気怠い体をベッドに転がして、はあと息を吐いた。宇佐美に何度もイかされ、快感すら辛いと思うのにもっとと強請ってしまうのはいつものこと。宇佐美も毎回律儀に応えてくれるからぐちゃぐちゃに乱れてしまう。それがいい、余計なことを考えたくない。
「百之助ェ〜、風呂入ろ」
「……おう」
「……」
「……」
「おい返事だけじゃねーか、動けよ淫乱」
うるせえ、誰のせいで俺が身も蓋もなくよがっていると思ってる。返事するのも面倒だから黙って大の字になっていると、宇佐美が萎えた俺のチンポに顔を寄せた。
「……もう勃たねぇぞ」
「大丈夫だよ、お前はチンポ勃たなくたって中イキできるんだからさ」
チンポのまわりの毛を指で掬って、絡めて戻す。これは違うな、これはいいかも、と吟味して一本の縮れ毛を摘むと、何の前触れもなくそれを引っこ抜いた。
「ッだあ! 痛ぇだろバカ!」
「うるさいよ百之助、近所メーワク」
「お前がうるさくさせてんだよ」
宇佐美は恍惚とした表情で抜いたチン毛を月明かりに翳した。
「これは、付き合って4年目の夏の百之助」
ご丁寧にティッシュに包み、持参していたらしいチャック付きの袋にしまう。
「後でメンテして飾ってあげるからね」
「チン毛に話しかけんな」
宇佐美は、付き合い始めてから季節が巡るたびにこうして俺のチン毛を集めている。コレクションが増えるとわざわざ過去のものも全て持ってきて並べて見せてくれる。自分のチン毛見て誰が楽しいかよ。それでも付き合ってやるのは、宇佐美が俺のそばにいてくれた時間を実感したいからだと思う。
「やっとアルバムの4ページ目が半分埋まるよ、ウフフ」
俺のチン毛を保存しているアルバムは1ページに写真が4枚入るポケットがついていて、1つのポケットに1本のチン毛を入れ、封をする。春夏秋冬で4本のチン毛が揃えば1ページが埋まるらしい。1ページで1年、重ねたページの数だけ俺と宇佐美がつるんでいた時間の長さになる。
「百之助が死んだら墓に入れてやるよ、チン毛アルバム」
「いやいらねぇ。お前の棺桶に入れた方がいいんじゃねーか、そうすればあの世でも大好きな俺と一緒だぜ」
軽口の応酬のつもりだったのに、宇佐美が「それいいかも」なんて目を輝かせたので俺はドン引きする。
「じゃあお前が死んだら僕のチン毛アルバムを入れてあげるよ」
「いらねー、ていうか自分で自分のチン毛集めんな」
死ぬまでチン毛集めたら、アルバム何冊分になるんだろう。少なくとも、あの世で寂しい思いはせずにすみそうだ、なんて馬鹿げた思考を俺は笑い飛ばせなかった。