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    hoshinami629

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    hoshinami629

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    卒業式はお茶会室で待ち合わせしたいかどうか話すフェルマイ。

    卒業式の待ち合わせ「アウブ、卒業式のエスコートについてですが……」
     最後の貴族院に赴く直前の昼食の席で、フェルディナンドからそんな言葉をかけられた。ローゼマインは何を言われるのか分からず首を傾げる。
     ――卒業式の準備で忘れていること、何かあったっけ?
     髪飾り良し、衣装良し、奉納舞に出ないよう根回し済み、何かあるかもしれないとツェントへも連絡済み。ローゼマインは頭の中のチェックリストを再度確認するが、これといって忘れていることが思い浮かばない。
    「わたくし、何か準備を忘れているでしょうか」
     不安になってフェルディナンドを見返せば、いえ、と首を振って、少しばかり言いにくそうに口を開いたり閉じたりするのが見えた。
     ――え? 卒業式でそんな言いにくそうなことって、何かあったっけ? やっぱり奉納舞関係かな?
    「な、何か重要なことですか? 奉納舞に関係することでしょうか。その、フェルディナンドがどうしても心配ならばわたくし、仮病を使って休んでも――」
    「いえ、そちらではなく……」
     ――そちらとかこちらとか、幾つも問題があったっけ?
     ローゼマインが再度首を傾げていると、フェルディナンドは渋い顔をしてのろのろと言葉を繰り始めた。
    「……私はまだエーレンフェスト籍の身分です。卒業式の慣例に従うのでしたら、領地対抗戦の夜はエーレンフェスト寮に泊まり、翌日の卒業式にお茶会室へお迎えに上がることになりますが――」
     ローゼマインはフェルディナンドの言葉の意図が読めず、首を傾げる角度が深まる。
     ――わざわざエーレンフェスト寮に泊まる理由が分からないんだけど?
     確かに他領の者同士で婚約している場合、卒業式では女性の籍を置いている領地のお茶会室が、二人の待ち合わせの場所になる。だが、毎日こうして一緒に生活も仕事もしている者同士で、今更そんなことをする理由が分からない。領主会議の時のように、いつも通りアレキサンドリアの寮から出れば良いではないか。
     ――良い機会だから、一度里帰りしたいってことかな?
     色々と考えてみるに、それが一番妥当な線だろう。ディートリンデと婚約していた際にはお茶会室で一晩休んでいたが、あれはアーレンスバッハとエーレンフェストが緊張関係にあったからだ。ローゼマインからジルヴェスターに頼めば、エーレンフェストの認証のブローチも貸してもらえるだろう。
     ――そっか、きっとその辺りのことを相談したいんだね。
     ローゼマインはうんうんと頷いて口を開く。
    「里帰りしたいというお話ですか? 確かに、これを逃すとなかなか難しいですものね。養父様……いえ、アウブ・エーレンフェストともくつろいでお話しできる貴重な機会ですし、わたくしは構いませんよ。あ、ちゃんとエーレンフェスト寮でお休みになれるよう、お話は通しておきます」
     そう返せば、向かいの婚約者の眉間に深い皺が刻まれる。え、私何か間違ったこと言っちゃった? とローゼマインは内心で焦る。見れば、フェルディナンドの後ろでラザファムとゼルギウスが微妙に笑いを堪える表情を見せていた。
     ――何!? この微妙な空気何!?
    「…………その兄から言われたのです、他領の者と婚約している女性にとって、お茶会室で相手の訪れを待つのは特別な時間なのだ、と。前回の婚約の話をするのは不本意ですか、私があの時エーレンフェストのお茶会室に泊まったことをアウブはご存じでしょう? やはりあのような形でお迎えに上がった方が宜しいのではないかと思ったのですが」
     ローゼマインはフェルディナンドの険しい表情から紡がれた説明に、ようやく得心する。
     ――ああ、お母様が前に「心ときめく」特別な時間だとか言ってたね。そういうことか。
     どうしてローゼマインがそれをフェルディナンドに期待していると思われたのかが定かではないけれど、ジルヴェスターの入れ知恵でフェルディナンドなりに気を遣ってくれたことは分かった。ローゼマインはどう答えたものかと考えを巡らせる。
     ――うーん。正直私には、お茶会室でエスコート相手を待つ時間にときめくっていうのが良く分からないんだよねえ。
     里帰りしたいというなら快く送り出すけれど、帰りたい訳でもないフェルディナンドに、わざわざ一晩普段と違う場所へ泊まってもらいたいとは思えない。それに領地対抗戦の後、フェルディナンドと一度別れるのも何となく寂しい。
     ――ただでさえ、これから貴族院にいる間、フェルディナンド様に会えなくて寂しいんだもん。なるべく一緒にいたいよ。
     ローゼマインはカトラリーを置いて口を開く。
    「わたくしはアレキサンドリアの寮から一緒に出たいです。一晩だけ他の場所に移るのは手間でしょうし、領地対抗戦でご一緒するのに、一度お別れするのは何だか寂しいですし……。ただでさえ貴族院にいると、フェルディナンドとお会いできないのですもの」
     そう言った後、ローゼマインは給仕されたのに手付かずだったスープを口にする。うん、最近開発してもらったビスクは濃厚でとても美味しい。
     しばらくは昼食を黙々と進めていたが、一向に返答が来ないことにふと不思議さを感じて顔を上げる。見れば、正面には難しげな表情でこめかみをとんとんと叩くフェルディナンドの姿があった。
     ――え、私、今度はちゃんと普通のお返事したよね!?
     食器類が下げられ、お茶の準備がなされている間、ローゼマインはぐるぐると考え込む。
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