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    ぎぃ。

    @gigigigiiiii
    ぎぃ。だよ!!!
    ポケモン絵と創作絵と過去絵とかもなんかアップ出来たら見やすいんじゃないでしょうか?

    二次創作SSもおいてるよ。ラッシャイ!!

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    ぎぃ。

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    🐍怪異宇佐美と一般門倉さんは、なんやかんや

    しずく、しずか、しずむ【一七】ウサミが帰ってこない。

    「ただいま」と言っても何も返ってこない。
    そりゃそうだ。居ないんだから。
    暗闇の中に気配はなく、明かりの下にも姿はない。
    どこに行ったんだ?近くの物置小屋とか、車の下から出てこないか?
    そんな逃げだしたペットみたいな……いや、でも、そもそも、どこから来たのかも、どこへ行くのかもわからない存在を──
    どうやって探せばいい?

    離れていくと思っていなかった。
    ずっと傍にいるもんだと。
    あいつはもう、そういう存在だから、諦めるしかないくらいの。そういう。
    もしかしてそれにあぐらをかいていたのか?俺は?
    いやいやいや、違うだろ。絶対やばい存在だから。離れてくれてよかったはずだろ、うん。
    こわかったじゃん、実際。あの目、思い出すだけで股間ヒュンッてなるくらいには。
    あんな執着の化け物みたいなやつ。……そうだろ?そうだよな?

    数日前からずっと、ぐるぐる同じことを考えている。
    なんだったか、うろ覚えの……、自分の尻尾をくわえた蛇みたいだ。

    「──で、門倉部長、どうですか?」
    「あい?」
    「もう!だから今日は6時から集まりましょう、って」
    新入の事務員。あの日の子だ。
    その彼女から誘われた。みんなで飲みにいきましょう、って。
    「ああ、うん。俺は大丈夫だよ」
    家に帰っても誰もいない、それに時計の針が重たくって、やたら遅く感じる。
    一人でもてあますくらいの夜、だったら飲みに行った方がマシだ。
    そう思って定時退社でそのまま店へ直行した。
    店に着いてみると、先に来ていたのは彼女一人だけ。
    「あとから皆来ます」と言いながら、先に乾杯した。

    世代が違うと話も違う。懐かしいと、新しいが交じる会話は楽しい。
    けれど、俺の意識はどこかここじゃないところをうろついていた。
    早く“今日”が終わらないか。そうすれば、日にちさえ経てば、少しは薄れるかもしれない。

    ──大人は、日にち薬がいちばん効くって知っている。

    だから、少し早めのペースで酒を飲む。飲み放題プランにしてよかった。
    けど、どれだけ飲んでも、店の個室には彼女と二人きりのままだった。

    「あれ、そういえば……みんなは?」
    「あっ、なんかみんな急に来れなくなっちゃったみたいで、さっき連絡が来て……」
    「ああ、そっか」
    じゃ、こんなおじさんと二人きりで居続けても、悪いよね。
    「門倉部長って、おひとりなんですよね?」
    「え……」
    「今、フリーだって聞いたんですけどぉ……」
    カクテルに混ざりきらないシロップみたいな、甘い声。
    テーブルの上に置いた手に、彼女の指が重なってくる。
    よく手入れされた丸い爪、そこにかわいらしい色と飾り。
    「前から部長のことが好きだったんです……」
    「……あ?ああ……」
    「わたしじゃ、ダメですか?」
    けど、不思議だな。その指先にも、声にも、ときめきはなかった。
    すっ、と自分の手を引く。

    「──ごめんね、俺、一緒に暮らしてるやつがいるんだ。だから……ごめん」

    その時だった。
    個室の扉がスパンッ、と勢いよく開く。
    「うわっ!?」
    「きゃあッ!」
    ──立っていたのは
    「う、ウサミ!?」
    「え?誰ですか、この人……」
    「ご、ごめん。そういうことだから、今日はこの辺で……。あ、これでタクシー呼んで、危ないからね、帰り道」

    テーブルに呑み代を多めに置き、ウサミの手を引いて店を出た。

    ……つもりだったけど、飲みすぎてて足がふらっふらで覚束ない。
    結局、引っ張ってたのは最初だけで、途中からはウサミに引かれてた。
    「ああいう人、たまにいるんですよね」
    しばらく無言の帰路、静けさを割ったのはウサミの方だった。
    「……へ?ああ、“おじさんを好きになる人”って?」
    繋いだ手、ぎゅううっと強く握られる。
    「いでででで!?」
    「ちがいます!なに言ってるんですか!?」
    「ち、ちがうのぉ?じゃあ、何の……」
    「“僕のことが、まったく見えない人”です」

    ……え、なにそれ?

    酔った脳内に疑問符がふわふわ浮かぶ。
    見えない?
    数日前の広場のやりとりを思い出す。
    確かに。ウサミという連れが横にいても、彼女は普通に喋っていた。
    浮かんでいた疑問符はパチパチと炭酸の泡みたいに弾けていく。
    彼女には見えていなかった。
    見えていたら見たはずだ。
    整った顔立ちも、異質な視線も、ぜんぶ無視する方が難しい。
    それなのに、気づかなかった。

    「あなたが打ち明けてくれたから、あの人は僕を“認識”できるようになりました」
    えっ、それって──つまり、
    「門倉さんから、“いる”って話してくれたから……」
    都市伝説とか口伝で広がるやつじゃないの?
    「僕、うれしかったです」
    なんか、今、すっごくまずい選択肢引いた気がする。
    (あれ?じゃあ──)
    「怒ってた、わけじゃないのか……?」
    「おこる?」
    「あの時、もういいって言ってたから」
    「……ああ、それはもう、いいんです」
    意外にもあっさりした回答が返ってくる。
    「気にしないでください」
    「そ、そう?」
    「はい!門倉さんにどう思われても、結果は変わらないことに気づいたんです、僕」
    「へ?なんの……」
    「え?」
    「え?」

    ああ。またこの、噛み合ってるようで噛み合ってない会話が戻ってきた。
    これを恋人が戻ってきてくれたと感じるか、あぶないペットが帰ってきたと見るか。

    でも、この安堵感はどちらも一緒……だよな?
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