が抜けそうになった。口付ける元気がある奴に配慮は不要だろうと大きく足を運ぶ。跳ねるように重心を整えながら甘寧が付いてくるのを、触れた体で感じ取った。
     直接こいつの賊時代を見たことがないので、あの男の感動は全く共感できない。今の緩みっぷりときたら、不安さえ覚える程だ。まぁ、こういう所が殿や呂蒙さんの庇護欲を煽ったのかもしれないが、俺には持ち得ない感情だな。
     甘寧が喉で笑いながら肩にしがみついてくる。取り憑かれたように重たい。
    「凌統、早ぇって。そんなに俺んとこ来てぇのかよ」
    「邸にぶち込んだら帰るっつの。つうか、可愛い部下もちゃんとお迎えに来てたろ。あいつに寄りかかれば良かったでしょうに」
    「なんかよー。あいつにゃ寄りかかれねぇっつうか、恰好つけたくなんだよな」
     既に散々ろくでもない姿を見せてないか。その上であいつはあれだけ心を寄せているのだから、無駄な矜持だな。などと思ったがわざわざ言わなかった。こいつが他者と築く関係に欠片も興味ない。心底どうでもいい。
    「あんたの兄気取りなんざ知るかっつの。こっちは床に着く直前に頼み込まれて虫の居所が悪いんだ」
     布の下から視線を感じながらひたすら直進する。途中までは悪くない気分だった筈なのに、何だってこんなに苛々するんだろう。地を踏むたびに主張する鈴の音も耳につく。今更ながら送迎なんて引き受けたことを後悔した。あの男の実直さと愛嬌に騙されるとは、俺もまだまだ未熟者だ。
     体を預けながら黙って俺の足取りに着いてくる甘寧は、ずっと何かを言いたそうに口を開閉させていた。それを無視して邸に向かう。また頭が痛くなってきた。入り口まで送れば十分だろう。なんて親切なんだろうか。この恩は十倍くらいにして返してもらわないと気が済まない。
     ようやく目的地に着いて、首に絡みついた腕を引き剥がそうとしたが、酔っ払いの癖に剛力で敵わなかった。
    「おい、放せっての。それとも阿寧はまだ寝かしつけが必要なのかい?」
    「あー、それだ、そうしてくれ」
    「はっ?」
     皮肉十割不機嫌増しで言ってやった嫌味を真に受けられ、ひっくり返った声が出た。腕が外れて、頭に被った外套をそのままに甘寧が見つめてくる。
    「すげえ寂しいから添い寝してくんね?」
     酔っ払った男の据わっている目つきはほぼ恫喝で、そんな顔で甘えているのかと思うと恐ろしく不気味だ。それなのに顔に熱が集まる。さっき口付けられたせいで俺もまた酒気を帯びたに違いない。
    「あんたのせいで頭が痛い。寝てく」
     決して、可愛げだとか庇護欲だとかを感じたわけじゃない。頭痛も嘘ではない。腰を抱き寄せられ、寝室へ誘導されて舌打ちした。こいつ、やっぱり体預ける程酔ってなかったんだな。
     でかい男二人で寝台に転がり、髪を解かれてしがみつかれる内に抵抗に疲れて好きにさせてやった。鬱陶しく広がる髪を両手で弄びながら何度も何度も唇を擦り付けてくる。髪や顔中にしつこく寄せられ、くすぐったさについ口元が緩んだ。その唇を割って舌が入ってきて、酒くさいし熱いし頭も痛いのに、結局流されるがまま貪り合った。


    「げぇ、頭、いってぇ」
    「そりゃ大変だ。ところで甘寧兄貴、あんたに言いたいことが山程あるんだけど、どれから聞きたいですかい」
     笑顔で言ってやると、酒のせいではない青みが顔面に乗った。
     夜中の呼び出し、腹心からのカシラ自慢に不敬、重たい図体の運搬、不本意な外泊――そのどれより、寸止めに腹が立ったなんて本音は、山中に埋めておくとしようか。
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    claclaclalan

    TRAINING甘凌

    他視点の練習がてらまた妙ちき現パロです
    女体化ものです
    色んな漫画の設定等を拝借しています
    以上ご注意ください。
    踊りませんか? 甘寧と凌統は、競技ダンス界で名の知れたカップルである。

     筋骨隆々の体がその図体からは想像もできないほどしなやかに動き、巧みに女の体を操る。熱気をはらんだ瞳はぎょろぎょろと正確に周囲を捉えて両足をフロア全体へ進ませた。その瞳に射止められた他の競技者は、接触を寸でのところで避けるほかない。俯瞰の目を持つ甘寧から言わせれば絶対にぶつからないように距離を測っていると言うが、その獅子の如き気迫は人を委縮させ、審査員に失意のため息をつかせる無様な逃亡を誘う。

     熱く燃えるような逞しい腕の中で、涼しい目をした女がたおやかな身のこなしで音の波に乗るように踊る。正確にリズムを刻みながら手足だけでなく、視線や吐息までを使って曲を表現する彼女を見て、審査員のほとんどは無意識に手元の用紙にチェックを付けた。美脚を隠した深紅のドレスが会場を動くたびに、観客は感嘆の息を吐く。長い脚が挙がれば他組など目に入らなくなり、甘寧がその長身を軽やかにリフトすれば直ちに拍手喝采が沸き起こった。
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