放課後の保健室 窓から差し込む遮光線が校舎の廊下を照らしている。面堂が歩くたびに足もとの影が揺れて、それはどこか初夏の兆しを感じさせた。
「面堂さん、さようなら」
「ああ、さようなら。また明日」
「また明日ね」
すれ違う女生徒に別れを告げつつ、面堂はある場所へと向かっていた。ぱたぱたと上履きが廊下を鳴らす音、はためく学生服。放課後の学校はどこか切なげで、暮れゆく空を見上げるとどうしたって心が急いた。
「――さて、サクラ先生はいるだろうか」
この廊下を曲がったところに面堂が目指す保健室はある。いつもは男子生徒でごった返す保健室がしんと静まり返っていたので少し不思議に思ったが、構わず保健室のドアを開けた。
「――サクラ先生」
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