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    甘凌

    他視点の練習がてらまた妙ちき現パロです
    女体化ものです
    色んな漫画の設定等を拝借しています
    以上ご注意ください。

    #甘凌
    ganLing

    踊りませんか? 甘寧と凌統は、競技ダンス界で名の知れたカップルである。

     筋骨隆々の体がその図体からは想像もできないほどしなやかに動き、巧みに女の体を操る。熱気をはらんだ瞳はぎょろぎょろと正確に周囲を捉えて両足をフロア全体へ進ませた。その瞳に射止められた他の競技者は、接触を寸でのところで避けるほかない。俯瞰の目を持つ甘寧から言わせれば絶対にぶつからないように距離を測っていると言うが、その獅子の如き気迫は人を委縮させ、審査員に失意のため息をつかせる無様な逃亡を誘う。

     熱く燃えるような逞しい腕の中で、涼しい目をした女がたおやかな身のこなしで音の波に乗るように踊る。正確にリズムを刻みながら手足だけでなく、視線や吐息までを使って曲を表現する彼女を見て、審査員のほとんどは無意識に手元の用紙にチェックを付けた。美脚を隠した深紅のドレスが会場を動くたびに、観客は感嘆の息を吐く。長い脚が挙がれば他組など目に入らなくなり、甘寧がその長身を軽やかにリフトすれば直ちに拍手喝采が沸き起こった。

     そうして全種目フルチェックで予選をのし上がり、此度の大会も難なく甘寧・凌統ペアが勢いのまま優勝をかっさらった。観客は口々に言う。この国にこのカップルを越えるダンサーはいないのだから、きっとまもなく渡航して本場でその名を知らしめていくのだろうと。

     ――まさかリーダーの方に、国を出られない欠陥があるなんて予想もせずに。


    「甘寧殿、凌統殿、お疲れさまでした。気合の入った素晴らしい動きでしたね」 

     爽やかに笑ってタオルを差し出したのはダンススクールの子息である陸遜だった。人の呼称に古風さを付する変わった点はあれど、容姿端麗、頭脳明晰、若手にして複数の企業を経営する手腕を持つ青年である。黙って会釈し受け取る凌統と威勢のいい返事をして乱暴にもぎ取る甘寧。正反対の二人がボールルームではあれだけ息ぴったりに動けるのだからいつも感心してしまう。

     ゴシャ。
     陸遜のそんな心情を無視して、ひしゃげた音が控室に響いた。甘寧が水の入った柔らかいペットボトルを受け止めた音のようだった。投手は先ほどまで可憐に踊っていた女。椅子に座って美脚を組みながら片手で投げたらしい。意外と肩力もあるんですね、と陸遜が穏やかに微笑んだ。舌戦の始まりを悟ったのである。

    「ってめ、危ねえな! 目に当たったらどうしてくれんだよ!」
    「ノロマなやつなんか即セパレートだね」
    「ああ!? つうかさっきから気に食わねぇ態度取りやがってよ、何が不満だ?」
    「はっ? 今日のリードに反省点は一個もないわけ? あんなギラギラ踊っちまってさ」
    「タンゴは良かったろ!」
    「私があんたに合わせてやったんだ。感謝しろよ?」
    「つうかお前こそクイック滑ってたじゃねぇか!」
    「あんたの汗のせいだっつの!」

     口が悪い。噛みついている時の顔も美しくない。さっきまであんなに輝いて、見る者を魅了して止まなかったというのに。陸遜は気付かれないように嘆息した。

     そう。この二人、物凄く仲が悪い。性格は真逆、好みの種目もステップもストロークも果ては音楽の解釈まで違う。出会い以降凄惨な喧嘩を繰り返しておきながら、ある日突然カップル成立を報告してきた時、陸ダンススクールには激震が走った。一体、何がどうしてそうなったのか。成立時のことを、二人は互いに一滴たりとも口から溢さない。その日から四年がたった今でも、七不思議の一つとされている。 

     それにしても、審査員がおそらく気付いてもいない点をよく互いに見ているものだ。呉越同舟の二人を見て、陸遜は世界大会のことを思い出した。鞄からリーフレットを取り出し掲げる。実際に航海に出られたら、どれだけ良いか。英語で書かれた大会案内を見て、凌統は「あぁ」と短く呟き、甘寧は苦い顔をして押し黙った。

    「とりあえず、置いておきますね。一件電話してきますので、外します」
    「はいよ」

     凌統は欠片の興味もなさそうに鮮やかなリーフレットから目を外し、自身のペットボトルのキャップを捻って水分補給に勤しんだ。未だ額や首元を伝う汗の分まで、一気に取り戻すように。甘寧も眉間に皺を刻んだまま同じくキャップを捻って開栓する。先ほど容器が潰されて質量が圧迫され、空気が入った途端にあふれ出たが無視して煽った。

     互いの嚥下する音が止んで、少しして口を開いたのは甘寧の方だった。

    「国際か」
    「いいねえ、ロイヤル・アルバート。ロンドンって五年前に行ったきりだな」

     それは行きたいという意味だろうか。当然そうに違いない。世界大会に最も出たがっているのは凌統である。幼少期から公言し、それに見合うだけのストイックな練習を重ねてきた女だ。

     美貌も体型も踊りも、全ては世界で名乗りを上げるために一心不乱に身に着けたものだった。性格や考えの不一致はさておき、最もパートナーに相応しい男も見つけた。いつだって世界で戦える。凌統はそう確信した四年前を思い出していた。

     運命は残酷である。凌統にとって至上最高のダンサーは、航空機や船に対し、重度の恐怖症を患っていた。

    「観に行くだけ行ってこようかな。あんたに生の空気感たっぷり伝えてやるよ」

     意地悪く挑発するように笑う凌統に、甘寧は乗らなかった。自分のせいで世界に羽ばたけないという負い目が常にある。それなのに自ら離縁してやるとも言えない度量の狭さに苛立つ。せっかく手に入れた極上の女を、手離したくない。それが甘寧の最も強い気持ちだった。

     それでも、甘寧にも分かっている。凌統があの煌びやかなホールで舞う姿は凄艶であろう。そして今日の大会を以て国内は総ナメしており、獲るタイトルは残されていない。潮時である。
     とうとう観念したように、重い口を開く。

    「お前はいいのかよ」
    「何が」
    「このまま国内で燻ってて」

     凌統が眉を上げた。垂れた目がいつもより開かれ、蛍光灯の明かりを反射させる。踊っている時にははっとするほど色気を醸す泣き黒子は、地味な空間ですんと大人しく白い肌に鎮座していた。

     凌統は返事をしないまま相方を見つめる。あんなに汗だくだったはずなのに、吊り目に映えるきりっと入った赤いラインは一ミリも寄れていない。強いウォータープルーフの化粧品は、昨年韓国土産に買ったものだ。凌統にとって国内旅行とさほど変わらない場所ですら、甘寧には踏むことができない地である。

    「その話は組む前に散々しただろ。あんたを待つって決めたのは私」
    「お前も目の前で見てんだろ。毎度トライして惨敗。俺なりに手段は尽くしてる。けど、無理なもんは無理だ」
    「鈴の甘寧さんでも弱音を吐くんだね」

     派手好きで私服に謎の大きな鈴を連ねて歩く彼の異名は、ダンス界では畏怖の対象として呼ばれていた。あえてそれを挙げて笑う凌統に焦りはない。まるで甘寧ならば乗り越えられると確信しているようだった。

     原因不明、トラウマがあるわけでもなく、万策尽きた状態で尚も悠然と構える凌統に、鈴の主は複雑な感情を抱く。甘寧以外とは決してカップルにならないという毅然とした態度は嬉しい。だが、やはり狭い国に閉じ込めていい存在でもない。

    「俺がいなくても、お前のドエロいラテンは世界で通用すんだろ」
    「あんたと一緒に、観客総立ちにしてやるっつの」

     そりゃどっちの意味だ? 考えあぐねる内に凌統が立ち上がり、コツコツと靴音を立てながら距離を詰めた。ヒールで垂れ目と吊り目が同じ高さになる。白い両手が燕尾服の襟を掴んで引き付けると、音もなく唇同士が触れた。

    「これでも結構我慢してんですけど?」
    「……悪ぃ」
    「甲斐性なし」
    「一番キチィ」

     すかさず凌統が声を上げて笑った。
     二人は四年前カップルの契りとして結婚同等の覚悟をすると誓っていた。甘寧はとうに凌統に惚れていたし、凌統も然りである。だからといって馬が合うわけでもないのが二人らしいところであるが。そして当時の「世界を獲ったら抱かれてやる」という凌統の言葉を、二人は律儀に守っていた。

     公私ともに欲してくれることを甘寧は内心喜び勇んだ。もう一度空へトライしてみる気力が湧いたと伝えると凌統は当然とばかりに頷き、体を離す。
     凌統が再び椅子に戻って美脚を組み、水を飲んだ。隠した緊張で喉が乾いていた。

    「そういえば古本屋で催眠術の本買っちゃったよ。百円」
    「あん?」
    「これで飛行機は怖くないってね」
    「んだそりゃ。遊びで解決してたら世話ねぇよ」
    「まっ、モノは試しでしょ」

     ケラケラと笑い合う二人の元に陸遜が戻ってきた。先程までの険悪な雰囲気が柔らかくなっていてほっとする。
     このペアはしょっちゅういがみ合っているが、性根が似ているせいか常に同じ空気を纏っている。それがあの魅惑的なダンスに繋がっているのかもしれない。陸遜はそう分析しながら、また二人を労った。


     間もなく、国内至高のペアが百円催眠で空の旅を成功させることは、まだ誰も知らない。


    【踊りませんか?】
    かけがえのない貴方と

     
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    TRAINING甘凌

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    踊りませんか? 甘寧と凌統は、競技ダンス界で名の知れたカップルである。

     筋骨隆々の体がその図体からは想像もできないほどしなやかに動き、巧みに女の体を操る。熱気をはらんだ瞳はぎょろぎょろと正確に周囲を捉えて両足をフロア全体へ進ませた。その瞳に射止められた他の競技者は、接触を寸でのところで避けるほかない。俯瞰の目を持つ甘寧から言わせれば絶対にぶつからないように距離を測っていると言うが、その獅子の如き気迫は人を委縮させ、審査員に失意のため息をつかせる無様な逃亡を誘う。

     熱く燃えるような逞しい腕の中で、涼しい目をした女がたおやかな身のこなしで音の波に乗るように踊る。正確にリズムを刻みながら手足だけでなく、視線や吐息までを使って曲を表現する彼女を見て、審査員のほとんどは無意識に手元の用紙にチェックを付けた。美脚を隠した深紅のドレスが会場を動くたびに、観客は感嘆の息を吐く。長い脚が挙がれば他組など目に入らなくなり、甘寧がその長身を軽やかにリフトすれば直ちに拍手喝采が沸き起こった。
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