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    うちよそ第2話【第5幕】 メイド二人に促され、追眠と玖朗は屋敷の二階へと歩を進める。螺旋階段をのぼってすぐ、両開きの扉の奥には真紅のベルベッドに覆われた広い部屋があった。
    「それでは私共わたくしどもで、それぞれお一人ずつを担当させていただきます」
     絹糸を太く編み込んだタッセルで括られていた厚い布を垂らされると、真紅のベルベッドによって部屋が二つに分けられる。玖朗とラジオ巻きのメイド、小鈴が厚く滑らかなカーテンの向こうに消えた。
    「改めまして、本日柳追眠様をお手伝いいたします、小華シャオファです。まずはこちらをどうぞ」
     恭しく頭を下げられた後受け取った服は白くて薄くてぴかぴかしている。どうやらチャイナ服のようだ。
    「追眠でいい。なぁ、これ……女物じゃね? 間違ってねーか?」
    「かしこまりました、追眠様。いいえ、こちらは私共の主、オールドレインが追眠様のためだけにお作りしましたオーダーメイドのお品です。あちらの更衣室にて、どうぞお召し替えくださいませ」
     そう言われ、どうも釈然としないまま指し示された更衣スペースに向かい、追眠は間仕切りとなる小さなカーテンを閉める。仕切られた小さな空間で着替えていると、向こうから小鈴と玖朗の声が聞こえてきた。
    「お二人はつつがなく着替えてくださるようで安心いたしました。先のお二人は、その……」
    「二人? あぁ、もしかしてガラクタ屋とあの子ども? なるほど、騒がしすぎてさぞ大変だったでしょうね」
    「えぇ、まぁ……大変元気がよろしゅうございました」
    「アハハ、オブラートに包まなくてもいいのに」
    「まぁ、美しい御髪おぐしですね」
    「どうも」
    「弥玖朗様は、主様の『中華街・もっとちゃんと見たいけれど外でなかなか見られないレアなイイ男ランキング』のトップ3入りしております」
    「へ、へぇ……」
    「主様曰く『男性であの髪の長さ! ヘアアレンジは無限大! ポテンシャルも無限大! あー、もっと妄想したいのに、全ッ然外に出てこないのよあの子ッ!!!! 何よー、先代よりガード固いってどういうこと!?』とのことです」
    「そ、その……なかなか個性的な主だね……」
     追眠は着慣れない高級そうな服を、破かぬよう注意して身に纏う。やっぱり丈がおかしい。ぴんと引っ張っても膝より大分上で止まる。追眠は更衣室のカーテンを開かないまま声を上げた。
    「なぁこれボトムスないんだけど」
    「なくて正解です。一枚ものですよ」
    「……マジで言ってる?」
    「大まじでございます、追眠様」
     流石にそんなはずはない。丈を確認してもらおうと、追眠はカーテンをしゃっと開く。
    「だってほら、ここまでしかないぞ」
    「えぇそうですね。ですので」
     丈の短い肌色のブリーフ——というかむしろその生地の薄さと丈の短さは女性ものでは——がぴんっと提示される。
    「やはり、ぱんつを替えてください」
    「…………は?」
    「トランクスでは台無しです」
    「いや別に台無しでいいし」
    「ダメです」
     小華は再度薄いブリーフ、というかショーツをぴんっ、と両手で張る。
    「頭のてっぺんから爪の先まで美しく。それが私共の合言葉です。妥協は許されません。さぁ、さぁ、さぁ!」
    「ちょっ、おいッ、やめ……ぎゃあああッ」
     結局、追眠は小華の勢いに押し切られ、もろもろ着替えさせられることとなってしまった。よく分からないがこのメイドたちは怖い。礼儀正しく低姿勢のように見えて、服に関することは絶対に譲らないのだ。
     攻防戦の末、息も絶え絶えになりつつ着替えを済ませると、小華から大きな鏡がセッティングされた椅子に座るように促される。この頃にはもう、追眠は好きにしてくれと大人しく小華に従っていた。
    「次はお化粧と御髪おぐしのセットにございます。まぁ追眠様、お肌がとても美しくていらっしゃるのですね。お顔の造形も申し分なし……流石は主様がずっと目を付けていた“原石”です。主様がご覧になれば、恐らく号泣されます」
    「いやなんでだよ」
     前髪を仮留めされた後、顔にぽんぽんとパフを乗せられながら追眠は尋ねる。小華は動きを止めることなく答えた。
    「『なによぅ、どーせ「特に何もしてないです」って言うんでしょ!? 私の努力はなんだってのよ!?!? 毎日お風呂あがりにいくつ化粧品塗りたくってると思ってんの!?』くらいには仰るかと」
    「お、おう……そういや、さっきからその主は一度も見かけねェけど、いないのか?」
    「主様は寝込んでいらっしゃるのです。二週間余りで合計五人の方のお洋服の作成、および装飾品の準備を行うのは、かなりハードなスケジュールでございましたので」
     言われてみれば確かにそうだろう。追眠は服飾についてさしたる知識はないが、衣服のデザインを考え、さらにそれを作成するのに必要な糸や布等を取り寄せ、製作し、さらには服に合わせたジュエリーまでも準備して、と少し工程を考えてみるだけでも膨大な時間と労力を要すると想像できる。ましてやそれが五人分なのだ。さぞ大変だったに違いない。
    「あぁ、ですがどうかお気に病まれませんよう……主様はじめ私共は、今回のご依頼を誠に嬉しく思っております」
    「そうなのか?」
    「えぇ。私共は皆、この仕事を愛しております。まして主様に至っては『や~ん目を掛けてた子たちが勢ぞろい~!! この子たちをアタシのお洋服でぴっかぴかにできるなんてェ~~やぁだテンションアゲアゲ♂過ぎちゃって三日間不眠不休なんてアタシヤバ〜い!!!!』と大層お喜びのご様子でした」
    「……へー……」
    「本日は『アンタたち、アタシの代わりにあの子たちのぴかぴかなご・尊・顔・を!! 焼き付けてくるのよッ!!』との仰せでした」
    「…………」
     小華は会話の間にも、追眠の目の周りに何か書いたり、細いブラシで何かを塗り付けたり、追眠の髪の毛に何かを吹き付けたりとせわしなく動き回っている。追眠は内心で、この二人の主様とやらに今日顔を合わせることがなくて本当によかったと思った。怖い。
    「お手をお願いいたします」
     くるくると追眠の周囲を回っていた小華は動きを止めると、今度はそう口にした。請われるまま差し出された台の上に両手を置くと、小華は爪やすりで追眠の爪を一つ一つ丁寧に整えた後、何かを塗り重ねていく。液体を塗られた爪は、きらりと光を反射した。
    「爪がピカピカしてる……」
    「薄付きのマニキュアです。これからこちらを三度重ねます。爪が乾きましたら、お化粧は終わりです」
     爪を乾かしている間にも小華は早送りのようにてきぱきと動き回り、追眠の顔を眺めて化粧を足してみたり髪の毛を撫でつけたりしていたが、三度目のマニキュアの重ね塗りが乾ききった頃、こくりと頷くと白いベルベットの小箱を持ち出してきた。
    「それでは最後に装飾品を」
     小華が箱から取り出したのは、青と紫の蝶々が縦に連なりゆらゆらと揺れるピアスだった。本物のようにリアルな蝶の造形の上で、色味を揃えた極小の宝石たちがきらきらと輝く。大ぶりで存在感あるそのピアスを、小華は追眠の右耳に取り付けていく。
    「あら? 追眠様はピアスホールを複数開けていらっしゃるのですね」
    「あー、まぁな」
    「では、こちらのピアスの隣にもう一つ、アメジストのスタッドピアスをお守りに」
    「これ、片方だけなのか? 左の分は?」
    「ございますよ。片方だけの理由は、もうまもなくお分かりになるかと」
    「ん?」
    「お疲れ様でした、以上ですべて終了にございます。ではどうぞ」
     はじめに小華の手で閉められた、部屋を仕切るベルベットのカーテンの前に案内される。小華がするするとカーテンを開いていくと、向こう側には小鈴と玖朗が立っていた。
    「なッ……」
     玖朗が小さく声を上げる。追眠の方もおぉ、と歓声を上げた。玖朗の髪はいつも通りの三つ編みではあるのだが、編まれた長髪はつやつやと輝いていて、丁寧に手入れされた様子が伺える。同じ髪型でもここまで印象が変わるのかというくらい、常日頃とは全く違う優雅な印象を受けるのだ。髪先を束ねる紺の組紐がまた優美で目を惹く。
     深い紺のゆったりしたチャイナ服は、艶のある生地がいかにも高級品という風情だが、決して派手派手しさはなく上品にまとまっている。服の一部分に銀糸で刺繍された木蓮の枝花が繊細で美しい。
    「すげーじゃん! アンタ、なんかいい感じの金持ちに見える」
    「あの……ほんとに、猫だよね……?」
     窺うようにおどおどと玖朗が尋ねてくる。追眠は首を傾げた。
    「何言ってんだ、どう見てもそうだろ」
    「……かッわ、いぃ……」
    「は?」
    「いや……あー、そうか……えーと……その、とてもいいと、思います……」
     口を塞いで明後日の方向を向いている左肩の上、髪の隙間から追眠のものと同じ青と紫の蝶々が二匹覗いた。
    「あれ、あの蝶……」
    「そうです」
     追眠の隣に並んだ小華が言う。
    「この蝶々のピアスは一対のみ……此度はペアでのご参加となり、一つは必ず同じものを身につけるというドレスコードがある旨をワン様より伺っておりましたので、お二人にはお一つずつ、この蝶々のピアスを身につけて頂くようにいたしました」
     続けて、玖朗の隣にいた小鈴が言う。
    「玖朗様のものは金具を変更し、イヤリングとさせていただいております。こちらのお品は、大変意匠の美しい一品ではございましたが、主様のお目に叶うレベルでお似合いになる方がおらず、長らく仕舞い込むばかりとなっておりました。この度お二人のためのジュエリーと相成り、私共一同、大変喜ばしく思っております」
     二人はぴたりと揃ったタイミングで深々と会釈する。その後、小鈴がエレベーターガールのように片手で玖朗を示した。
    「玖朗様の御髪は椿油を染み込ませた柘植櫛で何度も梳いて、しなやかに美しく仕上げました。お化粧は控えめですが、眉を整えさせていただいたのと、肌艶をよく見せるため少しだけ下地およびファンデーションを重ねさせていただいております。御召し物に使用しました艶のある絹糸は、昨今では珍しくなりました、蓼藍を使った手染めの糸。希少な材料と熟練の職人の手技による一級品を惜しみなく使用しております。上下揃いのチャイナ服はゆったりとしたサイズ感にて洗練された大人の雰囲気を演出いたしました。刺繍の意匠は木蓮、中国における伝統的服飾の意匠としては蓮と並び立つ花にございます。銀糸の煌めきがさり気ない華やかさを纏わせつつも、物静かで気品ある装いに仕上がりました」
     小鈴の向かいで鏡写しのように、今度は小華が追眠を手で示した。
    「追眠様の御召し物は白地のチャイナ服にございます。五分丈ストレートの袖部分や鎖骨部分は透け感のある生地で色っぽく。比較的生地の厚い胸元から腹部に掛けては白と淡い水色の糸を使い、木蓮の刺繍をたっぷりとあしらっております。着丈は膝上の短さ、さらにスリットを大胆に、黒のストッキングは素足が透ける薄さの20デニールを。白という色を存分に生かして無垢に清廉に、そしてストッキングの黒とのコントラストで官能的に。相反する魅力が同席する、誇り高い白猫をイメージして作成しております」
    「マジか……」
     ぴかぴかの富豪に仕立てられている玖朗が呟く。追眠は唇を尖らせた。
     俺だって、こんなぴらぴらすけすけのやつじゃなくて、玖朗みたいな長くて男物らしい服がよかった。
     製作に大変な時間と労力が掛けられたことを知っているため口にこそ出さないが、追眠は内心そう思っていた。だが、追眠のそうした不満をよそに、なおも小華のプレゼンは続く。
    「あまりきっちりメイクされますと女性らしいなよやかさが前に押し出されてしまいますので、今回は少し手入れをする、程度で控えました。アイラインは気持ち程度、睫毛には控えめなラメを僅かに乗せて品よく美しく。元の肌が大層お美しいので化粧下地はなしで、保湿と化粧ノリのために、化粧水と下地代わりの日焼け止めクリームを。細かい粒子の白粉おしろいを薄くはたいて、チークで少し血色のよい印象を引き出しております」
    「なんで俺だけこんな化粧……」
     やっぱりどうも納得いかない。追眠はとうとうぼそりと呟いてしまったが、小華はまったく意に介さない。
    「唇には淡く香る、輝きが控えめのグロスを薄く重ねております。淡いさくらんぼ色を目指しました。コンセプトは『キスしたくなる唇』です」
    「ハァ!? 何だよそれ!」
    「追眠様、落ち着いてください。あくまでコンセプトです。髪はヘアアイロンとムースを使い、ゆるくパーマがかったような、ふわふわのスタイルに仕上げました。艶出ししたことでまるで白金色のような質感に仕上がったかと」
    「確かに。毛艶のいい、いいところの猫みたい……」
    「結局そこに行きつくのかよ」
    「まぁまぁ、よく似合ってるよ。……ほんとに」
     誉め言葉であるはずの玖朗の台詞に、追眠は目を吊り上げる。だが、この仮装は潜入のため、ひいては羅甚仁に繋がる何かを掴むために必要なものだ。仕方ない。この二日間だけは、せいぜい毛艶のいい猫のフリをしてやろうではないか。追眠はふんと鼻を鳴らした。
    「では、最後にこちらをお召しください」
     そう言って、メイド二人が恭しく差し出してきたのはベルベッドの台座だった。紺と白の台座にそれぞれ載せられていたのは、紺の狐面と白の猫面。どちらも赤色の流線と極小の赤い宝石で縁取られた、中華風の半面だった。
    「あぁ、どうも。そういえば、劉仁も何か付けてたよね、こういうお面」
     玖朗が笑みを浮かべてみせる。サングラスの奥の瞳が弧を描いた。
    「……あ」
    「どうしたの猫」
    「アンタ、それどうすんだよ。グラサン」
    「えっ?」
     玖朗はさも意外そうな声を上げた。本当にぴんときていなかったらしい。
    「……これ、外さなきゃダメなの?」
    「少なくとも、面といっしょには無理だろうな。とんでもなくおかしなことになんぞ」
    「だったら、いつも通りでいいでしょ」
    「それは、面をつけずそちらのサングラスにて会場へ向かわれるということでしょうか?」
     小鈴が首を傾げる。
    「それはお勧め出来かねます。仮面はドレスコードの一部。仮に入場の許可が降りたとして、周囲が仮面のお客様ばかりの状況では、浮いてしまうことは必至でしょう。目立つことは、潜入の妨げになるかと」
     さらに小華が続きを引き取る。
    「また、お二人が出向かれるのは非合法な取引が行われる現場でございます。そうした場で顔を覚えられると、今後にも差し障るかと。ご自身の安全のためにも、こちらをお召しになることををお勧めいたします」
    「いや、言いたいことは分かるけど、でも……」
     玖朗が言い淀む。追眠は玖朗を覗き込んで、こそこそと囁いた。
    「躊躇ってる理由は分かる。んでも二人が言ってることは尤もだ、今回はグラサンじゃない方法で隠すほかないだろ」
    「……方法って?」
    「んー、カラコンとか?」
    「嫌だよ、そんな若人みたいなことしたくない」
    「ハァ!? アンタこの期に及んで何言って……」
    「はて」
     入り込んだ声に二人は声を噤む。小鈴が二人の真横に立っていた。片手を頬に当てて首を傾げる。
    「玖朗様は、瞳を見せたくない理由がおありのようですね。先のメイク等の間にも、決して眼を見られぬよう、お気をつけておいででした」
    「詮索は不要だよ」
     珍しく玖朗の声が刺々しさを帯びる。だが、気にした様子もなく小鈴は一礼した。
    「勿論でございます。秘すれば花なり。私共はお客様の秘密を遵守いたします」
    「ンなこと言ったって、じゃーどうすんだよバカ」
     追眠が詰め寄ると、玖朗はばつの悪そうな顔でしばらく逡巡してから溜息をついた。
    「……俺に考えがある。苦肉の策だけどね」



    「——柳追眠様、弥玖朗様。最後に、王劉仁様より賜っております、ご伝言をお伝えいたします」
     二人の背後、、で小鈴と小華が、歌うように交互に言葉を告げる。
    「いち、何があってもピアスは外さないこと」
    「に、見知った者と互いに顔を合わせても、会場では知らぬ振りを貫くこと」
    「さん、決して手を出さないこと。以上を必ず守るようにと」
    「……分かった」
     追眠の隣で玖朗が呟く。追眠は顔を顰めた。劉仁からの伝言というのだから、多少不可解でも守ろうとは思う。だが、“手を出さない”。ここがどうにもひっかかった。というのも追眠は、何かあっても最悪相手を昏倒させればいいか、くらいに思っていたからだ。そんな思考を読んでいたかのように、小華が囁いた。
    「追眠様。……あなた方がこれから出向かれる場所は、日常とは全く異なる世界。言葉と振る舞いによる戦場です。宜しいですか、清廉に潔白に、そして高潔に振る舞ってくださいませ。服に着られてはなりません」
    「……服に着られる? どういう意味だ」
    「あなた様が思っていらっしゃるよりも“それらしく”振舞うことは難しいということです。野良猫のように自由に振舞うことを常とする、追眠様であればこそ」
    「……確かにね」
     隣で玖朗がくすりと笑う。
    マオは飼われる性質タチじゃない。でも、会場についてからの二日間、その気ままな生来の気質は上手に隠し通さなきゃいけないよ」
     玖朗はまるきり、自分は振舞い方をきっちり理解しているとでも言いたげだ。追眠は少しむっとしたが、それもそうかと思い至る。玖朗ならばどんなイカれた金持ちが出てきても、本音を綺麗に覆い隠すいつもの愛想笑いを浮かべて上手く溶け込めるだろう。なにせ普段が普段だ。本音を隠し、上辺では愛想よく――そうした類のことは玖朗の領分と言ってもいい。
    「しかしながら、追眠様が場にふさわしき振る舞いであろうと努力なされば、私共が磨き上げましたその身なりが、あなた様の助けになりましょう」
    「追眠様は器用ですから、大概の所作や振る舞いは、よく観察していればすぐに物にできるはず。化かし合いの場において“完璧”は武器となります。なるべく完全に完璧に、模倣コピーするのです」
     双子のメイドは声色すらもほとんど同じで、二人の姿を目にしていない今、追眠はどちらが話しているのかすっかり分からなくなった。
    「……まぁ、覚えとく」
    「ご武運を。ちょうど、迎えのお時間です」
     そうして、メイド二人は玖朗との約束どおり、“玖朗の眼を見ないよう”、二人の背中を見送った。
    「「いってらっしゃいませ」」
     ぴたりと揃った二人の声に背中を押され、追眠と玖朗は両開きの玄関扉を開くと館を後にした。

     夕日の眩しさに一瞬目が眩んだ。明るさに目が慣れてから前方を見遣ると、メルヘンチックな可愛らしい庭に、あまりにも似つかわしくないスーツ姿の男が立っていた。真っ黒なスーツが周囲の風景からありありと浮かび上がる。まるでその男だけ、数時間先の夜から切り取ってこられたかのようだ。日光を反射した眼鏡の奥で、神経質そうな眼が弧を形作る。
    「これはこれは、随分と……化けましたねぇ、お二人とも。麗しき少年従僕と怪しげな豪商、まさにそういった風情ですよ」
     ちろと追眠に投げられた黒い瞳が、品定めするかのように僅かに見開かれる。
    「あなたと直接お会いするのは初めてですね。初めまして、虎仁帮日本支部幹部、明吽凱と申します」
     吽凱は一礼してみせた。言葉遣いといい立ち振舞いといい、一見するといやに礼儀正しく丁寧に見える。けれどその実、例えば劉仁の実直な礼儀正しさなどとはどうも趣が異なる。慇懃無礼。内心は中華街のクソガキに頭を下げるなんて、くらいには思っているかもしれない。
    「はぁ、どうも」
     服装から劉仁の部下であろうことは何となく察しがついていたが、それと別に追眠はふと既視感を覚えた。本音を隠して一見は愛想よくというこの在り方——この男、どこかの誰かにとても似ている。わざとらしい笑みを浮かべた吽凱は、今度は玖朗に言葉を投げかけた。
    「それにしても玖朗先生? 随分と変わった瞳の色をなさっておいでで」
     いきなり直球が飛んできて、当事者ではない追眠の心臓が微かに跳ねた。そう、追眠と玖朗は今、メイドたちに差し出された半面を付けている。玖朗は先ほど、自身の瞳を見られないよう、メイド二人に背後から見送るように指示した後、いつものサングラスを外して半面を付けた。要は今、玖朗の瞳の秘密は公然と晒されてしまっているのだ。けれど、隣の男は事も無げに肩を竦めてみせる。
    「あぁ、カラーコンタクトってやつらしいよ。瞳の色すらファッションの一部にしちゃうなんて、俺には理解できないけどね」
    「左様でしたか。私、てっきり積年の謎が解けたのかと思いました。玖朗先生がいつ何時も色付き眼鏡を手放さないのは、その瞳に特別な隠し事があるからなのだと」
     探るような吽凱の含み笑いに、玖朗もまた吐き捨てるように笑ってみせる。
    「そんなわけないでしょ? レアな色の眼球がどれだけ高値で取引されてるか俺はよく知ってる。もし素でこんな眼してたら、流石の俺も恐ろしくてヤクザ相手の商売なんてしてられないよ」
     追眠は目を瞠る。笑みを浮かべ吽凱を侮蔑するその表情は半面で見えにくくともそれと分かるほど完璧で、あまりにも玖朗らしい。誰も隠したい秘密を現在進行形で晒している人間だとは思わないだろう。追眠は心中で舌を巻いていた——こいつほんとは、俺よりギャンブラーなんじゃね? 
     言葉だけでの綱渡りな欺きを、薄ら笑いを浮かべた玖朗はなおも続ける。
    「普段のサングラスはアンタらにイメージを刷り込むためにやってる。この髪もそう。何かあったとき、適当に髪を切ってサングラスを外すだけで俺を認識しづらくなるでしょ? 物騒な連中を相手に仕事してる、俺の涙ぐましい自衛のひとつだよ」
    「なるほど。そういう意味では、なかなかにレアな珍品を惜しげもなく晒して生きているあなたの飼い猫は、随分と豪胆なものですね」
     抜け目のなさそうな虎仁帮の幹部はとうとう玖朗の瞳について追及することを止めた。なんと玖朗の目論見は成功してしまったらしい。吽凱の気が逸れた隙を逃さないよう、追眠はすかさず言葉を挟んだ。
    「勝手にペット扱いすんな」
    「おや? うちの香主わかより聞かれていないのですか」
    「は?」
    「あぁ、いえ。でしたら……そのうち分かるでしょう」
     にっこり微笑む胡散臭い笑みは、追眠の隣に並ぶ誰かさんとあまりにも似過ぎていた。追眠が思わず両者の顔を見比べると、途端に吽凱が反応する。
    「なんでしょうか? ……まさかとは思いますが、似てる、とでも仰りたいんですか?」
    「や、でも、身長が全然違うわ……」
    「聞こえてるよ? 言っておくけど、俺平均身長だからね? 劉仁もガラクタ屋も虎仁帮の連中も、俺の周囲が無駄にデカいだけだからね?」
     追眠の小さな呟きに、今度は玖朗が光の速さで反応する。ブフッ、と噴き出す音がした。玖朗でも追眠でもないならば当然思わず笑ってしまったのは。
    「…………吽凱?」
    「私はなにも」
     肩を竦めてみせた吽凱の動きに合わせて、黒の目の中にきらりと藍色が反射した。吽凱は追眠の瞳を“珍品”と言ったが、一見黒に見える瞳の中に別の色が見られる瞳もなかなか珍しい。
    「二色……めっずらしー、なぁ、アンタの眼……」
     吽凱の方へ一歩踏み出すと、途端にぐんと引き戻される。
    「……猫? そんなにほいほい近寄らないの。劉仁の部下とはいえ、猫が毛嫌いする立派なマフィアだよこの男は」
    「でも劉仁の部下なんだろ? じゃあ平気じゃん」
    「猫……いつもの警戒心はどこに置いてきたの?」
    「おや」
     吽凱がにっこりと微笑む。
    「先ほどから気になっておりましたが、猫、猫、と……愛称で呼ぶほどに、仲がよろしいんですね?」
    「……………………ハァ?」
    「それに、随分とご執心のようで」
    「アハハ。……口が過ぎるよ、吽凱」
    「これはこれは、大変失礼いたしました」
     例によって吽凱は、とても丁寧で微塵の申し訳なさも感じられない謝罪を述べると、話を逸らすように、門の向こうに停まる研きあげられた真っ黒な車を示す。
    「あまり時間がありません。ひとまずお車へどうぞ」

    香主わか……オーナーが既にホテル内部へ潜入しているため、外での作戦の指揮は僭越ながら私と阿近が取らせていただいています」
     追眠は、玖朗とともに再び高級車に乗り込むこととなった。運転を部下らしい黒服に任せ助手席に陣取った吽凱が、車が滑るように動き出すのと同時に口火を切る。阿近が誰なのか追眠は知らないが、話の流れからするに吽凱と同じ虎仁帮の幹部なのだろう。
    「これは蛇足ですが、予めオーナーより、内部に潜入していただくあなた方へのご説明を幹部である我々より直接行うように、とのお達しがありました。そのため、お二方に先行したアレの方を阿近が担当しています」
    「アレ?」
    「ガラクタ屋でしょ」
     玖朗が鼻で笑う。
    「えぇ。あのオタクと顔を合わせるくらいなら、まだこちらの方がいいと申し出たんです。とはいえ困ったものです、私も暇ではないのですが……まぁ、他でもない香主直々の命ですから。しがない幹部は従いますとも」
     こんなところまでわざわざ出向きたくはなかったという意思がこれでもかと滲むその声は、どこまでも嫌味が効いていた。吽凱はどうやら玖朗のことを嫌っているようだが、霊霊のことは玖朗以上に嫌っているらしい。似たもの同士は同じ人間を嫌うのか? と追眠は首を傾げた。
    「では、現状判明していることを、推測も踏まえたうえでお話ししておきましょう。かのオークションの主催者はここ数年で急激にオークション事業を拡大させ、裏社会でその名を知られるようになりました。急成長の理由はいくつかありますが、最も大きいのはVIP、つまり出資者の存在ですね。どうコネクションを繋いだのか定かではありませんが、VIPとして名を連ねるのは、財界の大物、高名な政治家など、この国の中枢に入り込んでいるような人間ばかりです……とはいえ、あくまで影響力はまだ日本国内にしか及んでいないようですが」
     追眠は顔を顰める。話が妙に壮大に、難解になってきた。
    「あとはまぁ、主催のマーケティングが“お上手”とでも申しておきましょうか……このイベントはご存じのとおり二日がかりです。一日目はパーティー、二日目が本題のオークション。参加を紹介制のみとすることで情報漏洩の危険を減らすとともに、VIPに名を連ねる大物の名前をここぞとばかりに煽り、“選ばれた者のみが参加できる”という優越感を煽る。さらに素性を隠せる匿名性、非合法なオークションという秘密を共有している高揚感。そして、極めつけはパートナー必須という参加条件……あの妙に凝った、芝居がかったフライヤーをご覧になったでしょう?」
     吽凱がはっと鼻で笑う。
    「要するに、初日のパーティーは“パートナー”とやらの品評会です。匿名性を保つのに仮面を、なんてふざけた指定をしているのも、大昔に貴族間で流行った“仮面舞踏会”を意識しているのでしょう。主催は、金持ち共の虚栄心をくすぐるのが実に上手い。おかげで参加を望む資産家が後を絶たず、規模を拡大させているというわけです。もう少し小賢しい連中は、VIPのビックネームとそこに連なる情報に群がっているようですね。初日のパーティーの場は、オフレコの極秘情報を交わすサロンとしても利用されているようです……まぁ、これはあなた方には不要な情報でしょうか」
     そこで言葉を切ると、吽凱は助手席から後方席に座る追眠たちの方を振り返った。
    「ホテルへの入場の際、こちらの招待状が必要になります。提示ははじめの入場時のみでいいとのことです。どうぞ」
     差し出された白い封筒を受け取る。吽凱の柔和で胡散臭い笑みはやはり玖朗によく似ていた。細められた目の奥で光る不思議な藍色を、追眠の眼は自然と追ってしまう。
    「……まーお?」
     途端、ぐいと首に腕を回されて後ろに引き戻された。
    「なんだよ」
    「ダメって言ってるのに。これは俺が預かっておくね」
     そう言って玖朗は追眠の手から封筒を取り上げて、懐にしまった。
    「続けて、吽凱」
    「…………承知しました」
     とても何か言いたげな間をたっぷり空けてから、吽凱は続ける。
    「繰り返しますが、今回のオークションは正規のものではありません。犯罪者が跋扈し盗品が売り買いされるような闇オークションです」
    「アンタらみたいなね」
    「当然、主催者は摘発しようとする警察関係者等を何より警戒しています」
     吽凱は玖朗からの嫌味を完璧にスルーした。
    「ネズミが入り込まないよう警備は厳重です。警備だけなら、及第点をくれてやってもいい。紹介制という手法もなかなか厄介でした……そういうわけでうちの手のものもいくらかは侵入させていますが、ごく少数です。また、我々は常日頃より虎仁帮の一員として活動していますので、面が割れていないとも言い切れない。ですので大っぴらには動けません。よって、一度内部に足を踏み入れれば、我々に助力は乞えないと考えてください」
    「なるほど? 劉仁が俺たちに白羽の矢を立てたのもそういうことか」
    「えぇ。いろいろと問題点はありますが、それでも組員よりは、あなた方の方が今回のみ適任だったというわけです」
     吽凱が言葉にいちいち含みをもたせるが、玖朗は涼しい顔をしている。吽凱はさらに続けた。
    「会場内への持ち込み物チェックはかなり厳しいようです。間違っても手荷物検査で引っかかって会場に入れない、なんて無様なことにだけはならないよう、余計なものをお持ちでしたらここに置いていってください。あぁ、お預かりしておりましたお二人の宿泊用のお荷物は、先んじてホテルに預けてありますので、ご心配なく」
     だんだん吽凱の言葉の棘があからさまになってきていた。ともあれ元より身軽な追眠は、手持ちのものなど何もない。身一つだ。玖朗も手持ちはせいぜいいつものサングラスくらいのようで、さきほど受け取った招待状の中身などを確認していた。
     周辺の建物が高く大きく、そして豪華になってきた、と思ってからしばらくすると、車が停まった。首が痛くなるくらい高く巨大な建物の前だ。細長くくり抜かれた窓が幾層にも続く茶壁の建物——大きすぎて、もはや城、と呼ぶべきかもしれない。近くに設置された巨大な噴水が、城の背を超えようとするかのように、高く高く弧を描いている。周囲では、追眠たちが乗っているのと同じような高級車が次々と到着し、着飾った人々が次々と姿を現していた。運転席から回ってきた黒服が、後部座席のドアを開く。
    「では、無事に生きて帰られることを心より祈っております」
     吽凱の心にもない言葉と白々しい笑顔に見送られ、追眠と玖朗は煌びやかな魔の巣窟に足を踏み入れることとなった。
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    Replies from the creator

    みなも

    DONEとんでもない書き間違いとかなければ!これにて!完結!
    7か月もかかってしまった……!
    長らくお付き合いいただき、本当にありがとうございました!!
    ウルトラバカップルになってしまいましたが、今の私が書けるウルトラスーパーハッピーエンドにしたつもりです!
    ものすごく悩みながら書いた一連の3日間ですが、ラストは自分でも割かし納得いく形になりました
    2024.3.24 追記
    2024.4.30 最終稿
    玖朗さんお誕生日SS・2023【後編・3日目】 ゆっくりと瞼を開けたその瞬間から、身体が鉛のように重く、熱を持っていることが分かった。たまにある現象だ。体温計で測るまでもなく、発熱していることを悟る。
    「ん……」
     起き上がろうとした身体は上手く動かず、喉から出た唸り声で、声がガラガラになっていることに追眠は気づいた。そういえば、引き攣るように喉も痛む。ようやっとのことで寝返りを打って横向きに上半身を起こすと、びりりと走った腰の鈍痛に追眠は顔を顰めた。ベッドサイドテーブルには、この状況を予期していたかのように蓋の開いたミネラルウォーターのペットボトルが置かれている。空咳をしてから水を含むと、睡眠を経てもなお疲れ切った身体に、水分が染みていった。
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    ━━━━━━━━━━━━━━━
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    こうして、3月27日を持って俺と学の恋人としての生活が開始された。
    ━━━━━━━━━━━━━━━
    学と付き合って1週間が経過した。
    うん、学と付き合えた筈なのに、こんなにも辛いと思うのはなんでだろう、!
    まぁそりゃ学は元々そういう目で俺を見てるわけではないし?大変だろうとは思った。それにしたってだ、仮にも恋人として俺はいるんだぞ?俺なりに学に対して恋人としてのアピールはいっぱい調べたし!やってる!もう、キ、、、キスだってした!
    なのにだ、あいつは俺を恋人だと思ってない!いつまでも弟扱いして 3070

    miru_ponkotu

    DONE妖と学が結ばれるまでPart①の学視点です。
    語彙がねぇ!色々書きたすぎてまとまらねぇ!
    結論。小説って凄い。尊敬。
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    同時に言わない方がいいのだろうとも思った
    だが…俺の悪い癖だ。1度知りたいと、確かめたいと思ったことに関して俺は…
    探究心を抑えることが出来ないんだ

    _______________

    ことの発端は久しぶりに大学に顔を出した帰りだった。一夜(マヤ)とたまたま帰り道が同じで電車で帰る時に色々話していた。すると妖についての秘密の情報を持っているらしくその話しで少し盛りあがっていた。別に楽しい話だったわけじゃないし言われてもピンとくるもんでもなかったが結果、妖を見つめれば分かるかもと言われたので俺は帰って確かめてみることにした。まぁ、そこから色々あって3日ほど入院したのは長くなるから省く。

    _______________

    ようやく落ち着いて来た頃に試してみようと妖の方を見る。ひたすら見てみる。
    傍から見たら完全に変な奴だろう。俺も思う。が、気になるものは仕方ないとひたすらに見つめてみる。
    目を逸らし、あいつの顔が耳が赤くなっていく。それは見た事のあるものだった。

    …いや待て。待て。見間違いか思い違いだ 2202

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